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2024年11月21日
「柿右衛門」の五色/戸栗美術館
戸栗美術館では現在、柿右衛門様式をはじめとした磁器の歴史を見る展覧会が開催中です。
本展では、柿右衛門様式の作品など約80点を展示。
また、柿右衛門様式の伊万里焼から影響を受けたマイセンの作品も合わせて紹介しています。
濁手(にごしで)と呼ばれる純白の下地に、赤・青・緑・黄・金の5色の彩色を基本として優美な絵付けを施した「柿右衛門様式」は、1670年代の佐賀県有田で完成されました。
丁寧に精製を行い、鉄分などの不純物を取り除き、釉薬(ゆうやく)も極力薄く掛けて青みを抑えた純白の素地である濁手。
この「にごし」は佐賀などの方言で米のとぎ汁を示すそうです。
18世紀に入ると、柿右衛門様式は中国との市場競争で様式変化してしまい、濁手の技術は一度途絶えてしまいます。
しかし戦後、12代・13代酒井田柿右衛門父子によって、濁手は復活。
土の合わせかたに苦労し、12代はせめて絵具の伝統だけでも残そうとするのですが、13代は「この際にやっとかないと」と5代柿右衛門が6代のために残した土合帳を参考に実験を重ねました。
こうして濁手は復活し、1971年1月、柿右衛門製陶技術保存会を発足。若手の育成も始め、同年4月には国の重要無形文化財に指定され、現在まで受け継がれています。
そんな伝統ある柿右衛門様式の作品にはいくつかの彩色パターンがあります。
基本は赤、青、緑、黄、少量の金の5色でしたが、さまざまな表現が生まれ、基本の5色以外のパターンで制作された作品も生まれていきます。
現在は上記基本5色から金色を除き代わりに紫色を用いて、赤、青、緑、黄、紫の5色を使用。やわらかく美しい印象を与えています。
色絵 花鳥文 輪花皿 伊万里(柿右衛門様式)
江戸時代(17世紀後半) 口径22.0㎝ 戸栗美術館所蔵
ほかにも赤、青、緑、黄、金、茶の6色のパターンもありました。
茶色は樹木の幹に使用することが多く、板作り成形の六角壺などによく見られます。
板作り成形とは、板のように長方形の粘土を構成して壺などの形にして焼きあげる技法で、あまり作例はない貴重な作品です。
色絵 花鳥人物文 蓋付六角壺 伊万里(柿右衛門様式)
江戸時代(17世紀後半) 通高31.4㎝ 戸栗美術館所蔵
17世紀後半の西欧では、東洋に対する磁器はまだ誕生していませんでした。
そのため当時の西欧では、柿右衛門様式を含む東洋の磁器は高級品とされ、王侯貴族のみが使用していました。
そんな中、西洋でも東洋の磁器の研究が行われます。
ザクセン選帝侯国(現・ドイツ)の選帝侯フリードリッヒ・アウグスト1世のもと錬金術師のベトガー、科学者のチルンハウスが開発に挑み、1708年に白磁器開発に成功。1710年には、ドイツのマイセンに王立磁器製作所の設立宣言を行いました。
そんなマイセンでは、柿右衛門様式の写しが作成されています。
色絵 花鳥文 皿 ドイツ・マイセン
18世紀前半 口径42.7㎝ 戸栗美術館所蔵
ヨーロッパでは花鳥文、竹虎文などが人気でマイセンでもよく写されていました。
こちらの作品もうまく写されているものの、柿右衛門様式と比べると色彩の表現に硬さを感じます。
現在、柿右衛門窯は15代まで続いており、濁手の技術を継承しています。
近年では生活に合わせて、器も大きくなり絵柄も大きくなってきました。
現在、同館では柿右衛門窯の現在の作品のほか、日本磁器の最高峰と呼ばれる鍋島焼の作品なども観ることができます。
柿右衛門様式の始まりから現在までの作品を比べるとより色彩はよりなめらかな表現になっていきていると感じます。
また、ろくろに長けている点から作品の大きさも大きくなり、表現の幅も広がったことを感じることができます。
日本における磁器の歴史を知れる本展。文化継承の重要さを感じられることと思います。