ウィリアム・ターナー/10分でわかるアート
2022年2月2日
【特別展】LOVE いとおしい…っ!/山種美術館

【特別展】LOVE いとおしい…っ! 展示風景より 奥村土牛《鹿》1968(昭和43)年 山種美術館蔵
山種美術館にて、【特別展】LOVE いとおしい…っ!が開催中です。
さまざまな愛の形を描いた近代・現代の名品を集めたユニークな企画となっています!
展示は家族愛、その中でも親から子に向けた愛に注目するところからスタート。

速水御舟《桃花》1923(大正12)年 山種美術館蔵
速水御舟の《桃花》は、桃の木の絵のどこが愛・・・?と思う方もいそうです。
実は、御舟の長女の初節句のために描かれたもので、シンプルでありながらも愛に満ちあふれた作品となっています。

小出楢重《子供立像》1923(大正12)年 山種美術館蔵
山種美術館では珍しい洋画からも愛を感じます。大正時代にとてもハイカラな装いのこちらは、小出の5歳の息子だそう。
じっとしててもらうために、ごほうびをちらつかせたというかわいらしいエピソードもあります。
愛にはさまざまな形がありますが、皆さんは「LOVE」と聞いて何を思い浮かべますか?
画家のモティーフとなった愛は、やはり「恋愛」でしょうか。
日本画の世界では甘美な恋愛というより、悲恋が多く見受けられます。

北野恒富《道行》1913(大正2)年頃 福富太郎コレクション資料室蔵
北野恒富の《道行》(福富太郎コレクション資料室蔵)。近松門左衛門『心中天網島』のカップルを描いています。
禁断の恋の果て、心中を約束した治兵衛と遊女・小春。心中すれば結ばれることができるのに、薄暗さやもの悲しさが感じられる作品です。

小林古径《清姫》1930(昭和5)年 山種美術館蔵
安珍清姫で知られる道成寺伝説を描いた本作。山種美術館の所蔵する8枚すべてが展示されています。
僧の安珍を慕っていた清姫。裏切られたことが分かると蛇に変身し、日高川を渡って追跡し、道成寺で鐘ごと安珍を焼き殺したという伝説です。

キレた清姫、山を越え、疾風のごとく安珍の後を追っています
小林古径《清姫》のうち、「清姫」1930(昭和5)年 山種美術館蔵
思いが強すぎる恋愛はいずれ憎悪にもなりうる・・・生々しい感情は今も昔も変わりませんね。
ちなみに、古径はこの作品を気に入っており長年手元に置いていましたが、親しかった山種美術館創立者・山﨑種二に「美術館をつくられるのならば」と購入を許したというエピソードがある逸品です。
人から人への愛だけが「LOVE」ではありません。
たとえば動物。
昔から人間のそばにいた動物は、身近なモティーフとしてよく描かれていました。

竹内栖鳳《鴨雛》1937(昭和12)年頃 山種美術館蔵
竹内栖鳳が描く動物はどれもかわいらしく繊細で、丁寧に動物を観察していたことが伺えます。
その描写力は、自ら「動物を描けば、その体臭まで描ける」と語るほどだったそうです。

展示風景より右、小林古径《猫》1946(昭和21)年 山種美術館蔵
気高さがただよう古径が描いた猫。本作品のためとみられるスケッチが複数残されており、試行錯誤を重ねたことが分かります。
また、ヨーロッパ滞在の写生に、エジプトのバステト神と思われる猫の図像もあったのだとか。
飼い猫と猫の神を重ね合わせて凛々しく描いたのかもしれませんね。
神つながりで、神秘的な愛もご紹介。

小山硬《天草(洗礼)》1972(昭和47)年 山種美術館蔵
熊本県天草のとある教会で取材をしたという小山は、夜の洗礼式の見学を許され、その時のようすを描きました。
洗礼は、キリスト教でとても大切で神秘的な儀式です。神父やシスター、村の人も集まる中で洗礼を受ける赤ん坊は、愛の象徴にも見えます。
さまざまな愛の形が見られる本展。鑑賞後もまだまだ楽しめます。
気に入った作品のポストカードはいかがでしょうか?

恒例の展覧会オリジナル和菓子も!
青山の老舗「菊家」に特別にオーダーし、本展の出品作品をモティーフにした和菓子が、美術館ロビーの「Cafe 椿」で提供されています。

見た目が美しいのはもちろんですが、最高に美味しいのもうれしい♪
大切な人と、LOVEをキーワードにした展覧会へお出かけしてみてくださいね。
※本文中の所蔵記載のない作品は、すべて山種美術館所蔵です。