どこ見る?どう見る?西洋絵画! ルネサンスから印象派まで/京都市京セラ美術館

西洋絵画初心者も、ちょっと詳しいあなたも!皆が楽しめる展覧会【京都市京セラ美術館】

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2025年7月8日

西洋絵画初心者も、ちょっと詳しいあなたも!皆が楽しめる展覧会【京都市京セラ美術館】

お国も歴史も幅広い西洋絵画。もっと楽しめる視点って?そんなヒントが詰まった展覧会が、京都市京セラ美術館で開催されています。

アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ美術館のコレクションを中心に、国立西洋美術館の名品と共にルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術の歴史をたどる展覧会。東京からの巡回です。

東京展のようす▼

ゴシックからルネサンスへ
宗教画に表情が生まれる

展示風景

最初に並ぶのは14世紀~15世紀はじめの初期ルネサンス時代の絵画。宗教を背景とした荘厳なゴシック絵画の時代から、徐々に人物の表情が表れていくようすが見てとれます。

ベルナルディーノ・ルイーニ《マグダラのマリアの回心》1520年頃 サンディエゴ美術館所蔵

百年経つと表情がこんなにも柔らかに。
ルイーニが活躍したイタリア・ロンバルディア地方は、ダヴィンチが長期滞在したためレオナルド派が生まれるほど影響力が強かったそう。この作品にもその影響が感じられます。

ヴェネツィア・ルネサンスの肖像画

ヤコボ・ティントレット《老人の肖像》1550年頃 サンディエゴ美術館所蔵

自然な印象のこの肖像画は、16世紀ヴェネツィアで活躍したティントレットの作品。最初期のルネサンス絵画との、表現の違いに驚かされます。

北方ルネサンス
ネーデルラントの異色の画家

ヒエロニムス・ボス(の工房)《キリストの捕縛》1515年頃 サンディエゴ美術館所蔵

宗教画といえば、荘厳なはず…ですが、ちょっと気になる一枚が。作品横のコメントにも「この邪悪な表情、一度見たら忘れられない」。

ネーデルラントの画家、ヒエロニムス・ボスの工房の作品と聞いて納得。ボスは「快楽の園」という、とてもシュールな作品も残してます。

サンディエゴ美術館の至宝
スペインの静物画

ファン・サンチェス・コターン《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年頃 サンディエゴ美術館所蔵

かつてスペイン領だったサンディエゴ。サンディエゴ美術館は多くのスペイン美術を所蔵します。

展覧会監修者のサンディエゴ美術館マイケル・ブラウン博士いわく「中でも至宝とされるのがこの静物画」。
漆黒の背景から浮かび上がる静物はあまりにリアルで、非現実空間に見えるほど。

20世紀のシュールレアリスムを思い起こさせる一枚です。

フランシスコ・デ・スルバラン《神の仔羊》1635~40年頃 サンディエゴ美術館所蔵

モコモコした毛がとってもリアルな「神の仔羊」。よく見ると頭上には天使の輪が。

キリスト教では仔羊はキリストの犠牲の象徴なのです。

悔悛する聖人
エル・グレコとムリーリョ

エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプロス)《悔悛する聖ペテロ》1590~95年頃 サンディエゴ美術館所蔵

離れて見ても迫力あるドラマティックな構図。ギリシアに生まれスペインで活躍したエル・グレコの作品。

イエスの弟子・ペテロが、キリストが捕えられた時に弟子であることを3度否定してしまい、悔いて涙を流す場面です。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《悔悛するマグダラのマリア》1660~65年頃 サンディエゴ美術館所蔵

こちらも神に許しを請う姿。美貌と富から快楽におぼれた人生を送ってきたマグダラのマリアがイエスに出会い、悔い改める場面です。

17世紀のスペインを代表する画家・ムリーリョは、数多くの宗教画を手がけました。

光と影の表現

シモン・ヴーエ《トロイアから逃れるアエネアスとその父》(部分)1635年頃 サンディエゴ美術館所蔵

この頃の西洋絵画に大きな影響を及ぼしたのが、イタリアの画家・カラヴァッジョです。

人物を映像のように写実的に描く手法と、光と陰のコントラストは当時の流行になりました。

フランス人画家のヴーエもカラヴァッジョの影響を受けた一人。老父の苦悶の表情から息遣いまで伝わってきます。

まるで生きているかのよう
スペインの彩色木彫

ペドロ・デ・メナ《アルカラの聖ディエゴ》1665~70年 サンディエゴ美術館所蔵

彫刻も展示されていました。スペインの木像彫刻は写実的。まるで観る人に語りかけてるようです。

ロココの時代
ちょっと可愛らしいフランスの風俗画

ニコラ・ランクレ《眠る羊飼いの女》1730年頃 国立西洋美術館所蔵

こちらは18世紀フランスの風俗画。ロココと呼ばれる洗練された軽やかな文化が花開いた時代です。

木陰でうたた寝をしてしまった娘を見守る青年。何とも微笑ましい一枚です。

18世紀後半のパリ
存在感を示した女性画家

(左から)マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 国立西洋美術館所蔵/マリー=ギュミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃 サンディエゴ美術館所蔵

同時代のサロンで活躍した2人のフランス女性画家が描いた肖像画。左は国立西洋美術館、右はサンディエゴ美術館の所蔵品です。並んで観られるのもこの展覧会ならではのこと。

2人の服装が大きく異なるのにお気づきでしょうか。両作品の間には大きな社会変化が起こりました。フランス革命です。

ロココ風のゴージャスなカペの自画像に対し、ブノワの婦人像は革命期に流行した古代風の装い。作品の中に時代が描きこまれているのです。

庭に入ってきちゃった男の子
19世紀アメリカ印象派

セオドア・ロビンソン《闖入者(ちんにゅうしゃ)》1891年 サンディエゴ美術館所蔵

時代は下って19世紀。アメリカ印象派、セオドア・ロビンソンの作品です。

垣根の隙間から入ってきた男の子。住人と目が合ったのか、さくらんぼを食べる手がフリーズしてしまいました。

印象派はアメリカで大人気。ロビンソンはフランスでモネに直接表現方法を学びました。

展示風景

展示作品のどこを見るか、どう見るかはひとそれぞれ。

お気に入りを探すのも良し、気になる絵を解説や音声ガイドで深堀りするのも良し。絵画展は初めて!という人にもおすすめの展覧会です。

ショップ風景

会場を出ると、山盛りのオリジナルグッズ!モコモコ羊さんをはじめ、展示作品をモチーフにしたTシャツや靴下、展覧会オリジナルパッケージのコーヒーや紅茶まで並んでます。

鑑賞後のショッピングもお楽しみに。