塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
唐ものがたり 画あり遠方より来たる/中之島香雪美術館
堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲に位置する大阪・中之島。古くから経済・文化・行政の中心であり、今も多くのオフィスビルや文化施設、歴史的建造物が建つ大阪市を代表する地区です。
そんな大阪市の中心地区にある中之島香雪美術館では、2023年7月30日まで企画展「唐ものがたり 画あり遠方より来たる」が開催中です。
本展では、香雪美術館(神戸・御影)が所蔵する中国絵画を一堂に紹介。そんな企画展「唐ものがたり」を担当した郷司泰仁学芸員に、本展の見どころを教えていただきました!ここでは、各章の見どころを紹介していきます。
朝日新聞社の創業者である村山龍平(むらやまりょうへい、1850-1933)の収集した美術品を公開する中之島香雪美術館は、神戸・御影にある公益財団法人 香雪美術館の2館目の展示施設として、2018年3月21日、中之島フェスティバルタワー・ウエストの4階に開館しました。
刀剣や甲冑などの武具から、仏教美術、書跡、中近世絵画、茶道具までの幅広いコレクションを持つ香雪美術館と中之島香雪美術館。重要文化財19点、重要美術品は33点を数えます。
同館では、村山氏が集めた日本と東洋の古い時代の美術品を核とした企画展と、多彩なテーマによる特別展を開催し、日本・東洋美術のすばらしさを多くの人に発信しています。
7月30日まで開催中の企画展「唐ものがたり」では、村山コレクションの中国絵画を初めてまとまった形で紹介します。
本展では、1章「人物画」、2章「花鳥画」、3章「山水画」と分けて、初公開を含む合計29件を展示。
さらに、付属する鑑定書や墨書のある箱などともに紹介し、作品の中に隠されたエピソードと一緒に「鑑賞が難しい」と思われがちな中国絵画の魅力をひも解きます。
本作は、元時代の画僧・因陀羅(いんだら)が描いた「維摩居士図(ゆいまこじず)」(重要文化財)です。
因陀羅筆 普門賛 維摩居士図 元時代 14世紀
禅宗に関する人物画を多く描いた因陀羅作品の中で唯一、仏教の在家(*)信者である唯摩居士という人物を描いた作品です。
陰影がパキッと効いているのが特徴とされる元時代の作品。本作も、唯摩居士の顔をじっくり観てみると、顔に印影が施されているのが分かります。
*在家(ざいげ):仏教において、出家せずに、家庭にあって世俗・在俗の生活を営みながら仏道に帰依する者のこと。
因陀羅筆 普門賛 維摩居士図 元時代 14世紀
郷司学芸員に聞いたところ、元時代の人物画は、表情が不気味なものも多いと言います。
イメージは、大正から昭和にかけての洋画家・岸田劉生が描いた《麗子像》でしょうか。劉生の造語「デロリ系」に近い印象もあります。
伝梁楷 蜆子和尚像 元時代 14世紀
こちらの「蜆子和尚像(けんすおしょうぞう)」は、郷司学芸員イチオシの作品です。
蜆子和尚は、中国五代頃の禅僧で、1年じゅうボロボロの服を着て水辺に住み、しじみやエビなどを集めて生きていたという、和尚さんらしくない破天荒な人として知られています。
蜆子和尚の右手に注目。絹が焼けて見づらいのですが、手にエビを掴んでいます。
本展では、絵画に付属する鑑定書や墨書のある箱などの付属品も合わせて展示しています。
本作に付属されいる狩野派の狩野探淵が模写した「蜆子和尚図」を観ると、しっかりとエビが描かれているのが分かります。
作品と一緒に付属品を紹介する展示は珍しいとのこと!付属品から作品の歴史や物語も感じ取ることができるユニークな紹介方法にも注目です。
伝徐熙 梅鷺図 明時代 16世紀
香雪美術館が所蔵する中国の花鳥画には、画面が大きく複数幅セットになった作品が見られます。
このような作品は、寺院や大名家などの大きな床を飾ったとされています。
花鳥画に優れた中国の画家・徐熙(じょき)が描いたとされる「梅鷺図」も、島根・松江藩十代藩主の松平不昧(ふまい)が所有していたとされる作品です。
本作を彩る、かわいらしい花もようの表装は、不昧所有時から変わっていないのだそう。大切に保管されていたことがうかがえる作品の一つです。
伝馬遠 踏歌図 明時代 14~15世紀
本作を描いた馬遠(ばえん)は、南宋時代に宮廷画風の絵画を描き、日本にも大きな影響を与えた画家です。
収穫を迎える秋に踊ったり、歌ったりして、豊作を祝う習慣「踏歌(とうか)」の場面を描いたとされる本作。画面下の道の上では、老人と子どもが踊っているようすが描かれています。
山水画ならではの、ダイナミックな構図もじっくりとご覧ください。
村山龍平が収集した中国絵画を、初めて一堂に公開する本展。村山氏の審美眼が分かる展覧会でした。
中之島香雪美術館の常設展示では、国指定重要文化財「旧村山家住宅」に建つ茶室「玄庵(げんなん)」の原寸大再現模型も展示されています。
「茶室」のみならず「露地」空間全体を再現して常設展示するという手法は、同館が初とのこと!
壁面には、プロジェクターで最新デジタルCG映像を投影し、四季により変化する茶室の空間が演出されます。
企画展示鑑賞後は、「玄庵」を眺めながら、ゆったりと展示の余韻に浸るのもいいかもしれませんね。
中之島香雪美術館では、2023年9月16日から企画展「茶の湯の茶碗」が開催されます。次回展もお楽しみに!