PROMOTION
クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
北斎花らんまん/すみだ北斎美術館
古くから人びとに愛されている花は、絵画の主題としても数多く取り上げられてきました。とくに日本には、春になれば桜を、夏はあさがおを、秋冬は菊や椿などいった四季の花を愛でる文化があります。
そんな人びとがこよなく愛する「花」に焦点を当てた展覧会が、すみだ北斎美術館で開催中です。
本展では、葛飾北斎とその弟子たちが描いた桜をはじめとする、四季の花の作品約100点を前後期に分けて紹介。花見の対象とされる花や物語に登場する花、またデザインとして着物や道具に取り入れられてきた花など、当時の日本人が日常の中で愛でてきた花に関する作品を一堂に展示します。
※展覧会詳細はこちら
現実では一度に楽しむことが難しい四季の花を一堂に紹介する本展。展示室に入ると、桜や梅、あさがお、椿など色とりどりの花を描いた作品がずらりと並びます。
本展では、前後期あわせて約35種の四季の花が描かれた作品を展示します。美術館にいながら、季節の花が楽しめるのはとてもお得ですね♪
なかでも編集部が気になった作品を、本記事で紹介します。
存斎光一 花咲か爺さん 年代未詳 すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
日本の五大昔話のひとつ『花咲かじじい』の主人公・花咲かじいさんが、灰をまいて花を咲かせている場面を描いた本作。通常、花咲かじいさんが咲かせる花といえば桜をイメージする人も多いと思いますが、本作では「梅の花」を咲かせています。
画面右上の枝にチョンと乗ったうぐいすが、梅の花が満開になるのを待っているようにも見えます。今にも春を告げるかわいらしい声で鳴き出しそうですね。
また、花咲かじいさんの上に記された狂歌には、梅の香りについて詠んだものなどが書かれており、初春の凛とした空気感を感じさせます。
日本の国花のひとつである「桜」は平安時代から人気があり、数ある花の中でも多くの絵のモチーフになっています。
桜の開花時期になると上野をはじめとする桜の名所で行われるお花見は、田植えの時期に豊穣を願う儀式を起源とするのだそう。現在のお花見スタイルは江戸時代に確立されました。
葛飾北斎 新板浮絵東叡山花盛之図 文化(1804-18)中期頃 すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
北斎が描いた「新板浮絵東叡山花盛之図」は、赤いすやり霞(*)が使われたシリーズのうちのひとつです。
本作は現在の上野に位置する東叡山寛永寺を、遠近法を利用した「浮絵」という形式で描いています。寛永寺は、創建者である天海が上野の山を桜で有名な奈良・吉野山に見立てて桜の植樹を始めたことで、桜の名所として発展しました。
*すやり霞:大和絵や絵巻物のなかで、画面を区切って遠近を示し、また、場面の転換を示すために用いられる横に長く棚引くかすみのこと。
桜と同様に、日本の国花とされる「菊」を描いた作品も紹介。本作には、菊慈童(きくじどう)という古代中国の王朝「周」の穆王(ぼくおう)に仕えていた子どもが描かれています。
葛飾北斎 菊慈童 文化(1804-18) すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
王から可愛がられていた菊慈童ですが、ある日、王の枕をまたいだ罪で流罪に処されてしまいます。
王はそんな彼を哀れみ、二句のお経を渡しました。菊慈童はそのお経をありがたく思い、追放された地で菊の葉にお経を書き写します。すると、その葉にかかる水は霊薬となり、それを飲んで暮らした菊慈童は不老不死の仙人になったといわれています。
この菊慈童のエピソードは画題のほか、能や長唄の題材にも取り上げられていました。
葛飾北斎 牡丹に胡蝶 天保(1830-44)初年頃 すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
本作は、「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」と同じ版元である西村屋与八から出版された、北斎の大判花鳥画シリーズの一図です。
風になびく牡丹と蝶を描いており、突風が吹いた一瞬を見事にとらえています。この風に吹かれている花のリアルな描写は、中国の明代および清代の絵画である「明清画」からの影響を受けていると考えられているのだそう。
こうしたディテールの描写や、花が見せる一瞬の美しさを切り取る絵師の優れた観察眼にも注目し、作品を見てみてください。
二代葛飾戴斗 『万職図考』五編 金蒔画 てつせん 朝かほ うめ 牡丹 山吹 嘉永3年(1850) すみだ北斎美術館蔵(通期展示)
花は着物や道具の意匠としてデザイン化されるなど、生活のなかでも身近なものとして愛でられてきました。
本展では、北斎と弟子たちが手掛けた花をあしらったデザインについても紹介します。
日常で使う道具などに施された花のデザインにも注目。どのデザインも本物の花のように写実的に描き込まれていますよ。
4階の常設展プラスでは「隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画」が開催中です。
ここでは、北斎の肉筆画のなかで最長とされる「隅田川両岸景色図巻」の複製画を紹介。あわせて、『北斎漫画』の実物第高精細レプリカも展示します。
葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」文化2年(1805) すみだ北斎美術館蔵 ※展示は複製画
両国橋から大川橋(現在の吾妻橋)、山谷堀あたりまでの隅田川両岸の景色に続き、新吉原の室内でのようすが見事な筆づかいで描かれた本作。展示室の端から端まで伸びる本作の長さはなんと、全長約7m! 北斎の肉筆画のなかで最長作といわれています。
また〈『北斎漫画』ほか立ち読みコーナー〉では、北斎の絵手本『北斎漫画』、『一筆画譜』や『をどり独稽古』などののレプリカを、毎日入れ替えて展示します。
実際に手によって読むことができますが、新型コロナウイルス感染防止のため、観覧の際には美術館の指示に従ってください。
企画展「北斎花らんまん」とあわせて、4階の常設展プラスも鑑賞してみてくださいね。
北斎と弟子たちが描いた四季の花を紹介する本展。
今年の春は、すみだ北斎美術館でお花見を楽しんでみてはいかがでしょうか。
なお、本展は前後期で一部展示替えがあります。前期展示は4月17日(日)まで、後期展示は4月19日(火)からスタートします。その他詳しい情報は、美術館公式サイトをご確認ください。