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平野杏子展―生きるために描きつづけて
平塚市在住の洋画家、平野杏子(ひらのきょうこ、1930年-)の本格的回顧展を開催します。
平野杏子は伊勢原生まれ。神さびた大山信仰の地であり、古代から、南関東でも多くの古墳で知られる風土は幼少期から大久保作次郎、長屋勇、三岸節子に師事し、1954年から現在にいたるまで平塚市に在住。まだ女性作家が少ない時代に画業を切り拓くとともに、女性作家による潮会の中心的役割を担ったほか、そのアトリエでは近隣の画家や評論家が集まり、その交流によって平塚の文化振興に大きな役割を果たしました。
画業初期に長屋勇に学んだ穏健で温かな作風が一変したのは、結婚を経て制作と育児のはざまで病いを得、深い悩みのなかで生と死や輪廻思想などについて考察したことが原因でした。おりしも画壇に表れた抽象表現の潮流をも見据え、仏典や仏教思想を容れて立ち現れた「幻視」の世界を描くことがライフワークとなり、平野杏子芸術の世界観をかたちづくっていきました。こうした作品群を生みだした作家の深い悩みは、時を経てポストコロナのわれわれにも大いに共感するものではないでしょうか。希薄となった人間関係や、多忙な生活のなかで生きる希望を失いがちな現代にあって、祈りにも似た境地で描かれた一群の作品は、われわれに何を語るのでしょうか。
さらにもう一つの柱となったのは「原始」へのまなざしでした。出身地の伊勢原では、幼少期に縄文土器や遺跡が出土し、画家に「原始」「縄文」への憧憬の念を育み、その感性は、土着の風土と信仰が混じり合う独特な画風を培いました。そのまなざしは出土品のつくられた縄文の昔や往時の広い文化圏での人々の営みへと及んで、新羅仏教美術との邂逅へとつながっていきました。あわせてこうした作家のもとに戦後多くの美術関係者が蝟集し、その幅広い交流によって平塚は湘南文化の揺籃の地となりました。その輪のなかに美術史家の竹田道太郎や藤田経世、日本画家・工藤甲人らがおり、平塚の文化をより豊かなものにしてきました。こうした動向を改めて紹介するとともに作家の生き方に着目し、人としての平野杏子にスポットをあて、現在の平塚の文化の新たな側面を紹介します。
Event Information
- 展覧会名
- 平野杏子展―生きるために描きつづけて
- 開催期間
- 2024年4月6日~6月9日 終了しました
- 開館時間
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09:30~17:00
(入場は16:30まで)
- 休館日
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月曜日 (ただし、4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
- 入館料
一般 800(640)円、高大生 500(400)円、中学生以下無料
※( )内は団体料金
※毎週土曜日は高校生無料 ※各種障がい者手帳をお持ちの方と付添 1 名は無料
※65 歳以上で平塚市民の方は無料、市外在住の方は団体料金
- お問い合わせ