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2024年12月17日
布施知子 ORIGAMI/ヤマザキマザック美術館
《ゴールデン・スネーク》2024年
これ、何に見えますか?何かの歯車?建築用の配管?それともアンモナイト?
実は「折り紙」なんです。「えーっ!これが折り紙?」思わず唸ってしまう作品がズラリと並ぶ展覧会が、名古屋市のヤマザキマザック美術館で開催されています。
会場入口
ヤマザキマザック美術館は、工作機械メーカー・ヤマザキマザック株式会社を母体とする美術館。18世紀ロココ美術以降のフランス絵画や、アールヌーヴォーのガラス工芸、家具調度品のコレクションで知られます。
そして今回、素晴らしい作品を見せてくれるのは、世界的に有名な折り紙スペシャリスト・布施知子さん。
布施さんは長野県大町市の山中の古民家に暮らし、静かな環境の中で折り紙創作活動に取り組むアーティストです。
布施さんが折り紙と出会ったのは小学2年生の時。病のため3か月間小児病棟で入院生活を送ることになった彼女は、病棟で知り合ったおじさんから折り紙を教えてもらいます。薬包紙を集めてきては、夢中で「ユリ」を折ったと言います。
面(マスク) 展示風景
芽生えた折り紙への興味はその後も続きます。大学2年の時に、折り紙作家の河合豊彰氏のもとで本格的に折り紙に取り組み、河合氏がライフワークとしていた「面」を制作。展示されていた「面」は、今から約50年前につくられた作品です。
半世紀を経た紙の作品とは思えないほど良好な状態を保っています。
《枯山水 in 葵》2024年
会場の中に枯山水の庭園が登場。木の床に広がるのは、巨大な白い紙で折られた山や川。この展示室をイメージして布施さんが考え出したスケールの大きなインスタレーションです。
美術館の建つ場所は、江戸時代には尾張徳川家の別邸「御下屋敷」があった場所。屋敷にも庭園があったそうで、作品との不思議な縁を感じさせます。
《枯山水 in 葵》部分
ひとつの折り目からふたつの折り目、そこからまた折り目が増えていく。一枚の白い紙から無限に広がる世界。「無限折り」という折り方です。スポットライトの陰影が美しい。
《らせん折り②》2005年(2016年再制作)
深い海をゆらゆら漂う不思議な生きものみたい。細長い台形の紙を使って折る「らせん折り」です。長方形の長い紙で折っていた作品を、ふと思いついて台形に変えてみたら思いがけない形が生まれたそう。布施さん曰く「折り紙からのプレゼント」。
《無限折り切り株》2015年
「切り株」と名付けられた、花びらのように美しい作品「無限折り」。細かな折り目の陰影が繊細なグラデーションを生み出しています。
《ダブルファン》2015年
見ているとこっちに歩いてきそうな、複雑で生物的な作品は「繰り返し折り」。同じ折を横方向、水平方向に重ねていく折り方。この作品は幅1m、長さ15mの紙を折ったものだそう。どうすれば1枚の紙からこんな形が生まれるのでしょう。
《正方形・星形専用ユニット》(30枚組)(1080枚組)2006年
ひとつの小さなユニット(部品)を折り、それを組み合わせてさまざまな形に作りあげる「ユニット折り」。はさみも糊も使っていません。ばらばらにして違った形を作ることもできます。
布施知子さんは「ユニット折り紙の女王」と称される名手なのです。
《アリ地獄》(270枚組)(48枚組)2010年
先ほどの「枯山水」とは違って、カラフルでかわいい表情を見せてくれる作品たち。見てるだけで心がはずんできます。
《千鳥パターン 波動》2015年頃
こちらは、さまざまな折りの技法を駆使した作品。122×240ⅽmという大きさなんです。まさに折り紙で出来たじゅうたんです。
《ヘキサゴン・ノット6》2016年頃
細長い紙を結んで五角形や六角形を折り出して形を作る「ノット(結び目)による造形」も展示されていました。花束を模した可愛い民族柄のよう。
《シルバー・スネーク》2024年
寝室の家具の脚元に這い回る銀色の怪しげな物体。心休まるアンティークな家具に、鈍い光を放つニョロニョロ?意表を突くコントラストに胸騒ぎを覚えてしまいます。
もちろんこれも折り紙。「シルバー・スネーク」と名付けられたこの作品は、ヤマザキマザック美術館が誇るアール・ヌーヴォー家具の展示室にあわせて作った新作。家具に描かれた藤の花のイメージにインスパイアされたといいます。
《シルバー・スネーク》部分
恐る恐るクローズアップしてみると…SF映画に出てくるロボット!?やっぱり紙には見えませんって!
《ゴールデン・スネーク》2024年
次のアール・ヌーヴォーダイニングルームにいたのは「ゴールデン・スネーク」。テーブル上のマイセンの器の金縁の色にコーディネートしたんだそうです。
部屋全体を使ったスケールの大きな表現は、私たちがイメージする「折り紙」の次元をはるかに超えています。
《レッド・スネーク》2024年
「レッド・スネーク」は、火山から湧き出てくる溶岩のように見えました。
布施さんは図面を引いてから折っていくのではなく、頭で考えながら折っていき、出来上ってから皆が折れるよう図面を描くといいます。ちょっと頭の中を覗いてみたい・・・なんて思ってしまいました。
《アリ地獄》(480枚組)2019年
最後を飾るのは、布施知子さんの原点であるユニット折り作品「アリ地獄」。あえて色を使わずに白一色で表現。ユニット折りのシンプルな光と影の美しさが際立ちます。
「ああ、折り紙ね」。布施さんの作品を知らなければ、折り紙は軽く捉えられたままかもしれません。一枚の紙から生み出される造形世界を、多くの人に知ってもらいたい。布施知子さんの情熱の詰まった、労力と時間が注ぎ込まれた展覧会です。
お近くにお越しの際には、ぜひ折り紙の奥深さに触れてみてください。ヤマザキマザック美術館の素晴らしいフランス絵画やアール・ヌーヴォーの素晴らしいコレクションもお見逃しなく!