ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?/ポーラ美術館

国内初!ロニ・ホーンの個展が箱根・ポーラ美術館で開催

2021年10月6日

ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?/ポーラ美術館


《水による疑い(どうやって)》(部分)2003-2004年
12点のピグメント・プリント(6組)、メッキされたアルミニウムの支柱、アクリルのグレージング
Courtesy of the artist and Hauser & Wirth
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

2002年、神奈川県箱根町に誕生したポーラ美術館。開館以来、「箱根の自然と美術の共生」というコンセプトを掲げています。

そんな同館で、アメリカの現代美術を代表するアーティストであるロニ・ホーン(1955₋)を紹介する展覧会「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」が開催中です。

本記事では、箱根の豊かな自然の中で出会う、「自然」をモティーフに作品を制作するロニ・ホーン作品の魅力についてご紹介します。

※展覧会情報はこちら

アメリカを代表する現代美術家、ロニ・ホーン

ロニ・ホーンは、2009-2010年にテート・モダン(ロンドン)とホイットニー美術館(ニューヨーク)で大規模な展覧会を開催して注目を集め、その後も現代美術の最前線で活躍し続けるアーティストです。

写真や彫刻、ドローイング、本などさまざまなメディアでコンセプチュアルな作品を制作。

また初期の作品から一貫して自然をモティーフに作品を制作しています。特にアイスランドの火山と氷河が生み出した荒々しい風土に強いインスピレーションを受けており、かの地を巡る旅の中で経験した「孤独」は、彼女の人生と作品に大きな影響を与え続けているといいます。

ロニ・ホーン初の国内の美術館における大規模個展となる本展では、近年の代表作であるガラスの彫刻作品をはじめ、1980年代から今日に至るまでの約40年間におよぶ数多くの実践を紹介。

彼女の豊かな制作を辿る展覧会です。

「ガラス彫刻」シリーズ

ガラスは、物理学的に「固体」でも「液体」でもないあいまいな素材です。この素材はホーン作品の両義性、多義性を象徴していると考えられています。


《無題(「実際には、巧みな恩恵がある。」)》2018-2020年
鋳放しの鋳造ガラス
Courtesy of the artist and Hauser & Wirth
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

水をたたえた器のように見える本作は、実は850kg以上ものガラスの塊でできています。

気の遠くなるような時間をかけて、ガラスがゆっくりと鋳造(ちゅうぞう)される過程は、マグマが固まってできたアイスランドの大地や地層を思わせます。

こちらの作品は、ポーラ美術館の窓のある開放的な展示室で楽しむことができます。

大きな窓から自然を取り込むよう空間に設置された8つのガラス彫刻は、巨大なレンズとして光を拡散しながら、静と動、穏やかさと荒々しさ、透明感と重量感といった、相反する性質を内包しています。

言語や文学をテーマとした作品

言語や文学はホーンを形づくる重要な要素であり、彼女の作品には多くの著名な作家のテキストが引用されています。


《エミリのブーケ》(部分)2006-2007年
アルミニウム、成型した白いプラスティック、6本組
Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn

《ゴールド・フィールド》 1980/1994年
焼鈍した純度99.99%の金箔 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

推理小説作家のエドガー・アラン・ポーや、『変身』などで知られるフランツ・カフカなど、引用元は実に豊富です。その中でもアメリカを代表する詩人、エミリ・ディキンスンはホーンにとって特別な位置を占めています。

《エミリのブーケ》は、ディキンスンが書いた手紙の言葉の中から選ばれたシリーズです。


《エミリのブーケ》(部分)2006-2007年
6本組、固形アルミニウム、鋳造した白いプラスティック
Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn

アルミニウムの棒に言葉を綴った本作。しかし、引用された言葉は側面から見ると言語として意味をなしておらず、文字は純粋な「形」として解体されています。

このような「形」の自己反復は、活動の初期にドナルド・ジャッドらを通じてミニマリズムの影響を受けたホーンの背景をうかがわせるものです。

高さ約3mにおよぶ7点の巨大ドローイング作品

ホーンにとってドローイングは、もっとも身近な表現手段の一つです。

「日々呼吸するように」実践されるというドローイングは、1982年から今日まで一定して継続される唯一の形式です。


《または 7》 2013/2015年
粉末顔料、黒鉛、木炭、色鉛筆、ワニス/紙
グレンストーン美術館(ポトマック、アメリカ)
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

本作は、高さ約3mにおよぶ7点の巨大なドローイング作品です。

スケールに圧倒されながら細部までじっくり観てみると、手書きの記号や印、紙の切れ目によって、それが一度ばらばらに切断されています。

ホーンはそれを再び、手作業でていねいに組み合わせてひとつの作品にしています。

箱根の豊かな自然の中にたたずむガラス彫刻作品


鳥葬(箱根、日本)2017-2018年
鋳放しの鋳造ガラス ポーラ美術館
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

本展では、ポーラ美術館屋外の「森の遊歩道」にも大きなガラス彫刻作品を展示。

仙石原の自然を楽しみながら、森の中にひっそりとたたずむホーンの作品を探してみてください。

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価値観や「正しさ」がめまぐるしく入れ替わるこの時代において、周囲に惑わされず、 川のように静かに絶えず本質を見つめながら制作を続けるロニ・ホーン。

紅葉の美しいポーラ美術館で、彼女の作品をじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。

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