塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
エドワード・ゴーリーを巡る旅/渋谷区立松濤美術館
渋谷区立松濤美術館にて、世界中に熱狂的なファンを持つ絵本作家エドワード・ゴーリー(1925-2000)を紹介する展覧会が開催中です。
渋谷区立松濤美術館 エドワード・ゴーリーを巡る旅展 会場風景
本展では、エドワード・ゴーリー・ハウスで開催されてきた企画展より、「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」の主要なテーマを軸に、約250点の作品を展示。
絵本のみならず、挿絵や舞台、衣装のデザインなど多彩な才能を持ったゴーリーの魅力を再発見するものです。
1925年、エドワード・ゴーリーは、アメリカ・シカゴに生まれました。
ゴーリーの絵本の魅力はなんと言っても、独特なリズムを持つ詩的な文章とモノクロームの緻密な描線。これらからは、19世紀のイギリス文学を思わせる重厚で不思議な世界観が感じられます。
狂瀾怒濤:あるいは、ブラックドール騒動 挿絵・原画 制作年 1986年 出版年 1987年
©2022 The Edward Gorey Charitable Trust
ゴーリーは文学やバレエ、映画などを熱烈に愛好していました。それらに対して深い知識を持つ彼は、絵本のほかにも数多くの挿絵や演劇のポスター、舞台美術も手掛けています。
後年は、マサチューセッツ州のケープコッドにある邸宅、通称「エレファント・ハウス」へと移り住み、活動を続けたゴーリー。
しかし2000年、心臓発作により惜しくもこの世を去ります。享年75歳でした。
恐るべき赤ん坊 挿絵・原画 制作年 1953年 出版年 1962年
©2022 The Edward Gorey Charitable Trust
ゴーリーの逝去から2年後の2002年、彼の終の棲家となった「エレファント・ハウス」を記念館「エドワード・ゴーリーハウス」として開館し、原画や資料による展覧会が定期的に開催されるようになりました。
『うろんな客』©2022 The Edward Gorey Charitable Trust
本展はゴーリー・ハウスで開催された企画展から、彼の芸術を考える上で主要なテーマである「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」を軸に、約250点の作品から作家の魅力に迫る展覧会です。
日本でも有名な絵本『不幸な子供』をはじめ、ゴーリーには幼児や子供が主人公となる本がいくつもあります。
渋谷区立松濤美術館 エドワード・ゴーリーを巡る旅展 会場風景
子供の絵本と聞いて思い浮かべるのは、カラフルな絵で、お姫さまや王子さまなどが主人公のファンタジーではないでしょうか。
しかし、ゴーリーが描く子供の絵本はハッピーエンドとは遠く、むしろ不条理なほど悲惨な運命を辿る子供が描かれています。
不幸な子供 挿絵・原画 制作年 1957年 出版年 1961年
©2022 The Edward Gorey Charitable Trust
こうしたゴーリーの作品の特徴は、悪いことをしたら子供はひどい目にあう19世紀イギリスのヴィクトリア朝の「教訓譚」の形式を皮肉ったものと、とらえられています。
うろんな客 挿絵・原画 制作年 1955年頃 出版年 1957年
©2022 The Edward Gorey Charitable Trust
こうした子供の絵本に描かれた達観したクールな感性は、20世紀アメリカを生き抜き、成長したゴーリーの幼少期と関係があるのかもしれません。
本展では、ゴーリー自身の幼少期の作品を含め、『不幸な子供』や『うろんな客』など日本でも人気のある作品を紹介します。
ゴーリーは12~13歳頃にバレエと出会って以来、舞台美術や衣装に興味を持っていたといいます。
20代の頃にニューヨークへ移住すると、ニューヨーク・シティ・バレエの公演に通い詰めたというゴーリー。
1956年頃からはほぼ全ての公演を観たと言われ、バレエを主題とした絵本も生み出しています。
渋谷区立松濤美術館 エドワード・ゴーリーを巡る旅展 会場風景
1970年代にゴーリーは、イギリスの作家ブラム・ストーカーによる名作『ドラキュラ』をもとにしたミュージカル劇の衣装や舞台装置、ポスターなどの総合的なデザインを任されます。
渋谷区立松濤美術館 エドワード・ゴーリーを巡る旅展 会場風景
緻密な筆致を活かし、『ドラキュラ』の世界観を見事に表現したゴーリー。この劇はブロードウェイでも公演され、高く評価されました。
そして1978年、ゴーリーはアメリカの演劇界で最高の栄誉のひとつであるトニー賞の衣装デザインを受賞しています。
本展では、絵本だけではないゴーリーの舞台美術やテレビ、映画などとの関りについても紹介します。
絵本作家エドワード・ゴーリーの多彩な才能に迫る本展。
『不幸な子供』や『うろんな客』などの絵本作品のみならず、舞台美術や衣装デザインなどからゴーリーの新たな一面を観ることができる展覧会でした。
※会期中、一部展示替えがあります。