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2024年11月1日
TARO賞の作家Ⅲ 境界を越えて/川崎市岡本太郎美術館
こんにちは。日々子連れで楽しめる美術館や展覧会を探求しているSfumart読者レビュアーのかとうあつしです。
今回は川崎市岡本太郎美術館に1歳、4歳、8歳の子どもたちと一緒に行ってきましたので、そのようすをレビューします!
「千手」(1975)アルミニウム
「マラソン」(1964) 油彩・キャンバス
秋といえば・・・そう芸術の秋、そしてスポーツの秋ですね!
それが同時に楽しめちゃう常設展が現在開催されています。タイトルはずばり「岡本太郎とスポーツ」。
岡本太郎のスポーツにまつわる作品が一挙に公開されています。
ちなみに同館の常設展は年に数回、タイトルとともに展示替えが行われますので、毎回新しい作品に出会うことができるのも魅力の一つです。
岡本太郎が使用していたスキーシューズやゴルフバック
ところで「岡本太郎とスポーツ・・・?」と思われた方もいるかもしれません。
でも実は野球やゴルフなどに興じている写真が数多く残されており、そこからも岡本太郎とスポーツの関係が浅からぬことが窺い知れます。
今回はそれら写真とともに実際に岡本太郎か使用していたスポーツ用具や、自らデザインしたスキー板なども展示されており、より身近に岡本太郎とスポーツの関係性を感じることができました。
特に46歳で始めたと言うスキーについては「ぼくがスキーを好きになったのは、命がけのスポーツだからだ」というほど、猛スピードで斜面に身を投げ出す緊張感の虜になり、毎シーズン、制作や執筆などの忙しい日々を縫って雪山に通ったそうです。
岡本太郎のスキーに関する言葉は、その著『自分の運命に楯を突け』などにも収録されていますので一読してから展覧会に臨むと感動もひとしおだと思います!
さらに今回は、そんな岡本太郎がスキーをしている貴重映像も見ることができます!
キャンバスに向かうように目を見開いて真剣に滑走する姿もあれば、自らの作品に積もった雪を落としているエモい映像もあり人間岡本太郎を存分に味わうことができました。
子どもたちは動く岡本太郎に興味津々。子どものように命を賭けて遊んでいる岡本太郎の姿は、やはり子どもたちの心と共鳴するのかもしれません。
オリンピックミュンヘン大会公式参加メダル等
不特定多数の人びとが作品を見ることができることから、岡本太郎は公共の場のためのモニュメント、いわゆるパブリックアートを数多く手がけています。
今回はその中でもスポーツに関連する作品が数多く展示されていました。
個人的に気になったのは、今はなき近鉄バッファローズの帽子です。
小学校だった当時はこれが岡本太郎のデザインだとは全く知りませんでしたが、野球チームとしては異様なロゴだったのでよく覚えています。
思えば昔は野球帽被ってる子、結構いましたね!
「ひもの椅子」(1967)木・紐
展覧会の中盤には、岡本太郎の手がけた椅子が集められた椅子コーナーがあります。
5種類の椅子があり鑑賞するだけでなく全て実際に座ることができます。
子どもたちも長時間歩き続けると疲れてしまうので体力回復もできるうれしいスポットです。
坐ることを拒否されたら抱きつけばいい。椅子も驚いてる?
岡本太郎の椅子と言えば「坐ることを拒否する椅子」が有名ですが、曰くこれは「活動的に行動して一時腰をおろす」ための椅子のようです。
長々休んでないで動き出せ!という叱咤激励ですね。
でも「座れない」じゃなく「座るには座れる」ってところが岡本太郎らしい優しさを感じます。
(左)「森の掟」(1950)油彩・キャンパス
(右)「空間」(1934/1954再制作)油彩・キャンパス
もちろんご紹介した作品のほか、常設展では毎回展示されている作品もあり、何度か訪れているわが家の子どもたちは、なじみの作品を見つけると「これ前もあったねぇ!」と友達に再会したような目で眺めていました。
やはり知っている作品に会えるのが常設展の一番の魅力です!
