酒呑童子ビギンズ/サントリー美術館

初めてでも楽しめる《酒呑童子絵巻》の世界。六本木で開催【サントリー美術館】

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2025年5月9日

サントリー美術館にて、「酒呑童子ビギンズ」が開催中です。

本展では、数ある《酒呑童子絵巻》のなかでも、後世に多大な影響を与えたことで有名な、重要文化財 狩野元信筆《酒伝童子絵巻》(サントリー本)を、同館史上最大規模に広げて展示します。

また、近年新たに発見された《酒呑童子絵巻》のエピソード・ゼロとも言える作品も紹介。
本展では初の里帰りとなる、ドイツのライプツィヒ・グラッシー民俗博物館所蔵の《酒呑童子絵巻》(ライプツィヒ本)にも注目です。

サントリー本を約35m広げて大公開!

重要文化財 酒伝童子絵巻(部分) 狩野元信 三巻のうち上巻 大永2年(1522) サントリー美術館【通期展示】

《酒伝童子絵巻》(以下、サントリー本)は、サントリー美術館のコレクションを代表する絵巻です。

平安時代の武将・源頼光が悪鬼・酒呑童子を退治する物語は、14世紀以前に成立し、やがて絵画や能などの題材となって広く普及しました。

サントリー美術館「酒呑童子ビギンズ」展示風景

なかでも、狩野派を確立した二代目・狩野元信によって描かれたサントリー本は、江戸時代のあいだに数多くの絵巻に描き写され、後世に影響を及ぼした典型例として知られています。

2015年に国の重要文化財指定を受け、その後、2018年から2年間にかけて解体修理が行われたサントリー本。
本展では、サントリー本を同館史上最大規模の35mまで広げて展示します。

重要文化財 酒伝童子絵巻(部分) 狩野元信 三巻のうち下巻 大永2年(1522) サントリー美術館【通期展示】

ちなみに、全三巻あるというサントリー本。三巻合わせると、全長66mほどになるのだとか。

サントリー美術館の展示ケースを、端から端まで贅沢に使い、源頼光VS酒呑童子の物語を紹介します。

《酒呑童子絵巻》のエピソード・ゼロ
ライプツィヒ本、日本初公開

酒呑童子絵巻 住吉廣行 六巻のうち第一巻 天明6~7年(1786~87)頃 ライプツィヒ・グラッシー民俗博物館【通期展示】

酒呑童子の住処は、物語によって異なります。
丹波の大江山と近江の伊吹山が二大拠点とされ、サントリー本は、伊吹山の鬼を描くもっとも古い絵巻として知られています。

近年では、サントリー本とほぼ同じ内容を含みながらも、酒呑童子の生い立ちを大胆に書き加える絵巻が相次いで発見され、注目を集めているといいます。

酒呑童子絵巻(部分) 住吉廣行 六巻のうち第一巻 天明6~7年(1786~87)頃 ライプツィヒ・グラッシー民俗博物館【通期展示】

そのなかでも、遠く離れたドイツのライプツィヒ・グラッシー民俗博物館が所蔵する住吉廣行筆《酒呑童子絵巻》(ライプツィヒ本)は、非常に重要な作例です。

本展では、知られざる酒呑童子の誕生譚を描いたライプツィヒ本全6巻のうち2巻を、日本で初めて公開します。

酒呑童子絵巻下絵 住吉廣行 六巻 天明6年(1786)頃 大阪青山歴史文学博物館【通期展示(場面替えあり)】

また、本展初出品となるライプツィヒ本の下絵も展示。これらを通して、《酒呑童子絵巻》のエピソード・ゼロの世界を紹介します。

《酒呑童子絵巻》が婚礼調度品に?
その秘密を紹介

サントリー本とライプツィヒ本には、いずれも姫君の所持品であるという共通点があります。

大江山縁起図屛風 六曲一双 江戸時代 17世紀 池上本門寺【通期展示】

徳川家康の娘・督姫(良正院)は、はじめ北条氏直に嫁いでいました。

その後、氏直が亡くなると、文禄3年(1594)に池田家に嫁いだ督姫。その際に、北条家伝来のサントリー本を持参したと伝わっています。

良正院画像 一幅 江戸時代 17世紀 眞教寺【展示期間:4月29日~5月19日】

一方、ライプツィヒ本は、第10代将軍徳川家治の養女であった種姫が、天明7年(1787)に紀州徳川家へ輿入れした際の嫁入り道具であったことが明らかになっています。

本展では、サントリー本の伝来に注目し、《酒呑童子絵巻》が婚礼調度として好まれた背景を紐解きます。

単なる物語や絵巻の一画題にとどまらない、《酒呑童子絵巻》に込められた政治性に注目です。

 

解体修復後の鮮やかな《酒伝童子絵巻》を、贅沢に堪能できる展覧会「酒呑童子ビギンズ」。

絵巻はマンガやアニメーションの起源とも言われています。展示ケースの端から端までを、ゆっくり歩きながら観ることで、より一層と物語の世界へ入り込むことができるでしょう。

酒呑童子の物語を知っている方はもちろん、初めての方でも分かりやすい展示になっています。

Exhibition Information

展覧会名
酒呑童子ビギンズ
開催期間
2025年4月29日~6月15日
会場
サントリー美術館
公式サイト
https://www.suntory.co.jp/sma/
注意事項

※作品保護のため、会期中展示替を行います。