THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦/神戸ファッション美術館

新版画ムーブメントの火付け役!版元・渡邊庄三郎の新版画【神戸ファッション美術館】

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2026年2月19日

新版画ムーブメントの火付け役!版元・渡邉庄三郎の新版画【神戸ファッション美術館】

“新版画ムーブメント” の火付け役となった版元・渡邊庄三郎。

その渡邊庄三郎が、多彩なアーティストと高い技術を持つ職人とをプロデュースし、生み出した貴重な初摺の「渡邊版」を観ることができる展覧会が神戸ファッション美術館にて開催中です。

令和にみても新しい!「新版画」とは

「新版画」とは、浮世絵木版画の近代化と復興を目指して伝統的な技法で制作された、新しい時代にふさわしい新たな芸術品としての木版画のこと。

長らく庶民の間でメディアとして親しまれていた「浮世絵」は明治以降、西洋の写真や印刷技術導入の影響で衰退の一途をたどっていました。

そんな中、それまでのメディアとしての浮世絵ではなく、高い芸術性を誇る「美術品」として新版画を生み出し、世に送り出したのが版元・渡邊庄三郎です。


解説する渡邊 章一郎氏(渡邊木版美術画舗 代表取締役)

「新版画」は浮世絵と同じく、絵師・彫師・摺師、そしてプロデューサーの役割をもつ版元がひとつとなり制作されますが、使われる絵具や和紙、摺りの回数などはそれまでの浮世絵とは一線を画します。

こちらは渡邊庄三郎が外国人アーティストのフリッツ・カペラリ(1884〜1950)とコラボして誕生した作品。

この作品で使われている「ざら摺り」は摺りの道具である「バレン」の筋をだし、職人の手の回し方でさまざまな表現ができる摺り方です。

ただ、職人からすると筋の後を残すのは未熟な摺り方なので最初は嫌がられたのだそう。

そんな中、版元・渡邊庄三郎が自身でざら摺りをやってみせ職人を説得したのだとか!


第1章 「新版画」の誕生 展示風景
手前 フリッツ・カペラリ《黒猫を抱く女》大正4年(1915) 渡邊木版美術画舗版
奥 フリッツ・カペラリ《傘(雨中女学生帰路の図)》大正4年(1915) 渡邊木版美術画舗版

異国情緒漂うこの作品は、イギリス人アーティストのチャールズ・W・バートレット(1860〜1940)のもの。

版画とは思えないほど細かい波の形や、海と空の絶妙な色のグラデーションが特徴です。

バートレットは、この絶妙な色のグラデーションや細かい表現が発展するきっかけに一役かっているのだそう。


右 チャールズ・W・バートレット《ホノルル浪乗り》大正8年(1919) 渡邊木版美術画舗版
左 チャールズ・W・バートレット《ホノルル浪乗競争》大正8年(1919) 渡邊木版美術画舗版

当時注文生産で制作をしていたバートレットは、彫師や摺師に高額なチップを渡していました。

いい仕事をするとまたチップをもらえるかも!と職人たちが張り切り、新版画の技術革新が進むきっかけになったのだとか。

そしてその技術は、後の新版画づくりに反映されていきます。


手前 チャールズ・W・バートレット《インドの絹商人》大正5年(1916) 渡邊木版美術画舗版
奥 チャールズ・W・バートレット《カシミールの村寺》大正5年(1916) 渡邊木版美術画舗版

作家と職人の努力がすごい!新版画の「美人画」

新版画は「美人画」「風景画」「役者絵」「花鳥新版画」という4つの種類があり、それぞれの分野を得意とする作家がいます。

第二章、美人画のコーナーでは伊東深水(1898〜1972)と職人がたゆまぬ努力でつくりだした作品を観ることができます。

赤色の背景が目を惹く《眉墨》は、とても高い技術で作られた作品。

版画で真っ赤と真っ黒をムラなく均一に表現するのはとても難しいのですが、《眉墨》は全くムラを感じさせません!


第二章 多彩な美人画の世界 展示風景
手前:伊東深水《眉墨》昭和3年 (1928) 渡邊木版美術画舗版

《新美人十二姿 初夏の浴》は「空摺り(からずり)」と呼ばれる技法が使われている作品。

空摺りは、板に絵の具を乗せず強い圧力をかけることでエンボス加工を施す方法です。

1回目の本摺りで100枚失敗、2回目に100枚摺ってようやく完成したのだとか。

どちらの作品も、ぜひ近くで観てくださいね!


