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2024年11月1日
今回の「10分でわかるアート」では、ルネサンスとバロックの間に位置する不思議な芸術様式「マニエリスム」について、詳しくご紹介していきます。
マニエリスムとは、16世紀半ばから17世紀初頭にかけてヨーロッパで流行した芸術様式です。
イタリア語の「マニエラ(流儀、様式)」に由来する名称と言われています。
この時期、ルネサンスの理想主義的な表現に飽き足らなくなった画家たちは、新たな表現方法を模索し始めました。
彼らは宗教画や神話画において、非合理な空間や非自然的な人体を描くことに挑戦したのです。
ルネサンス美術について詳しく知りたい方はこちら▼
マニエリスムの特徴として、人体の歪んだプロポーションや不安定な構図、人工的な色彩などが挙げられます。
これらの要素は、従来の調和的な美の概念を意図的に崩すものでした。
この独特の表現は、特に王侯貴族や宮廷で好まれました。
洗練された趣味と高度な教養を持つ彼らにとって、マニエリスムの複雑で知的な表現は魅力的だったのでしょう。
また、この様式は当時の社会的・宗教的な不安定さを反映していたとも言われています。
マニエリスムの作品を初めて観ると、その独特の表現に驚かされるかもしれません。普通の絵画とは少し違う、不思議な魅力があるのです。
まず気づくのは、人物の体の描き方です。首が異様に長かったり、体がくねくねと曲がっていたりと、現実離れした表現が多いのです。
パルミジャニーノの《長い首の聖母》を見てみましょう。
聖母マリアとキリストが描かれていますが、どこか奇妙な印象を受けませんか。
この絵は首や指の異様な長さが特徴的です。
これは意図的に行われており、観る人の興味を引きつける効果があります。
また、マニエリスムは絵の構図も特徴的です。
バランスの取れた安定した構図ではなく、あえてアンバランスで動きのある構図を選んでいます。
これにより、絵に緊張感が生まれるのです。
色使いも独特です。
現実にはありえないような鮮やかな色や、極端に明るい部分と暗い部分を対比させるなど、大胆な表現が多いです。
こうした色彩が、作品に独特の雰囲気を与えています。
さらに、マニエリスムの作品には複雑な意味が込められていることがよくあります。
一見しただけではわからない象徴や意味が隠されており、それを読み解くことで作品の深い意味を理解できるのです。
これらの特徴が組み合わさることで、マニエリスムの作品は奇妙さと美しさが同居する不思議な世界を作り出しています。
一度観たら忘れられない、そんな魅力がマニエリスムにはあるのです。
マニエリスムの時代には、多くの個性的な画家が活躍しました。
アルチンボルドは、果物や野菜、花などを組み合わせて人物の肖像画を描く独特の技法で知られています。
代表作『ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世』では、季節の果物や野菜で皇帝の肖像を描き、その奇抜な発想でマニエリスムの精神を体現しています。
ジュゼッペ・アルチンボルドについて詳しく知りたい方はこちら▼
アーニョロ・ブロンズィーノの《愛のアレゴリー》は、複雑な意味が込められた典型的なマニエリスム作品です。
中央の官能的なキューピッドを取り巻くさまざまな人物や象徴的なモチーフが、謎めいた雰囲気を醸し出しています。
フランスのフォンテーヌブロー派も重要です。
《ガブリエル・デストレとその妹》は、細長い体型と優美なポーズが特徴的で、フランス独自のマニエリスム様式を示しています。
最後に、エル・グレコも忘れてはいけません。鮮やかな色彩と引き伸ばされた人体描写で知られ、その独特の様式はマニエリスムの特徴をよく表しています。
マニエリスムは、一見すると不思議で理解しがたい芸術様式に思えるかもしれません。
しかし、その独特の表現には深い意味が込められています。
作品を観るときは、全体の印象だけでなく、細部にも注目してみてください。
歪んだプロポーションや不安定な構図、人工的な色彩の中に、作者のメッセージを見出すことができるかもしれません。
また、マニエリスムの時代背景を知ることで、作品の見方も変わってくるでしょう。
ルネサンスの理想主義からの脱却を図り、新しい表現を模索した画家たちの挑戦心が、作品のそこかしこに感じられるはずです。
マニエリスムの作品は、観れば観るほど新しい発見があります。
機会があれば、ぜひ美術館で実物を観てみてくださいね。
【参考書籍】
・下谷和幸『マニエリスム芸術の世界』株式会社講談社 1977年
・ミニマル+BLOCKBUSTER 『いちばんやさしい 西洋美術の本』 株式会社 彩図社 2021年
・下濱晶子『10歳からの「美術の歴史」世界・日本の巨匠と名作がわかる本』株式会社メイツユニバーサルコンテンツ 2020年
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