塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
谷内こうた展 風のゆくえ/ちひろ美術館・東京
『なつのあさ』(至光社)より 1970年(ちひろ美術館寄託)
ちひろ美術館・東京にて、絵本『なつのあさ』などで知られる谷内こうた(1947-2019)を紹介する展覧会が開催中です。
本展では、2019年に71歳で亡くなった谷内の、絵本原画や初公開作品も含めた雑誌の表紙絵、タブローなどを写真や資料とともに展示し、その画業の全体像を紹介します。
谷内こうたは、22歳の時に叔父の画家・谷内六郎(1921-1981)のすすめで、初めて、絵本のための絵の「見本」を描きます。
これらの絵が至光社の武市八十雄に認められ、同社より絵本『ぼくのでんしゃ』『おじいさんのばいおりん』として出版されました。
(左)『ぼくのでんしゃ』(至光社)より 1969年(ちひろ美術館寄託)
(右)『おじいさんのばいおりん』(至光社)より 1969年(ちひろ美術館寄託)
1971年、当時23歳だった谷内は3作目となる絵本『なつのあさ』で、日本人として初めてボローニャ国際児童図書展でグラフィック賞を受賞し、鮮烈なデビューを果たします。
(左)《春の静物》1971-73年(個人蔵)
(右)《テーブルのすぐりの実》1971-73年(個人蔵)
同年に渡欧し、油彩画制作を日々行った谷内。
ドイツやフランスの四季折々の自然や街並みの風景を愛した彼は、36歳の時に家族とともにフランス・ノルマンディーに移住し、アトリエを構えて数多くの油彩画を描きました。
本展では、絵本や雑誌のためのイラストレーション、タブローなど幅広いジャンルで活躍した谷内こうたの初期から晩年の作品までを一堂に展示。
谷内こうた没後初となる回顧展です。
叔父・谷内六郎のすすめで初めて絵本の絵を描きデビューした谷内。
テキストを限りなくそぎ落とし、絵で展開していく谷内独特の絵本は、ヨーロッパで驚きをもって迎えられました。
本展では、日本人初のボローニャ国際児童図書展のグラフィック賞を受賞した作品『なつのあさ』や、1998年にスイス、エスパース・アンファン国際図書賞特別賞を受賞した『にちようび』などを展示しています。
本展で紹介されている絵本は、展示室内のほか、1階の絵本カフェや2階の図書室で実際に手に取って読むこともできますよ。
絵本カフェは、美術館を利用した方のみ入場可能
谷内は71年の人生の半分をヨーロッパ、主にフランスで過ごしました。
今では海外移住する日本人は珍しくはないのですが、谷内がヨーロッパへ渡った1971年の時点ではとても珍しかったといいます。
当時の日本の週刊誌にグラビア記事が掲載されました。
本展では、最初にヨーロッパへ渡航した20代前半、ドイツのエバーバッハで描かれた油彩画を初公開します。
滞在先の周囲の自然や、なにげない静物、旅先の風景などをモチーフとした谷内の貴重な初期の油彩画。
これらの油彩画からは、日々目の前の対象を捉えようとする谷内の姿勢がうかがえます。
《水面》1998年(個人蔵)
30代後半、谷内はフランスに定住します。
そして、晩年まで毎日のようにアトリエの外へ出て、季節ごとの景色を描き続けました。
谷内が捉えた欧州の四季折々の作品にも注目です。
(左)《川辺の散歩》2003年(個人蔵)/(右)《ノルマンディーの海》2003年(個人蔵)
(左)《立ひざの少年》 1970年
(右)《顔を洗う男の子》 1954年
いわさきちひろは、生涯一貫したテーマとして「子ども」を描きました。
やわらかな髪やふっくらとした肌、短い手足に子ども特有の愛くるしい仕草など、ちひろの描く子どもは、いきいきとした魅力にあふれています。
谷内こうた展と同時開催の「ちひろ 子ども百景」では、ちひろの息子・猛をモデルにしたスケッチや、季節のなかで遊ぶ子どもたちの姿を描いた作品を展示。
また、医師・松田道雄の育児書『私は赤ちゃん』『育児の百科』などの仕事にも注目します。
こちらもお見逃しなく。
『育児の百科』(岩波書店)より 1967年
『育児の百科』(岩波書店) 1967年
2019年に71歳で亡くなった谷内こうたの幅広い画業を紹介する本展。
ヨーロッパの豊かな自然を愛した谷内のまなざしを、ちひろ美術館・東京で体感してみてください。
ミュージアムショップは、美術館を利用した方のみ入場可能
また、ミュージアムショップでは谷内こうた展のオリジナルグッズも販売中。
こちらもお見逃しなく。