第二章 多彩な美人画の世界 展示風景
手前 伊東深水《新美人十二姿 初夏の浴》大正11年 (1922 ) 渡邊木版美術画舗版

モダンでお洒落な女性が描かれている2つの作品は「時代の風俗を書く」小早川清(1899〜1948)が描いたもの。

当時の流行の先端であった「モガ(モダンガール)」がビビッドな色合いで描かれています。

浮世絵に描かれた美人画とはひと味違う、新しい時代の訪れを感じます。


右 小早川清《舞踏》昭和9年(1934)渡邊木版美術画舗版
左 小早川清《近代時世粧ノ内 ー ほろ酔ひ》昭和5年(1930)渡邊木版美術画舗版

第4章では「モダン役者絵」も展示されています。

役者絵とは今で言うところの「推し」を描いたもの。

「雲母摺り(きらずり)」というラメのように輝く技法が使われている作品もあり、展示作品を下から見上げて観ると「推し」がキラキラと輝いてみえます。

ぜひ、いろんな角度から観てくださいね♪


第4章 モダン役者絵 展示風景

川瀬巴水が魅せる、新たな「風景画」

新版画の「風景画」を代表する作家の川瀬巴水(1883〜1957)。

巴水は日本各地を写生した作品で高い評価を得て、「昭和の広重」「旅情詩人」などと称されています。

《東京二十景 芝増上寺》は、雪の細やかな点がとても繊細な技術で見事に表現されています。
ひと目みただけで寒さが伝わってきますね。


第3章 新たな風景画の出現 展示風景
手前 川瀬巴水《東京二十景 芝増上寺》大正14年 (1925) 渡邊木版美術画舗版

巴水は旅先での作品作りの際、地元の人が大事にしている景色を聞いて、わざわざその場所に足を運び作品を描いたのだとか。

さらに同じ景色でも絵具や版木を変えた作品もあり、版元・渡邊庄三郎の遊び心を感じます。季節や天候、うつりゆく時間の流れなどを巴水ならではの感性でたくみに表現しています。


第3章 新たな風景画の出現 展示風景
手前 川瀬巴水《箱根宮の下 冨士屋ホテル 春 夏 秋 冬》昭和24年 (1949) 渡邊木版美術画舗版

中には旅先で温泉に浸かっている巴水自身を描いた作品や、版画にした時により良くなるよう一部の版木を変えてアレンジをしている作品もあります。

巴水の風景画に癒されること間違いなしのコーナーです♪

海外で大人気!「花鳥新版画」

新版画では花や鳥、動物を描いた「花鳥新版画」も人気を博しました。

特に小原祥邨(おはら しょうそん、1877〜1945)の作品は海外でも人気があり、昭和8年にポーランドで開かれた展覧会では967枚もの注文が入ったほど!

一見すると水彩画のような淡い色合いで美しい背景、動物のふさふさの毛並みを空摺りで表現しています。


第5章 花鳥新版画の魅力 展示風景
手前:小原祥邨《荻に兎》昭和4年 (1929 )渡邊木版美術画舗版

同じ「花鳥新版画」でも、高橋弘明(1871〜1945)はビビッドな色合いです。

写真右側の《白猫》は「新版画がますます盛り上がるように」と言う想いが込められており、赤と白は「日の丸」を、背景の黒は版画の「墨」を表しているんだとか。

縁起が良く、可愛らしい《白猫》は猫好きにはたまらない作品です!


第5章 花鳥新版画の魅力 展示風景
右 高橋弘明(松亭)《白猫》大正15年(1926) 渡邊木版美術画舗版
左 高橋弘明(松亭)《ねずみと根菜》大正15年(1926) 渡邊木版美術画舗版

最後は貴重なフォトコーナーをご紹介します♪

フォトコーナーでは小原祥邨の《柘榴に鸚鵡》が撮影可能となっており、バナーを含めての記念撮影や、チケットを入れての撮影も可能とのこと。

展覧会の思い出に、ぜひ撮ってみてくださいね!

*本展覧会で撮影ができるのはこの作品のみです


フォトコーナー
小原祥邨《柘榴に鸚鵡》昭和初期 渡邊木版美術画舗版

間近で観るから楽しめる!夢中になる「新版画」

「新版画」ってなに?摺り方なんて分からない・・・と思っている方にこそぜひ観て欲しい本展!

間近で作品を観ているうちに、なんとなく摺り方の違いがわかり、夢中になります♪

AIで簡単にそれなりの絵が作れてしまう時代に、版元と作家、彫師と摺師がタッグを組み、たゆまぬ努力と技術で作られた作品は目に感動を与えてくれました♪


ミュージアムショップ ポストカードコーナー

Exhibition Information

展覧会名
THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦
開催期間
2026年1月31日~3月29日
会場
神戸ファッション美術館
公式サイト
https://www.fashionmuseum.jp/