没後50年 初山滋展 見果てぬ夢/ちひろ美術館・東京

GWは親子でちひろ美術館へ。初山滋の絵本の世界を体感【ちひろ美術館・東京】

2023年4月25日

没後50年 初山滋展 見果てぬ夢/ちひろ美術館・東京

ちひろ美術館・東京にて、童画家初山滋(1897-1973)を紹介する展覧会が開催中です。


(左から)初山滋《はるのはこび》「こどものせかい」1962年3月号 至光社(ちひろ美術館寄託)/初山滋《花の精》1960年頃(推定) 個人蔵

本展では、初山の代表作をはじめ、出版されなかった幻の絵本「えほんのあめや」を初公開するほか、初山のもう一つの画業として注目されている木版画も展示。

没後50年経ってもなお、新しさを失わずにみずみずしい感覚にあふれた初山作品の魅力に迫ります。


大正時代の童画家を代表する初山滋

1897年、東京・浅草に生まれた初山滋。

小学校を卒業後、着物の模様画工房に奉公に入ったのち、挿絵画家の井川洗厓(いがわせんがい)に絵を学びます。


「おとぎの世界」

初山が生まれた大正時代は、子どもの本と文化が大きく花開いた時代です。

この時代には、明治期のおとぎ話や唱歌とは違う、童心に根差した子どものための童話や童謡が数多く誕生しました。

そんな中、初山も1919年4月に創刊された児童文学芸誌「おとぎの世界」にメインの画家に選ばれます。

この時、初山は21歳。雑誌社に絵の売り込みをしていたデビュー間もない画家にとっては大抜擢であったと言えます。


「コドモノクニ」

「おとぎの世界」で注目を集めた初山は以後、童画の黄金期の絵雑誌「コドモノクニ」などの絵で童画家として広く知られるようになりました。

幻の絵本「えほんのあめや」を初公開!

金太郎あめや西洋風のキャンディなど、さまざまなあめがユニークな踊りを見せる「えほんのあめや」。

戦後まもない1948年に描かれた本作は、初山自身の手による文字原稿がついた未発表の絵本です。


初山滋「えほんのあめや」1948年(未発表)

本作の中で初山は、「みせにならべた あめちゃんは、みんなさらっととびだして、おどりおどって子供のお口へ――、これはしたり、えほんのあめではとんとあまくなくて とは思いつゝ。」と文章を残しています。

幼い頃から働きに出ていた初山にとって、童心とは甘美な夢であり、あこがれであったといいます。

そんな彼だからこそ、戦後復興でぜいたくができない子どもたちに、甘いあめのおいしさや楽しい世界を見せたかったのかもしれませんね。

版画家としての初山滋にも注目

童画家としての印象が強い初山滋ですが、木版画の作品も多く遺しています。

本展では、初山の創作版画も紹介します。

初山が木版画を自分で彫り、摺り始めたのは1930年代。

日増しに戦時色が濃くなっていくなかで、初山は戦争を肯定する当時の情勢に合った子どものための絵が描けずに、仕事が減ってしまいます。

注文が減り、時間に余裕ができた初山は、創作木版画の制作を始めました。

初山の木版画で注目すべき点は「彫りすすみ」と呼ばれる技法。

浮世絵版画には、色ごとに分けた「色版」というのがありますが、彫りすすみ版画は1版の版木で彫りと摺りをくり返して、多色摺りの版画を作成する技法です。


(左から)初山滋《鳥》1961年 ちひろ美術館寄託/初山滋《羽根むしり》1959年 個人蔵

幼い頃に着物の模様画工房に奉公していただけあって、現代でも色あせないモダンさを保つ初山の版画作品。

海外では、初山の名前は童画家としてよりも、版画家として広く知られているといいます。

初山のもうひとつの画業である木版画の魅力にも注目です。

「没後50年 初山滋展 見果てぬ夢」の展示風景を動画でもご紹介中です!

 

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同時開催「ちひろ 光の彩」


(左)いわさきちひろ《夜の国で青い鳥をつかまえるチルチルとミチル》「青い鳥」(世界文化社)より 1969年
(右)いわさきちひろ《光がさしこんできた森》「青い鳥」(世界文化社)より 1969年

展示室3・4では、「ちひろ 光の彩」が開催中です。

第二次世界大戦後の子どもの本の隆盛期に、絵雑誌や絵本を舞台に活躍した画家いわさきちひろ(1918-1974)

水彩のやわらかな筆致で子どものいる情景や物語を数多く描きました。

本展では、ちひろの光の表現に着目し、水彩技法の移り変わりもあわせて紹介します。

展示室内では、ちひろならではのタッチで描かれた春夏秋冬の「光の表現」を展示。

春のこもれびや夏のまぶしい日差し、満月の美しい月明りや部屋に灯るろうそくの灯など、さまざまな光が子どもたちや物語を彩り豊かなに照らしています。

季節ごとに違う光を見事に表現したちひろの手法に注目です。


(左)いわさきちひろ《十五夜の月》1965年
(右)いわさきちひろ「かなりや」 1973年

 

 

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“童画”の世界では欠かせない存在であった初山滋の没後50年を記念する本展。

当時まだ幼かったちひろをはじめ、甘く幻想的な初山の世界に魅了された子どもたちがたくさんいたのだろうと感じました。

「没後50年 初山滋 見果てぬ夢」は、2023年9月9日より安曇野ちひろ美術館に巡回します。

展示作品も本展とはまた違う、秋冬に合わせた作品も展示されるとのこと。

どちらも観たいという方は、ミュージアムショップほか全国書店で販売中の展覧会図録がおすすめです。


『初山滋 見果てぬ夢』初山滋著/ちひろ美術館編 平凡社 2530円(税込)

また、ミュージアムショップには、本展展示作品をモチーフとした、ポストカードや一筆箋、トートバッグなどの本展オリジナルグッズも販売中です♪

なおミュージアムショップは、美術館を利用した方のみ入場できます。

草木を愛したちひろが最後に過ごしたアトリエの跡地に建つ、ちひろ美術館・東京。

ゴールデンウィークは、新緑と色鮮やかな草花が咲く同館へ足を運んでみては?


「ちひろの庭」

Exhibition Information

展覧会名
没後50年 初山滋展 見果てぬ夢
開催期間
2023年3月18日~6月18日 終了しました
会場
ちひろ美術館・東京 展示室1・2
公式サイト
https://chihiro.jp/tokyo/
注意事項

会期は予定なく変更になる場合があります。最新情報は美術館公式サイトをご確認ください。