グスタフ・クリムト/10分でわかるアート
2022年6月15日
小出楢重 新しき油絵/府中市美術館
府中市美術館にて、画家・小出楢重(こいでならしげ、1887-1931)の25年ぶりとなる回顧展「小出楢重 新しき油絵」が開催中です。
初期から絶筆に至るまでの画業を各時代の代表作とともに辿り、楢重の創作の軌跡を紹介。
また、日本近代洋画史に輝く、楢重の裸婦の傑作を一堂に展示します。

(左から)小出楢重《銀扇》1914年 大阪中之島美術館、小出楢重《自画像》1913年 東京藝術大学
洋画家の中では、「東の岸田劉生、西の小出楢重」と称されるほどのビックネームである小出楢重。
楢重は1887年、大阪・島之内の老舗の薬屋の三男として生まれました。
洋画家になることを目指して、1907年に東京美術学校(現・東京藝術大学)を受験。
しかし西洋画科は、準備不足が響き不合格であったものの、及第点を得ていた日本画科に入学します。
油彩画を描くことへの情熱は冷めることなく、2年後に西洋画科に転科し、50人中5番目という好成績で卒業をしました。

小出楢重 重要文化財《Nの家族》1919年 公益財団法人大原芸術財団大原美術館
卒業後は地元・大阪で制作を続け、1919年《Nの家族》で新人賞にあたる二科展樗牛(ちょぎゅう)賞を受賞。
1924年には、大阪で信濃橋洋画研究所を開設し、関西の洋画界で指導的地位をつとめました。

(左から)小出楢重《帽子をかぶった自画像》1924年 石橋財団アーティゾン美術館、小出楢重《ラッパを持てる少年》1923年 東京国立近代美術館
若くから病気がちで、自らを「骨人(こつじん)」と呼ぶほどの痩身であった楢重。
43年という短い生涯の中で、油彩画のほかに日本画やガラス絵、挿絵・装幀、随筆など多彩な活動をしました。

展示風景より、ガラス絵
中でもガラス絵は、楢重の代名詞ともいえることでしょう。
ガラスに直接絵具をのせるこの技法は、当時は店の看板などに使われる大衆向けの工芸品でした。
楢重は素材への愛着からガラス絵に取り組むように。鮮やかな発色が魅力的な、まるで宝石のような小品を多数残しています。

展示風景より、手前 谷崎潤一郎『蓼喰ふ蟲』挿絵帖 1928-29年(頁替えあり)
新聞小説の挿絵も手掛けました。
特に谷崎潤一郎『蓼喰ふ蟲』の挿絵は、日本近代挿絵史のなかでは重要作の一つに位置付けられています。

小出楢重他 画帖 大阪中之島美術館(頁替えあり)
また、楽しげなタッチで描かれた日本画にも注目。
楢重は、幼い頃に日本画家・渡辺祥益(しょうえき)に絵の手ほどきを受け、東京美術学校でもはじめの2年間は日本画科で学んだ、日本画の基礎を備えた洋画家でもあります。

小出楢重《めでたき風景》1926年 大阪中之島美術館
鶴や松竹梅といった吉祥画題を丸や直線を大胆に組み合わせて描いた《めでたき風景》は、新年に相応しい作品。
年初めの美術鑑賞にもおすすめです。

楢重芸術の真骨頂である裸婦は、「楢重の裸婦」「裸婦の楢重」と呼ばれるほど、生前から高い評価を受けていました。
本展では、晩年の裸婦から7点を紹介します。

モデルの顔は奥を向いているか、正面向きでも目鼻が単純化されており、女性の個性を意識させないように描かれています。
日本人女性のからだを美しく描き出す楢重の裸婦像は、西洋的な理想から離れて日本ならではの油絵を確立しようとした、楢重の到達点ともいえるものです。

(左から)小出楢重《立てる裸婦》1930年 メナード美術館、小出楢重《裸女と白布》1929年 東京国立近代美術館
小出楢重の代表作が一堂に会する25年ぶりの回顧展「小出楢重 新しき油絵」。
西洋美術由来のテーマを、日本人にも実感できるものに生まれ変わらせた楢重。
その洗練された油彩画のスタイルを、ぜひ会場でじっくりとご覧ください。

※作品の大幅な展示替えを行います。
前期:2025年12月20日〜2026年1月25日
後期:2026年1月27日〜2026年3月1日