女性画家たち展/山王美術館

華やかさと力強さが魅力。ここでしか出会えない、女性画家4人の名作が集結【山王美術館】

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2025年9月12日

2025年は「国際女性デー」制定から50年、「男女雇用機会均等法」施行から40年。
この節目の年に、山王美術館では「女性画家たち展」が開催されています。

上村松園、マリー・ローランサン、三岸節子、片岡球子――男性中心だった時代に、情熱を絶やすことなく絵を描き続けた4人の女性画家たち。

華やかで生命力あふれるその作品たちは、今を生きる私たちにも力強いメッセージを届けてくれます。

気品ある清らかな美人画を描き続けた上村松園

2009年のオープン以来、コレクションのみによる展覧会を開催する山王美術館。
他館からの貸し借りは一切なく、展示作品はすべて「ここでしか出会えない芸術作品」です。

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

5階の第一会場には、「美人画の巨匠」とも称される上村松園、20世紀前半に活躍したフランス人画家・マリー・ローランサン、そして、日本の近代洋画を代表する三岸節子の作品が並びます。

上村松園《よそおひ》1949年、山王美術館蔵

15歳で画家として活動を始めた松園は、男尊女卑の風潮の中で、作品に落書きされるなどの嫌がらせを受けました。

それでも、「勝負は画の上で」と悔しさをバネに画業に専念。

清らかで気品のある美人画を描き続け、1948年、女性として初めて文化勲章を受賞しました。

左:上村松園《美人観書》1941年頃/右:上村松園《献燈》1944年、いずれも山王美術館蔵

本展では松園の生誕150年を記念し、新たにコレクションに加わった《美人観書》を含む、全8点が展示されています。

「女性の美に対する理想や憧れを描き出したい」という思いで描かれた美人画。

繊細なタッチの中に、凛とした力強さを宿しています。

淡い色調とやわらかな画風のマリー・ローランサン

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

没後70年のマリー・ローランサンは、1883年にフランス・パリで婚外子として生まれました。

1904年、画塾アカデミー・アンベールに入学し、ブラックやピカソら前衛芸術家たちと親交を深めました。

左:マリー・ローランサン《道化師たち》1929年、山王美術館寄託/右:マリー・ローランサン《少女たち》1929年、山王美術館蔵

本展のポスタービジュアルにもなっている《道化師たち》。
画業だけにとどまらず、舞台芸術や衣装デザイン、本の挿絵、詩なども手掛けた彼女は、当時としては珍しい“マルチ・アーティスト”だったと言えます。

マリー・ローランサン《チューリップを抱く王冠の娘》制作年不明、山王美術館蔵

第一次世界大戦の混乱を乗り越え、男性画家が主流だった当時のパリで多彩な才能を発揮したマリー。

戦後に開催された個展が成功をおさめ、上流階級の婦人の間では彼女に肖像画を依頼することがステータスとなるほどでした。

やわらかなタッチと淡い色調による独自の画風で、詩情あふれる女性像を数多く残しました。

豊かな色彩と重厚な質感が特徴の三岸節子

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

1905年、愛知県の大地主の家庭に生まれた三岸節子。

15歳の頃、実家の家業が破産したことを機に、一家の名誉を回復するため画家になることを決意しました。

「女性画家が評価されるには、男性以上の仕事をしなければならない」と、当時の男性優位社会の不平等に立ち向かいました。

結婚・出産、そして夫との死別を経験し、3人の子どもを育てながら制作を続けた節子は、「色彩画家」としての地位を着実に上げていきました。

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

生涯2度にわたり渡仏した節子の風景画は、豊かな色彩と表現力で雄大な自然が生き生きと表現されています。

今回の展示では、生誕120年を記念し、新たにコレクションに加わった5点すべてが初公開されます。

エネルギッシュで個性豊かな作品を生み出した片岡球子

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

4階の第二会場では、三岸節子と同様に生誕120年を迎える片岡球子の作品が並びます。

1905年、札幌生まれの球子は、医者を目指し学業に励むも、18歳のときに親友の一言がきっかけで画家の道を志します。

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

大胆な構図と鮮やかな色彩が特徴の作品群は、圧倒的なエネルギーを放っています。

「観る人に希望を与えたい」という思いが込められた「富士山」シリーズでは、四季の移ろいが彩り豊かに描き出されています。

「山王美術館コレクションでつづる 女性画家たち展」展示風景

美術院展に何度も落選し、“落選の神様”と揶揄された時期もあった球子。

それでも独自の画風を貫き通し、1989年、女性画家としては上村松園、小倉遊亀に続く3人目となる文化勲章を受賞しました。

球子は歴代の浮世絵師を“絵描きの神様”と称えるほど敬愛しており、その影響が作品に色濃く表れています。

本展では、「面構え」シリーズを含む23点が1フロアで展示されています。

コレクション展や、作品モチーフのグッズも楽しめる

ホテルモントレ株式会社の創立者が50数年にわたり収集したコレクションを展示する山王美術館。

3階の第三会場では、よりすぐりの西洋近代名画を鑑賞できるコレクション展も同時開催中です。

山王美術館・ミュージアムショップ

1階のミュージアムショップでは、コレクションをモチーフにしたポストカードなどのオリジナルグッズもあります。

山王美術館・ミュージアムショップ

「ここでしか出会えない」名作が揃う本展は、静かにアートと向き合いたい人にもぴったり。

時代を切り開いた4人の女性画家たちの情熱に触れられるこの機会に、ぜひ会場で心に響く一枚と出会ってください。

Exhibition Information