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2024年11月1日
デミタスカップの愉しみ/渋谷区立松濤美術館
デミタスカップの愉しみ 展示風景より
「デミタスカップ」と聞いて、皆さんはどのようなコーヒーカップを思い浮かべますか?
「デミタス」とは、濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップのことです。
2000点以上のデミタスを所蔵する村上和美氏のコレクションから、主に19世紀~20世紀のヨーロッパで作られた個性豊かなデミタスカップを紹介する展覧会が、渋谷区立松濤美術館で開催中です。
装飾の美しいデミタスのほか、ロブスターやイチゴなどのユニークなデザインのものまで!
観ていて飽きることのない「デミタスカップ」のデザインを楽しむことができる展覧会です。
デミタスカップの愉しみ 展示風景より
小さめのコーヒーカップとして親しまれている「デミタス(demitasse)」。しかし、意外にもその始まりは明確にされていません。
ティータイムを楽しむ喫茶の文化というと、真っ先に思い浮かべるのは「イギリス」ではないでしょうか?実は、喫茶の文化は16~17世紀に東洋から西洋に伝わったといいます。
大航海時代、西洋にもたらされたティー、コーヒー、チョコレートの3大飲料は、18世紀まで日本や中国の茶碗か、またはそれを真似した取っ手のないボウルで飲むのが主流でした。
その後ヨーロッパで、取っ手を付けた陶磁器「カップ」が開発されました。そしてカップと受け皿であるソーサーを組み合わせた「カップ&ソーサー」という新しいジャンルが、テーブルウェアに登場しました。
19世紀になると、テーブルウェアと食文化の様式が確立していきます。そのなかでデミタスは、単独で考案、デザインされる異質な存在でした。
この小さなカップに込められた優れたデザインや技術は、今もなお「小さな芸術品」として、人びとの目を楽しませてくれます。
日本の美術品は、1862年のロンドンを皮切りに1889年まで、パリ、ウィーン、アメリカのフィラデルフィアといった欧米各都市の万国博覧会に出品されたことにより、大ブームとなりました。
当時のヨーロッパの人びとは、日本から輸出された絵画や工芸品に見られる独自の文様などから影響を受け、「ジャポニスム」という日本風の美術品を生み出しました。
(左から)アルフレート・ステルマッハー《金彩月と鳥文入り角形カップ&ソーサー》1859₋1897年/ピルケンハンマー《金彩花鳥文角形カップ&ソーサー》1887₋1918年/フィッシャー&ミーク《金彩花鳥文透かし彫りカップ&ソーサー》1887₋1918年
こちらは、竹に雀、梅にうぐいすといった日本の伝統的な取り合わせを、デザインのなかに取り入れたデミタスです。また、17世紀末にヨーロッパに輸出された「伊万里焼」の影響を受けた「伊万里焼風」のデミタスも作られました。
(左から)ロイヤルクラウンダービー《伊万里写し花卉文角形カップ&ソーサー》1882年/ロイヤルクラウンダービー《伊万里写し花盆文カップ&ソーサー》1891年
ヨーロッパの人たちがあこがれ、真似をした「ジャポニスム」は、のちに曲線的なアール・ヌーヴォーや、幾何学的なアール・デコへと変化していきます。
アール・ヌーヴォーは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に流行した装飾様式で、曲線と自然をモチーフとし、アシンメトリーで優美な文様を用いているのが大きな特徴です。
この装飾様式も「ジャポニスム」に影響を受けて影響を受けて誕生しました。
フランス語で「新しい芸術」を意味する「アール・ヌーヴォー」。この由来は1895年に、日本美術商サミュエル・ビングがパリに開店した店の名前「Maison de I’ Art Nouveau」だそうです。
カールトンウェア《金彩「ドラゴンフライ、ウォーターリリー」カップ&ソーサー、ケーキ皿》1930年
とんぼや蝶などの昆虫や身近な花など、自然をモチーフに流れるような曲線で美しく彩ったデミタスに注目!カップ単体はもちろん、ソーサーと合わせて観てみるとまた違った印象が得られますよ。
ソーホーポタリー《「パーム」カップ&ソーサー》1930年代
1910年代からは、モダンでスタイリッシュなデザインが特徴の「アール・デコ」が流行します。自然を曲線で優美に描くアール・ヌーヴォーとは異なり、直線を利用した機能的で合理的なデザインが特徴となっています。
1930年代に作られた《「パーム」カップ&ソーサー》は、この時代にブームとなったエジプトや南米の異国的な植物をモチーフとした作品です。
デミタスにも、近代化を象徴するようなデザインが多く現れるようになったことがわかりますね。
デミタスは個性的な装飾とともに、そのユニークなデザインも注目されています。花のつぼみの形をしたものや、イチゴの形、サイコロなど!本展では、個性豊かなデザインも楽しめます。
ロイヤルバイロイト《「キャベツとロブスター」カップ&ソーサー、ミルクピッチャー》1902₋1920年代
なかでも、1回見たら忘れられないダイナミックなデザインが印象的なこちらの作品。カップとソーサーはキャベツで、ハンドルはロブスターのハサミをモチーフにしています。こうした色鮮やかなデミタスカップが集まると、ヨーロッパの朝市のようでワクワクしますね!
デザイン、工芸好きの方にぜひ観てほしい展示です。
職人の技が光る繊細で、ときにはダイナミックなデザインのデミタスカップの世界を紹介する本展。小さくてかわらしいのも魅力的です。
展示室内は一部作品のみ撮影OK!ハッシュタグに「#デミタスカップの愉しみ」を付けて、SNSで投稿してみてはいかがでしょうか?
※フラッシュ撮影禁止。他のお客様が映らないよう配慮をお願いします。
デミタスカップの愉しみ 展示風景より(このエリアのみ撮影OK)
本展は、2020年から京都と群馬で開催した巡回展です。ここ渋谷区立松濤美術館で最後となります。貴重な機会をお見逃しなく。
※新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、土・日曜日、祝日および10月5日(火)以降の最終週は「日時指定制」となります。詳細はこちらをご覧ください。