塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家について分かりやすく簡単に知ってもらうことを目的としています。
今回は、やまと絵を継承した「土佐派」について詳しくご紹介。
「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。
平安時代前期、唐絵(からえ)と呼ばれる中国由来の由来の絵画に学びながら成立し、独自の発展を遂げてきた世俗画を指すやまと絵。
土佐派は、そのやまと絵を継承した画派です。
室町前期に活躍した宮廷絵師・藤原行広が「土佐」と名乗ったことから始まりました。
なかでも土佐派の地位を確立した人物として知られているのが、土佐光信(とさみつのぶ、生年不詳-1525頃)です。
光信は宮廷や社寺に所属し絵画制作を行う、宮廷絵所のリーダー的存在、絵所預(えどころあずかり)にまでなり土佐派の絵師の中でトップの地位にいました。
土佐光信について詳しく知りたい方はこちら▼
しかし、織田信長に仕え、1569年8月の但馬攻めに参加した土佐光元(とさみつもと、1530-1569)が戦死したことにより、土佐宗家は廃絶。同時に、土佐派の絵所預としての地位も失われました。
以降、弟子たちが画系の維持と土佐派再興を目指し活動を続けます。
その後1654年に、土佐光起(とさみつおき、1617-1691)が室町末期以来とだえていた宮廷の絵所預となり、土佐家を再興。江戸時代の土佐様式をつくりあげました。
100年近く絵所預の地位を築いてきた土佐派。
しかし、同じくやまと絵を継承し、狩野正信(かのうまさのぶ、1434-1530)が創立した狩野派へとその座を譲っていくこととなりました。
土佐派を代表する画家を紹介します。
土佐派を創立した人物である土佐行広。
姓は藤原でしたが、京都で初めて「土佐」と名乗り、宮廷や社寺に所属する形で絵を描く宮廷絵所の絵師となります。
代表作は重要文化財《融通念仏縁起絵巻》や《十二類合戦絵巻》など。
柔らかい筆線と穏やかな色彩が作品の特徴とされています。
室町時代中期に活躍した土佐光信は、土佐派を統一し画系として確立させた人物です。
行広の筆跡や色彩を継承しつつ、戦国大名・朝倉貞景(あさくらさだかげ)の指示で京中の新図を描きました。
屏風形式での洛中洛外図の最初の作品だと言われています。
土佐光起は、一度は途絶えてしまった土佐派を再興させた人物です。
父である土佐光則(とさみつのり、1583-1638)とともに和泉国(現・大阪府南西部)堺から京都へ戻り、土佐派復興のために尽力しました。
光則亡き後に、光起の才能は認められ、再び絵所預の地位を獲得!
それまでの土佐派の濃い色彩ではなく、軽みのある装飾美で作品を描きました。
土佐光信《融通念仏縁起絵巻》紙本著色 1314年
平安後期の僧である良忍(りょうにん)を開祖とする「融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)」。念仏思想を信奉する仏教の宗派です。
本作には、良忍の伝記と融通念仏宗の始まりが描かれています。
1314年に原本が完成したあと、鎌倉時代から室町時代にかけて広く伝写されました。
土佐光信《清水寺縁起絵巻》紙本著色 1517 東京国立博物館
「清水の舞台」で知られる京都・清水寺は、清らかな水が湧き出ている「音羽の滝」を賢心(けんしん)という僧侶が発見したことが始まりとされています。
この《清水寺縁起絵巻》は、清水寺の建立について描かれています。
絵は土佐光信筆で、詞書(ことばがき)は三条実香(さんじょうさねか)他が書いた本作。
光信晩年の円熟した画風を示す代表作で、伝統的なやまと絵の絵巻の最後を飾る作品です。
土佐光起《源氏物語絵巻》12世紀前半
《源氏物語絵巻》は紫式部が描いた長編物語『源氏物語』を絵画化した絵巻で、物語が成立してから約150年後の12世紀に誕生しました。
本作は雪が降っていて外で遊ぶ女性と、邸内には光源氏と紫の上が描かれています。
土佐行広がはじめて、たくさんの画家が繋いできた土佐派。ひとくちに「土佐派」と言っても、絵師によって色づかいが違ったり、より進化したやまと絵になっていたりと実に多様です。
伝統的な日本画で多くみられる画系なので、さまざまな美術館・博物館で鑑賞することができますよ。
【参考書籍】
・辻惟雄『日本美術史』株式会社美術出版社 2015年
・安村敏信『絵師別 江戸絵画入門』株式会社東京美術 2015年
・中西一雄『基本を押さえる美術歴史』株式会社美術出版社 2016年
・日本博学倶楽部『「名画の巨匠」 謎解きガイド』株式会社PHP研究所 2016年
・守屋正彦『すぐわかる日本の絵画』株式会社東京美術 2019年