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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
皆さんは、「秋」といえば何をイメージしますか?
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋といろいろありますが、スフマート読者なら芸術の秋と答える人も多いでしょうか。
今回は、美術と縁深い秋の花・菊に注目!日本のシンボル的な花ですが、実は海外でも人気なのは知っていましたか?
このコラムでは、菊の豆知識や関連ミュージアムをご紹介します。
ぜひ、菊の花も芸術の秋も堪能して、充実した時間を過ごしてください!
菊の花は奈良時代のころ、大陸から日本へやってきました。平安時代に入ると、菊を愛でる宴が宮廷で開催されるようになります。
貴族たちは、持ち寄った菊の出来栄えや、菊をテーマにした歌で競う「菊合(きくあわせ)」という風流な遊びを行っていたようです。
そして、同じく中国から入ってきた重陽の節句 も、菊にまつわる文化です。これは9月9日に行われるもので、不老長寿や子孫繁栄を願って菊花酒などを口にしました。
かつての重陽の節句は現在の10月後半、だいぶ秋めいてきたころに行うものでした。
旧暦9月を「菊月」と呼ぶように、まさにこの行事を行うのにぴったりの時期だったのです。
高貴さや長寿を象徴する菊は、吉祥文様として好まれ、服飾や生活用品などさまざまなものに取り入れられました。
『振袖 白綸子地菊雲鳥蝶模様』
Colbase https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/I-4290
春の桜と同じく、菊は日本の国花と呼べる存在です。
そして「菊花紋章(菊紋)」は皇室や国を表すマークとして使われています。日本のパスポートの表紙にもありますよね。
これは、平安時代の後鳥羽天皇が自分の印として菊紋を使ったことが始まりです。その後も菊を印にする天皇が続き、13世紀末には皇室全体を表すシンボルとなりました。
ちなみに、皇室の菊紋は「十六葉八重表菊」、国章に使われるのは「十六一重表菊」と、少し違いがあります。
『菊御紋額』
Colbase https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/I-1548
大正時代、表紙に国章をつけるデザインが、パスポートの国際的な基準となりました。
しかし、日本には法律で決められた国章がなかったため、それに近い扱いを受けていた菊紋が使われました。
江戸時代、園芸ブームがたびたび起こり、全国的に園芸文化が大きく発展しました。そのひとつが、菊の栽培です。
最初は貴族や武家など上流階級の人びとが、菊の花壇を作って見せるのが主流でした。そのうち、菊を愛でる文化は庶民へ広まり、鉢植えで育てられることも増えていきます。
熱心な品種改良が行われ、日本のあちこちで独自の品種が生まれたのも江戸時代のことです。
一勇斎国芳『百種接分菊』, 伊豆善
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307605
菊の栽培方法を記した園芸書がいくつも出され、庶民による菊の品評会も行われました。
特に植木職人たちは競うように、菊を並べて大きな生き物や船などの形を作り、これは菊細工と呼ばれました。
歌川国輝『当世菊見ノ図』, 古賀屋
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307602
また、その発展形として、人形の服を菊で表現する菊人形が生まれました。この文化は今でも残っていて、秋に各地で菊人形展が開催されています。
特に福島県二本松市、福井県越前市、大阪府枚方市のひらかたパークで行われるイベントが、日本三大菊人形と呼ばれていました(ひらかたパークの菊人形展は2005年で中止)。
日本のシンボルのイメージが強い菊ですが、海外でも人気の高い花です。
ヨーロッパやアメリカには18世紀に伝わったと言われています。
美術界では、根強い人気を誇る印象派画家のモネやルノワール、カイユボットらが菊の作品 を描いています。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《菊》
シカゴ美術館 https://www.artic.edu/artworks/16617/chrysanthemums
ギュスターヴ・カイユボット《プティ=ジャンヌヴィリエの庭の菊》
メトロポリタン美術館 https://www.metmuseum.org/art/collection/search/671456
また、欧米での菊のブーケは、お祝いの贈り物として一般的です。
そのせいか、日本でも同じ感覚でプレゼントしたところ、それは仏花だった・・・という異文化ならではの失敗談も時折あるようです。
ただ、お葬式に白菊を手向ける文化は、明治維新後にヨーロッパから伝わったものです。
栽培しやすくて花のもちがいいという理由もあり、近代以降の日本の葬儀では菊がよく用いられるようになったそうです。
菊を通じて、それぞれの文化に影響を与えあったのは興味深いエピソードですね。
菊は古くより日本の美術工芸のモチーフとなっていますが、洋画の菊を見たいなら黒田清輝作品はいかがでしょうか?
ポーラ美術館では、黒田清輝の《菊》を所蔵しています。彼はフランス留学時代から菊を好んで描いていたそうで、菊の作品がいくつか残されています。
ポーラ美術館の魅力は、なんといっても自然豊かな箱根で、上質な東西の美術工芸品を鑑賞できる点!紅葉の時期は周りの景色も楽しめそうですね。
広いジャンルの展示品とユニークな企画が特徴の国立歴史民俗博物館。建物自体が広く、1日飽きることなくいられる濃密スポットです。
くらしの植物苑はその関連施設で、古典菊の収集展示をしています。
秋の企画展では多種多様な菊を鑑賞でき、まさに日本美術の世界に迷い込んだ気分になれます。
がっつり菊を楽しみたいなら、外せないスポットです!
重要文化財『菊蒔絵手箱』を所蔵しているのが、九州国立博物館です。
土地柄、焼き物の展示も多く、菊モチーフの伊万里焼なども見られます。
また、すぐ近くにある大宰府天満宮 では、秋に菊花展が開催されます。
境内にある宝物殿や菅公歴史館は、九州国立博物館との共通チケット も販売されているほか、敷地内にはアート作品が点在しています。アートファンとしてはぜひ併せて訪れたい場所です!
1000年以上日本人に親しまれてきた菊は、絵画をはじめ、陶磁器や服飾、漆器などいろいろな美術品のモチーフになっています。ミュージアムでも出会いやすいお花です。
過ごしやすい秋の季節は、菊と一緒に芸術を楽しむお出かけをしてみませんか?
【主な参考文献】
・田中孝幸/著『園芸と文化 江戸のガーデニングから現代まで』 熊本日日新聞社 2012年
・人間文化研究機構国立歴史民俗博物館/編『伝統の古典菊 くらしの植物苑特別企画』 人間文化研究機構国立歴史民俗博物館 2015年
・トゥイグス・ウェイ/著 春田純子/訳『菊の文化誌』 原書房 2020年