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2024年11月1日
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり/目黒区美術館
自然豊かな目黒区民センターの一角にある目黒区美術館。1987年11月に開館した同館は、さまざまな企画展が開催される展示室のほか、ワークショップ室や落ち着いたカフェラウンジなども併設し、区民の憩いの場にもなっています。
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり 展示風景
目黒区美術館では現在、日本の写真界をけん引し続けた写真家、木村伊兵衛(きむらいへい/1901-74)を紹介する展覧会が開催中です。
本展では、木村作品のなかでも異色とされるカラーのスナップ写真131点を中心に展示。さらに、1910年から50年にかけてパリ留学を経験した同館所蔵の画家たちの作品もあわせて紹介します。
※展覧会詳細はこちら
木村伊兵衛は1901年、東京・下谷に生まれました。幼少期におもちゃのカメラで遊んでいたのがきっかけで、写真に興味を持ったといいます。
1930年に、ドイツのライツ社(現・ライカカメラ社)製のカメラである「ライカ」を入手し、花王石鹼の広告部門でプロ写真家として活動を開始。雑誌『光画』に発表した東京の下町のスナップショットと、「ライカによる文芸家肖像写真展」で頭角を表しました。
以降、「ライカ使いの名手」として活躍の幅を広げ、1950年に日本写真家協会初代会長に就任しました。
1954年と55年には日本人写真家として戦後初めてヨーロッパの取材をした木村。愛用のライカ(ライカM3)と開発されて間もない国産のカラーフィルムである「FUJICOLOR FILM(以下、フジカラー)」を手にパリを訪れ、そこで写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンやロベール・ドアノーたちと親交を深めます。
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり 展示風景
本展では、ブレッソンやドアノーの案内で木村がシャッターを切った魅力的なパリのカラースナップ写真131点を展示。カラースナップは木村作品のなかでは珍しいとのこと!
そんな貴重な木村のカラースナップ写真を、同館が所蔵するパリに留学経験のある画家たちの絵画作品52点と合わせて紹介します。
本展に展示されている131点のカラースナップ写真は、基本的には当時開発されてまもないフジカラーで撮影された作品だそうで。
フジカラーの製作元である富士フイルムは戦後、カラーフィルムの研究開発を再開し、映画用外型反転カラーフィルムの研究試作を本格化しました。その一方で一般用カラーロールフィルムの発売準備も進めて、1948年4月に外型反転方式のブローニー判一般用カラーフィルムを「富士カラーフィルム」の商品名で発売します。
翌年10月には35mm判サイズが発売され、木村はこのフィルムを使ってパリの街並みを撮影しました。
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり 展示風景
フジカラーで撮影された写真の特徴は、パステル調で自然な色が表現できることなのだそう。木村は当時のフジカラーの性能の限界を模索するように、霧の日や夕暮れのパリを撮影しました。
(手前)木村伊兵衛《夕暮れのコンコルド広場、パリ》1954年
《夕暮れのコンコルド広場、パリ》をはじめとする、低感度による淡い色彩とコントラストで撮影されたパリの情景は、まるで水彩画のようにも見えます。光のにじみ具合もぜひ、会場で注目してみてください。
報道写真やポートレートの名手として知られていた木村。パリの街並みを撮影する際は、観光地をただ撮影したような写真にならないよう工夫をこらしていました。
親密で和やかな雰囲気を漂わせるパリの人びとや、ふとした瞬間をとらえた写真など、木村ならではの視点でとらえられたパリっ子の素顔が展示室にずらりと並びます。
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり 展示風景
2度目の取材となる1955年には、ドアノーの案内により、下町情緒のあふれるメニルモンタンの職人町で開催されいた「パリ祭」のようすを好んで撮影しました。
ドアノーは人柄が良く、メニルモンタンに彼が現れると、たちまち人だかりができるほど、現地の人びとに愛されていたそうです。
(手前)木村伊兵衛《職人町のパリ祭,メニルモンタン,パリ》1955年
自然体でいきいきとした人びと姿は、現地で愛されていたドアノーがいたからこそ引き出せたものなのかもしれません。
1910年から50年代にかけて、多くの日本の芸術家がパリへ渡りました。
瞬間を切り取る写真とは異なり、画家たちは街に溶け込む古い建物などを中心に、時間をかけて対象と向き合い、その存在感を独自の色彩で描き出しました。
本展では、目黒区美術館が所蔵する藤田嗣治や荻須高徳をはじめとする画家の滞欧期の作品もあわせて展示します。
(左から)木村伊兵衛《パリ,1955年》/荻須高徳《パリのカフェ》1931年 目黒区美術館蔵
荻須はパリの裏街風景で、とくに人びとが住み継いできた古い建築を生涯の画題としていました。
荻須の作品とともに展示されている《パリ,1955年》のキャプションに、木村の言葉がこう書かれています。
“パリの町には、ところどころに古い建築のこわれかかったのを見受ける。そこから昔の生活の跡がわかるようで面白い気がした。”
木村や荻須は観光地向けのパリではなく、市民の日常の場としてのパリに目を向けたことがわかります。
写真と絵画と異なる技法によって表現されたパリの情景も、あわせて楽しんでみてください。
日本を代表する写真家、木村伊兵衛がとらえた戦後のパリの街並みを紹介する本展。
柔らかな光のなかに浮かぶ異国の世界を、目黒区美術館で堪能してみてはいかがでしょうか。