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2024年11月1日
企画展「繡(ぬい)と織(おり)-華麗なる日本染織の世界-」/根津美術館
企画展「繡と織─華麗なる日本染織の世界─」が、根津美術館(東京・南青山)にて、2024年1月28日(日)まで開催中です。
企画展「繡と織─華麗なる日本染織の世界─」展示風景より
染織品に模様を施す技法はさまざまですが、糸を縦と横に組み合わせて生地を作る織(おり)や、刺しゅうの技法は、日本では格式高いものとして重んじられました。
本展では、400点以上におよぶ根津美術館所蔵の染織品から、江戸時代の小袖など、織と刺しゅうの技が光る多彩な作品を、「上代染織」「仏教染織」「能装束」「小袖」の4つのジャンルに分けて紹介します。
会場入口
飛鳥時代 (592~710) から奈良時代 (710~794) の染織品は、上代裂(じょうだいぎれ)と呼ばれています。
大陸から日本に伝えられた染織品は、奈良時代になると需要が高まり、国内でも大量に作られました。
宝相華(ほうそうげ)と呼ばれる華やかな唐草文様を刺しゅうで表した《上代裂 緑地草花文刺繡》は、奈良時代、寺院の内外を飾った幡(ばん)と呼ばれる旗状の飾りの一部と考えられます。
約1300年の時を経ても柔らかな色彩と模様がよく残っています。
《上代裂 緑地草花文刺繡》 日本・奈良時代 8世紀 根津美術館蔵
染織の世界では、縦に使う糸を「経糸(たていと)」、横に使う糸を「緯糸(ぬきいと)」といいます。
多彩な色糸を用いて模様を織り出す錦と呼ばれる織物は、経糸を色糸とする経錦(たてにしき)と、緯糸を色糸とする緯錦(ぬきにしき)の2種類に分けられます。
会場では、経錦の代表格である「蜀江錦(しょっこうきん)」や、さまざまな緯錦の織物も見ることができます。
《残霞帖 (上代裂手鑑)》日本・飛鳥~奈良時代 7~8世紀 根津美術館蔵
《残霞帖 (ざんかじょう》は、蜀江錦、繡仏(しゅうぶつ、刺しゅうによる仏像)などのさまざまな古裂を集めて帖に仕立てたもの。
飛鳥・奈良時代の染織の美しさを目の当たりにすることができる貴重な品です。
仏教にかかわる染織品「仏教染織」では、初公開の黄緞(おうどん、絹糸と綿糸を交ぜて織ること)と呼ばれる珍しい織物をふんだんに使った、長さ3mを超える豪華な袈裟(けさ、僧侶が身につける衣装)を展示。
《九条袈裟 紅地花唐草模様黄緞》日本·桃山時代 17世紀 根津美術館蔵
また、小袖から仕立て替えられたとみられる、仏壇を飾るための打敷(うちしき)が見どころです。
唐織とは、横糸に色糸を用いて、多彩な文様を縫取織(ぬいとりおり、文様をあらわす色糸を部分的に用いる技法)であらわした織物、 またはその技法のことをいいます。
唐織は、能で用いられる衣装である能装束のなかでも、とりわけ豪華なものが多く、主に女役の表着(うわぎ)として使用されます。
八重のしだれ桜に花車を組み合わせた模様を表したこの唐織は、 絢爛さと格調の高さを兼ね備えた1領です。
《唐織 金地枝垂桜花車模様》日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
唐織の華やかさと、表着の下に着られることの多い厚板の機能を併せ持つものを厚板唐織といいます。
しだれ桜を織り出した左の厚板唐織と、右の鉄線花と唐草模様の唐織の質感の違いを見比べてみてください。
(左から)《厚板唐織 白紅萌黄段枝垂桜模様》日本・江戸時代 18~19世紀、《唐織 紅薄縹段鉄線唐草模様》日本・江戸時代 19世紀 いずれも根津美術館蔵
能装束には、武家女性の衣装である小袖を転用したと考えられるものもあります。
桃山から江戸時代の小袖の特徴が見られる《着付 紅地鱗向い鳥丸模様》は初公開。
一見織物のようですが実は刺しゅうで、表着の下に隠れる着付でありながら、凝った刺しゅうが施されています。
《着付 紅地鱗向い鳥丸模様》日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
小袖は現在の和服の原型です。武士の世の中になると動きやすい小袖が表着となり、多彩なデザインの小袖が生み出されました。
企画展「繡と織─華麗なる日本染織の世界─」展示風景より
江戸時代中期になると、友禅染によって絵画のような模様表現が可能となります。
この小袖は、友禅染の表現とともに、刺しゅうの技にも注目してみてください。
《小袖 染分縮緬地せせらぎあやめ模様》日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
紅・白・黒と地色を変えて、ほぼ同じ模様を刺しゅうと鹿子絞(かのこしぼり)であらわした豪華な振袖。
これらは、武家の婚礼衣装の形式を富裕な町人が真似をして仕立てたものと考えられます。
(左から)《振袖 黒綸子地桐鳳凰模様》、《振袖 白綸子地桐鳳凰模様》、《振袖 赤綸子地桐鳳凰模様》日本・江戸~明治時代 19世紀 いずれも根津美術館蔵
会場に展示された織や刺しゅうは、その技術もさることながら、色彩、文様も見事で、なかでも飛鳥、奈良時代のものは、鮮やかな色が千年以上たっても残っていることに驚かされます。
染織品の質感や魅力を画像だけで充分に伝えることは難しく、実際に見ないとその素晴らしさはわかりません。
織物や刺しゅうならではの多彩な美と技の世界をぜひ会場でお楽しみください。