さて、常設展を抜けると企画展の会場に入ります。
タイトルは「TARO賞の作家Ⅲ 境界を越えて」。これまで26回を数える岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)の受賞作家のなかから「境界」をテーマに内海聖史さん、大西康明さん、若木くるみさんの3名の作品が展示されています。
現在の社会状況において現代美術作家の皆さんが提示するさまざまな「境界」に子どもたちと迫ってみました!
内海聖史「そこにあるわけではない」(2023)油彩・水彩・綿布・木材・紙・金属
まず始めに目に飛び込んでくるのは不思議な空間。
「光庭」と名づけられた黄色い部屋らしき場所の内側に向けて手のひらサイズの小さな絵画が無数に設置されています。しかしそこには鑑賞者は入ることができず、手前のこれまたガラスで区切られた空間からしかその作品を見ることができません。
つまり手前の絵はその裏側を見ることになるのですが、小さな絵画たちに「わたしたちがいつも鑑賞者のためにあると思わないで!」と言われているようでした。
何事も当たり前と思ってはいけません!
内海聖史「遠くの絵画/no.2019-29」(2019)油彩・水彩・キャンパス
とにかく子どもたちは言葉より先に身体で反応します。
大きな展示空間に大きな作品。とりあえず思いっきり手を広げたくなりますね。
たしかにタイトルにあるように絵画が遙か遠くにあったらキラキラ光るお星さまのようにこう見えるのでしょう。
ロマンがあります。
大西康明「間に在る」(2023)ポリエチレンシート・ファン・タイマー・その他
さて、半透明のビニール袋の中に作品らしきものが見えます。
どうやら岡本太郎の作品のようですがはっきりとはしません。
はっきりしないから余計に気になるというYOASOBI風(←?)に言えば、「見えそうで見えない秘密は蜜の味」的な作品です!このような不思議なインスタレーションは子どもたちとの相性抜群です!
実はこの袋はタイマーで膨らんだりしぼんだりしていて、しぼんでくると中にある作品がよく見えるようになってきます。
といっても完全にクリアには見えないのですが。作品を人に置き換えると、それを覆う半透明の袋はイメージや噂でしょうか。
人を見ることについても考えさせられます。
学校にある机と椅子も「版」に!
さて最後の若木くるみさんのエリアに入ると、それまで非日常な空気から一変。どこか親しみやすさと安心感が漂ってきます。
展示されているのが子どものころ慣れ親しんだ版画だからかもしれません。
ただ若木さんの版は、日用品や自然など身の回りにある様々な素材の他、なんと後頭部!まで使われているのが大きな特徴です。
若木くるみ「影版」(2023)眼鏡・フライ返し・トンカチ・虫眼鏡・版木・各自の持ち物・他
なかでも印象的だったのがこの「影版」という作品。
道路を版にして写し取った「版画道」という作品が部屋を取り囲み、そこに鑑賞者が置いてある歯ブラシやめがねの後ろから光りを当てて、壁に影をつくるというインタラクティブな作品です。
子どもたちは動きながら色々な影を写して楽しそうでした。版を写す・・・確かにこれも版画といえるかもしれません。
自らの身体を使う体験型のアートは子どもたちの記憶にも残りやすいですね!
「境界」をテーマにした企画展。
三者三様の問いかけに今すぐ答えがでないかもしれませんが、きっと子どもたちの心の中でもゆっくりと育ってくれることでしょう。
以上、今回は川崎市岡本太郎美術館を訪問しました。
常設展、企画展ともにとても見応えがあり、大人も子どもも楽しめる内容になっています。
そして、もし子どもが飽きてしまっても美術館を一歩出れば自然豊かで走り回れる芝生のエリアもあるので、秋の散策をかねてご家族で訪れてみてはいかがでしょうか。