キューガーデン 英国王室が愛した花々/東京都庭園美術館

美しいボタニカルアートが英国から来日。旧朝香宮邸との調和にも注目

2021年9月30日

キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート/東京都庭園美術館

美しさと科学的視点を持つ、色とりどりのボタニカルアートを紹介する展覧会が、東京都庭園美術館にて開催中です。

※展覧会情報はこちら

キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート/東京都庭園美術館/展覧会レポート/チケットプレゼント

展示風景

英国王立植物園「キューガーデン」はユネスコ世界遺産に登録され、22万点を超えるボタニカルアートを所蔵する世界最大級の植物園です。

本展では、18~19世紀に制作されたキューガーデン所蔵の貴重なボタニカルアートコレクションのほか、シャーロット王妃が愛し、王室御用達となったウェッジウッド社など陶磁器を展示します。

英国王立植物園「キューガーデン」とは

キューガーデン(正式名称:キュー王立植物園)は、ロンドンの南西部テムズ河畔にある、世界を代表する植物園です。132ha(ヘクタール)という圧倒的な広さを持つ園内には、3万種以上の植物と、約1万4000本の樹木が植えられています。

1759年にジョージ3世の母であるオーガスタ皇太子妃が、ロンドン南西部に造った小さな庭園がキューガーデンのはじまりでした。ジョージ3世シャーロット王妃の時代にその規模を飛躍的に広げ、当時ヨーロッパで流行していた啓蒙思想などを背景に、研究機関としての整備も進んでいました。

ヨハン・ゾファニー シャーロット王妃の肖像 1772年 メゾチント、紙 個人蔵 Photo Brain Trust Inc.

キューガーデンは美しい庭園を来園者に楽しんでもらうという観光地としても親しまれていますが、現在でも植物と菌類の科学的分野で世界をリードしている研究機関です。

また、2003年にその植物コレクションの多様さと、造園技術の歴史と発展における多大な貢献が認められ、ユネスコ世界遺産の指定を受けました。

*啓蒙思想・・・合理主義ともいう。中世以来のキリスト教会などに代表される伝統的権威や古い思想を批判し、合理的・批判的精神に基づいて人間生活の進歩・改善を図ろうとした。ヨーロッパで17世紀末に起こり、18世紀に全盛期を迎えました

ボタニカルアートを一挙に約100点展示

本展では、世界最大級の植物園キューガーデンから、ボタニカルアートが約100点集結。東京都庭園美術館で、世界中の美しい花に囲まれることができます!

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展示風景

展示はボタニカルアートが最盛期を迎える少し前、17世紀に制作された作品からはじまります。

ボタニカルアート(植物画)は、今でこそその美しさが評価されていますが、もともとは薬物誌や植物誌など、科学系の出版物に関係するものとして発達しました。

17~18世紀に、ヨーロッパで強大な権力を持つ君主が植物学を含む博物学を重視するようになると、多くのボタニカルアートが生まれるようになります。

キューガーデンでは同時期、1773年に植物学者ジョセフ・バンクスが庭園の監督者になると、世界各地の珍しい植物を収集、それらを記録するために植物画家たちを起用するようになりました。

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展示風景

鋭い観察眼により細かく描き込まれたボタニカルアートはとても何百年も前に描かれたものとは思えません。

ボタニカルアートという分野は、英国王室とともに歩んできたとも言えるでしょう。

 

また、18世紀のイギリスの女性にとって、植物学や水彩画を学ぶことは教養のひとつとされていました。そのような流れのなかで優れた女性画家が登場すると、当時限られていた女性の職業選択に新たな道が生まれたのです。

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展示風景

本展では、ボタニカルアートの分野で活躍した女性画家たちの作品も紹介。

ロイヤル・アカデミーに植物画を出品し、絵画教師として王室に出入りを許されたマーガレット・ミーンや、シャーロット王妃の娘で植物学に深い関心を持ったシャーロット・オーガスタ・マチルダなど、シャーロット王妃に貢献した偉大な女性画家たちの華麗な作品をぜひ間近でご覧ください。

王室ゆかりの陶磁器

17~18世紀は、「啓蒙時代」とも呼ばれており、哲学や医学などの科学全般、経済学や商業が発展して産業革命がおこります。そのなかでイギリスの科学と産業の発展に貢献したのが王室でした。

イギリスの産業では陶器などが有名ですが、ウェッジウッド、ウースターやダービーなど王室ゆかりの陶磁器も展示されます。

展示風景

現在でも世界中から広く知られる英国の陶器ブランド・ウェッジウッドのなかでも、“クイーンズウェア”と呼ばれるものがあります。お手ごろな値段でありながら品質が良く、粗悪品に代わって一般家庭に広く普及した乳白色の硬質陶器で、別名クリームウェアとも呼ばれています。

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展示風景

このクリームウェアがシャーロット王妃の目に留まり、「クイーンズウェア(女王の陶器)」の名称を与え、ウェッジウッドは王室御用達となりました。

シャーロット王妃は芸術と科学を保護しましたが、ウェッジウッドがクイーンズウェアの称号により国内外で注目されることろなり、結果的に自国の産業発展を支える力となりました。

新館ではカーティス・ボタニカル・マガジンを展示

1787年にロンドンで創刊された『カーティス・ボタニカル・マガジン』は、幅広い読者層を持つ学術誌で、2世紀以上経った現在でもキューガーデンによって刊行されています。

旧朝香宮邸の展示室を鑑賞後は新館に移動し、『カーティス・ボタニカル・マガジン』の原画と手彩色銅版画を対で鑑賞することができます!

展示風景

創刊当時は、専属の画家が描いた水彩画をもとにして、輪郭の線描を銅版画で複製し、1点ずつ手彩色で色付けした図版が用いられる豪華な作りだったそうです。

展示風景

当時のドローイング・ルームも再現

18世紀のイギリスの邸宅には、ドローイング・ルームと呼ばれる部屋がありました。

来客用の部屋で壁際にティーテーブルや椅子などが置かれ、芸術品が飾られることもありました。

本展では、当時のドローイング・ルームを再現したセットが出現!

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夕食後に女性たちがおしゃべりや裁縫を楽しむ場でもあり、ボタニカルアートの制作場として使われることもあったというドローイング・ルーム。

人びとはこの部屋で、どのようなことを考え、楽しんでいたのでしょうか? 鑑賞しながら考えてみるのもおすすめです。

 

ボタニカルアートの展示を中心に、英国において自然科学や植物画がどのように発展し、どのような歴史的背景を歩んできたのか、その流れをたどる本展。

この機会をお見逃しなく!

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