ハプスブルク家/10分でわかるアート
2024年12月18日
つぐ minä perhonen/世田谷美術館

エントランスもミナペルホネンらしい装いに
現在、世田谷美術館では「つぐ minä perhonen」展が開催されています。
ミナ ペルホネンはデザイナーの皆川明氏が1995年に創設し、テキスタイルデザインを中心に、衣服をはじめ、家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど日常に寄り添うデザイン活動を行っているブランドです。

エントランスに設置されたかわいい図柄に思わず駆け寄る
本展はその30年のものづくりのありかたを「つぐ」という言葉を通じて紹介しています。
ミナ ペルホネンがコンセプトとする「特別な日常服」は一着の服をながく愛してほしいという願いが込められており、手仕事の息づかいを感じるテキスタイルは多くの人を魅了しています。
かくいう私もその一人なのですが、実際にミナ ペルホネンの服を並べて見ることができる機会はほとんどないためファンにとっても待望の展覧会ともいえます。

展示エリア「コーラス」の展示風景
今回の展示室は音楽用語になぞらえた空間で構成されており、そのはじめが「コーラス」です。ここではこれまでに発表された1000種類ほどにおよぶミナ ペルホネンのテキスタイルの中から約180種類を厳選して展示しています。
窓からの眺めとテキスタイルが調和し美しく楽しい空間です。子どもたちに「どれが好き?」と聞くと、自分たちのはるか頭上に展示されたものまで見上げながら目を輝かせてお気に入りのデザインを探していました。

一つのテキスタイルから展開される様々なアイテムが並ぶ
続く展示エリア「スコア」では、ミナ ペルホネンの21の柄の成り立ちと、テキスタイルを使って生まれたアイテムが並んでいます。
アイデアが図案となり、それがものに変わっていく過程がよく分かるコーナーです。スケッチに書き込まれた指示メモなどもそのまま展示されていて創作の痕跡を感じることができます。

展示風景より
テキスタイルの美しさはもちろん展開されるアイテムも必見です。柄ごとにアイテムが違っていてピンバッチやベルトのバックルなどユニークなアイテムが目を楽しませてくれます。素材の質感を間近で見ることができる機会はなかなかありません。
子どもたちにとっては、「生地ってこうやってデザインされているんだ」ということが知れる、まるで工場見学のような空間でした。

持ち主の物語とともにリメイクされた洋服が並ぶ
ブランド創設当初から、お直しやリメイクの窓口を設けてきたミナ ペルホネン。そこにも「特別な日常服」への思いが表れています。
最後の展示エリア「リミックス」では、その仕事をさらに発展される試みとして、時間を経て直しが必要となった服に新たなデザインを加える公募制のリメイクプロジェクトの服が並びます。

展示風景より
持ち主それぞれの物語とともに、新たなデザインが加えられた洋服が並んで展示されており、まさにこの展覧会のタイトルである「つぐ」を体現する展示室といえます。
これまで大切にされてきた特別な服だからこそ、これからも大切にされ続けていくんですね。そういうものを身の回りに置きたいものです。

長椅子も「ミナ ペルホネン」仕様
今回の展覧会に合わせて、美術館内の廊下や長椅子にもミナ ペルホネンのテキスタイルが施されています。やさしく触れると普段とはちがう柔らかで優しい素材感を感じることができます。
展示とともに館内に散りばめられたミナ ペルホネンの世界観を味わってみてください。

それぞれの人にとっての「特別な日常服」を30年間にわたって紡ぎだしてきたミナ ペルホネン。それらの作品を通して、タイトルの「つぐ」という言葉に込められたミナ ペルホネンの哲学と美意識を体いっぱいに感じることができました。
鑑賞後、心にぬくもりが残るのは手仕事と日常の暮らしを大切にする同ブランドの想いを私がつぐことができたからでしょう。
自然豊かな砧公園の中に佇む美術館で、心も体もほっこりあたたかくなる展覧会でした。