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2025年9月29日
川端龍子展 日本画壇に挑戦し続けた革命児/碧南市藤井達吉現代美術館
会場看板
「日本画」と聞いて、どのような絵を思い浮かべますか?花鳥風月が描かれた掛軸や美人画など、繊細で静的なイメージを想う人が多いのではないでしょうか。
そんな日本画のイメージを覆した革命児・川端龍子(かわばた りゅうし)。彼の明治から昭和にかけて50年の画業を振り返る展覧会が、碧南市藤井達吉現代美術館で開催されています。
美術館外観
愛知県三河地方にある碧南市藤井達吉現代美術館は、2008年の開館。碧南市出身で近代日本工芸の先駆者である藤井達吉の功績を紹介したり、近現代美術のさまざまな企画展を開催しています。
2023年にはリニューアルオープンし、モノトーンの配色とガラスのファサードが映える洗練された美術館になりました。
川端龍子
横山大観、川合玉堂と並び近代日本画の三巨匠と称される川端龍子。掛軸のように小さな画面で繊細な「床の間芸術」と呼ばれていた日本画を広く大衆に開放しようと、「会場芸術」を唱えた革命の人です。
龍子の名前を聞いたことがなくても浅草寺の”龍の天井画”を見たことがある人も多いのではないでしょうか?
本展示会は、大田区立龍子記念館の全面協力で川端龍子の大画面の傑作が一堂に観賞できる貴重な機会となっています。
《平等院》1911年 大田区立龍子記念館蔵
龍子の画家としてのスタートは洋画です。当時の珍しい油彩画が展示されていました。
1913年、西洋絵画研究のため渡米した龍子ですが、異国の地で見た日本美術の美しさに感動し、帰国後日本画に転向します。
《花鳥双六》星野水裏案/川端龍子画(『少女の友』第10巻第1号 実業之日本社)大田区立龍子記念館蔵
こんな絵も描いていたんですね。当時の少年少女雑誌の正月号は、付録の双六が人気の的に。龍子は毎回趣向を凝らした双六を制作しました。仕上げるのに50枚以上の書き損じが出ることもあったそう。
子ども向けにも手を抜かない!今見てもきれいなデザインですね。
展示風景
会場には大画面の迫力ある絵が並びます。色も鮮やか。『床の間の日本画』とは全く異なる空間が広がっています。
青龍社での活動のようす
日本画へ転向後、龍子は横山大観率いる日本美術院同人として活動します。が、小さな空間で絵を観賞する「床の間芸術」の日本画に異を唱え、大画面を多くの人で観賞する「会場芸術」を主張して「青龍社」を旗揚げします。
大画面の作品群は人びとを魅了しました。
《草の実》(左隻)1931年 大田区立龍子記念館蔵
繊細なのにすごく迫力ある線。六曲一双の大きな屏風は正面から見てももちろん素晴らしいのですが、かがんで下から仰ぎ見ると草が上に伸びる勢いに驚かされます。まるで草むらの中に入ってしまったよう。
《龍巻》1933年 大田区立龍子記念館蔵
縦3.5メートルを超える巨大な作品。狂ったようにサメが身をくねらせ、クラゲやイカ、エイなどさまざまな海の生物が画面から勢いよく落ちてきます。竜巻で宙に巻き上げられた魚たちが波しぶきとともに降ってくる瞬間を捉えています。
連作『太平洋』の一作目として1933年に発表されたこの作品は、この年国際連盟を脱退した日本の孤立感や、太平洋の覇権をめぐる切迫感を内包しています。
《香炉峰》1939年 大田区立龍子記念館蔵
唐の詩人、白居易の詩で知られる中国の名峰「香炉峰」を眼下に従えて飛ぶ戦闘機。大景観を見下ろし壁いっぱいに大きく描くことで、日本軍の大陸制圧を暗示しています。
機体は半透明でスピード感を強調。操縦席に見えるのは、龍子の自画像と考えられます。機体の骨格まで詳しいのも納得。全幅7mを越える龍子らしい作品です。
《爆弾散華》1945年 大田区立龍子記念館蔵
戦争を背景にした龍子作品をもう一点。一見、典型的な美しい日本画のように見えますが、これは終戦直前に自宅が爆撃を受けた一瞬を描いた作品。爆弾によって吹き飛ばされた菜園の野菜が宙を舞い、画面に散りばめられた金箔は爆発の閃光や爆風の記憶なのです。
「散華」とは仏の供養のために花をまき散らす儀式のことですが、戦時中は戦死を意味する言葉として使われました。
《百子図》1949年 大田区立龍子記念館蔵
戦争中、日本各地の動物園では多くの動物が殺処分されました。象が見られなくなった子供たちのためにインドから贈られた象のインディラは、平和な時代の象徴になりました。
芝浦に到着したインディラは、歓迎する人びとに囲まれながら上野動物園まで歩いて行進。その時のようすを描いた作品です。龍子の温かみのある視線が感じられます。
制作道具 大田区立龍子記念館蔵
龍子が使っていた絵筆や絵皿、硯などの制作道具も展示されていました。
展示風景
龍子の目指した「会場芸術」のエッセンスが詰まった展示室。部屋を囲む三方の壁いっぱいに大画面の作品が広がります。日本画の観賞というより、洞窟の中で壁画を観ているイメージ。これぞ「会場芸術」です。
《伊豆の覇王樹》1965年 大田区立龍子記念館蔵
中央にドンと構える富士と、朱に染まった雲が印象的なこの絵は、龍子が亡くなる前年に描いた作品です。とても80歳とは思えない大胆でダイナミックな構図。龍子は最後まで大画面を貫きました。
たおやかな日本画のイメージを覆す、スケール感のある大迫力の日本画を堪能できる機会。「日本画は動きがなくてつまらない」と思っている人にぜひ観てもらいたい展覧会です。
併設のカフェでは、展覧会コラボメニューも登場。爆撃で庭の野菜が飛び散る瞬間を描いた作品『爆弾散華』をモチーフにした、その名も『散華ランチ』!野菜がふんだんに使われたメニューなんです。こちらもお楽しみに。
※期間中、一部の作品の展示替えを行います。
前期:9月13日〜10月5日
後期:10月7日〜11月3日