大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ/岐阜県美術館

岐阜に国立工芸館のコレクションが大集合!激動の時代に生まれた「モード」【岐阜県美術館】

NEW!
2025年12月8日

岐阜に国立工芸館のコレクションが大集合!激動の時代に生まれた「モード」【岐阜県美術館】

岐阜県美術館にて、2025年11月15日から2026年2月15日まで、「大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ」が開催中です。

国立工芸館の貴重なコレクションが岐阜県に一挙集結。大正ロマンや昭和モダンの世界を、当時の最先端をいく美術・工芸・デザインとともに振り返ります。

大正から昭和へ日本と海外、共鳴し合うデザイン


ルネ・ラリック《ブローチ 翼のある風の精》1898年頃 国立工芸館

日本の美術工芸品が世界に知られるようになったのは、1862年のロンドン万博がきっかけであると言われています。1870年代以降、ヨーロッパでは日本的な装飾性、いわゆる「ジャポニズム」が流行しました。

1925年、パリで行われた「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称『アール・デコ博』)」ではメインの噴水塔のデザインを手がけたルネ・ラリックも、日本のデザインに影響を受けた作家のひとりです。

蝶を模したと思われるデザインには、ガラス質の釉薬を焼き付けて彩りを持たせる、日本の七宝にも通じる技術が用いられています。


「大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ」展示風景

宝飾品といえば貴石が主流であった当時、半貴石やガラス、七宝を使ったことは欧州の人びとに大きな驚きを与えました。

海外でアール・ヌーヴォーが流行すると同時に、日本にも海外のデザイン性が輸入されていきます。

19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ全土に広まった装飾様式「アール・ヌーヴォー」のエッセンスを日本の工芸に取り入れ、「和のアール・ヌーヴォー」を確立させたのが、板谷波山です。


板谷波山《葆光彩磁牡丹文様花瓶》1922年 国立工芸館蔵

日本の陶磁器の文様には染付や赤絵が用いられることが多いですが、こちらの作品は白いボディにモーヴピンクとグレーを使用しています。

モチーフには牡丹という東洋ならではの花を使用しながら、文様にヨーロッパのセンスを取り入れる。「和洋折衷」という言葉がこれ以上なく似合う作品です。


実質「座れる展示」!?バルセロナチェア

齋藤学芸員が「ぜひ座って欲しい」と力説するのが、こちらの椅子。岐阜県美術館の開館当時からある椅子なのですが、実は1929年のデザインがそのまま利用されている「バルセロナチェア」と呼ばれる名品です。

この椅子に腰かけながら作品を眺めていると‘モード’の世界により深く没入できる気がします。

ガラス作品、アクセサリー、ポスター。
現代も色あせない「モード」の魅力


「大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ」展示風景

本展は、石川県金沢市にある国立工芸館のコレクション152点が、岐阜県に一挙集合しています。この豪華な展示には、齋藤学芸員もつい「こんなにいいのかな・・・?」と困惑したそう。

学芸員の皆さんがリスペクトを込めて選出した工芸品たちは、岐阜県美術館の所蔵品の新たな魅力を引き出しています。


各務鑛三《飾皿 銘 祈り》1929年 岐阜県美術館蔵

筆者がとくに惹かれたのが、岐阜県多治見市出身のガラス作家、各務鑛三(かがみこうぞう)の作品です。

各務はガラス工芸の腕を磨くためにドイツに留学し技を磨いた作家で、直線や幾何学模様を用いたデザインに欧州のエッセンスを取り入れています。第一次世界大戦後のドイツの人びとが、平和への祈りを向けていた姿を作品に刻みました。

この作品が作られた1920年代は、大正から昭和へと時代が移り変わった激動の時代です。不安定な時代であったからこそ、アーティストたちの発信するメッセージはより深く、重いように感じます。

岐阜県美術館所蔵の絵画、工芸作品が、国立工芸館の所蔵品と展示されることで得られる新たな空気感は、まさにコレクション同士のダイアローグ(対話)と言えるでしょう。

現代にも繋がる!
「ロマンティック・モダン」から工芸の魅力を再発見


「大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ」展示風景

海外から取り入れられたデザインは、洋装だけでなく、和装にも影響を与えました。

着物の帯図案には、トランプなどの無機物や幾何学模様といった斬新なモチーフが取り入れられ、当時の流行を敏感に反映しています。


「大正・昭和‘モード’の源泉 国立美術館 コレクション・ダイアローグ」展示風景 特別出品 朝長コレクション(個人蔵)

大正・昭和の着物の現物が複数展示されているスペースは目にも華やかです。

アート初心者にもオススメ!憧れとトキメキが詰まった展覧会

岐阜県美術館で開催される本展は、レトロ好きの心をくすぐるだけでなく、日本のモダンデザインのルーツを辿る貴重な機会でした。


「ナンヤローネSHOP」

美術館内にあるミュージアムショップ「ナンヤローネSHOP」では、限定グッズとして図録も販売しています。こちら、なんとケースつき。デザイン面と機能面両方が備わった、こだわりの図録です。


「ナンヤローネSHOP」店内のようす

ショップ内では、岐阜県美術館オリジナル商品のほか、岐阜県内の工芸作家の作品も多数販売。普段なら工房でしか買えないアイテムも扱っているということで、図録をお買い求めの際はショップもぜひチェックしてくださいね。

また本展では、2025年1月6日(火)からは後期として展示替えが予定されています。後期も魅力的な展示品が多数公開予定とのことなので、ぜひ複数回訪れて大正・昭和の美の真骨頂を感じていただきたいです。

Exhibition Information