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2024年11月1日
特別展「中尊寺金色堂」/東京国立博物館
(左から)国宝《勢至菩薩立像》、国宝《阿弥陀如来坐像》、国宝 《観音菩薩立像》
※いずれも平安時代・12世紀 中尊寺金色院
建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が、東京国立博物館 本館特別5室にて、4月14日(日)まで開催中です。
戦いが続いていた平安時代末期、奥州の覇者となった奥州藤原氏初代の藤原清衡(1056~1128)は、戦いのない平和な世を願い、この世の極楽浄土を表現するべく平泉に中尊寺金色堂を建立しました。
創建当初の姿を今に伝える金色堂は、東北地方現存最古の建築物です。
建物の内外を金色に飾り、美しい装飾が施された絢爛豪華な姿は、当時の技術の粋を集めたものとして国宝に指定されています。また、中尊寺を含む平泉の文化遺産は、2011年に世界遺産に登録され、国際的にも高く評価されています。
中尊寺の歴史を語るうえで重要な史料
重要文化財《中尊寺建立供養願文》藤原輔方筆 鎌倉時代・嘉暦4年(1329) 中尊寺大長寿院
※前期(1月23日(火)~3月3日(日))展示
中尊寺金色堂が今年建立900年を迎えるのにあわせて開催される本展は、出品作品50点(会期中、一部作品の展示替えあり)のうち、41点が国宝というとても豪華な展覧会です。
最大の見どころは、会場の中央に配置された国宝の仏像です。
金色堂内には3箇所に須弥壇(仏像などを安置する場所のこと)が設けられていますが、本展は、このうちもっとも重要とされる中央壇に安置される国宝の仏像11体が、そろって公開される展覧会となります。
会場風景より、(手前)国宝《増長天立像》 平安時代・12世紀 中尊寺金色院
金色堂は、現地では文化財保護のためにガラスの外からしか拝観できません。
間近でさまざまな角度からじっくり鑑賞することができる本展はとても貴重な機会です。
展示室の中央に座するのは、国宝《阿弥陀如来坐像》。金色堂では、この前方左右に《観音菩薩立像》と《勢至菩薩立像》が並んでいます。
全身金色の三尊像は、清衡が金色堂を創建した当初から安置されていた可能性が高いとされています。
ふっくらと穏やかで優美な姿が特徴の像は、当時の都で造られた仏像と遜色のない出来栄えで、当時の一流仏師の手によるものといわれています。
国宝《阿弥陀如来坐像》平安時代・12世紀 中尊寺金色院
本尊の阿弥陀如来の左右に、3体ずつ安置されている国宝《地蔵菩薩立像》は、現地では縦に並んでいますが、本展では横並びに展示しています。
頭部をやや小さくつくるプロポーションや、穏やかな表情が確認しやすくなっています。
地獄に堕ちた人びとを助けてくれるという地蔵菩薩は、戦乱に明け暮れた時代に生きた奥州藤原氏の思いが託されているかもしれません。
国宝《地蔵菩薩立像》平安時代・12世紀 中尊寺金色院
大きく手を振り上げ躍動感にあふれる持国天・増長天の二天像は、引き締まった顔つきと大きくひるがえる袖の表現が見どころです。
平安彫刻には珍しい激しい動きの表現は、鎌倉時代に活躍した運慶(うんけい)など慶派仏師の作風に近く、時代を先取りした先駆的な表現といえます。
国宝《持国天立像》平安時代・12世紀 中尊寺金色院
会場では、金色堂の内部を支える「巻柱(まきばしら)」と呼ばれる美しい4本の柱もきちんと再現されているので、こちらも注目です。
会場風景より
「皆金色(かいこんじき)」と称される金色堂の内部は、貝をはめ込んだ螺鈿(らでん)や、まぶしいばかりの金箔などで美しく飾られていました。
会場では仏像だけでなく、かつて金色堂内を飾った工芸品や、さまざまな仏像の台座や光背(こうはい)の残欠、使われていた仏具、経典など、中尊寺の歴史を伝える貴重な品々が展示されています。
会場風景より、国宝《阿弥陀如来坐像》などの台座や光背の残欠の展示
国宝《阿弥陀如来坐像》に用いられた天蓋(仏像の頭上にかざされる装飾物)。
国宝《天蓋》平安時代・12世紀 中尊寺金色院
花輪をかたどった国宝《金銅迦陵頻伽文華鬘》には、人の顔をした迦陵頻伽(かりょうびんが)と呼ばれる、極楽に住んで美しい声で鳴く空想上の鳥が繊細優美にあらわされています。
ほかにも当時の平泉の文化水準の高さがうかがえる貴重な品が展示されています。
会場風景より、金色堂内部を飾った装飾品などの展示
金色堂は、3つの須弥壇内に奥州藤原氏四代が今も眠る聖地でもあります。
国宝《阿弥陀如来坐像》の後ろに見えるのは、清衡の遺体が納められていた木の棺です。
(手前)国宝《阿弥陀如来坐像》、(後)重要文化財《金箔押木棺》
※いずれも平安時代・12世紀 中尊寺金色院
会場では、金塊、刀装具や念珠類の残欠、大刀など、平安貴族の生活文化を知る貴重なてがかりとなる、清衡の木棺の副葬品の一部も出品されています。
棺から発見された金塊の重さは32グラムもあり、平泉の黄金文化を築いた奥州藤原氏ならではの副葬品といえます。
重要文化財《金塊(金箔押木棺副葬品のうち)》 平安時代・12世紀 中尊寺金色院
中尊寺には、奥州藤原氏の篤い信仰を伝える膨大な仏教の書物(経典)が残されています。
なかでも金色堂を建立した清衡が、8年もの歳月をかけて完成させた《紺紙金銀字一切経》は、紺色に染めた紙にお経が1行ごとに金字と銀字で交互に書写されたすばらしいもので、奥州藤原氏の莫大な富を象徴する作品といえるでしょう。
螺鈿で経題を記した経箱も今回展示されています。
会場風景より、《紺紙金銀字一切経》のうち巻下、巻第七の展示 ※会期中巻替えあり
画面中央に金色に輝く九重の宝塔がそびえるこの曼荼羅(まんだら)は、一見絵画のようですが、紺色に染めた紙に、金泥を用いて宝塔の形にお経を書き連ねたとても珍しい写経です。
宝塔の周囲には、お経の内容を絵画化した風景や人物が緻密に表現されています。
かわいい風神雷神なども描かれていますので、単眼鏡をお持ちの方はご持参をおすすめします。
(左)国宝《金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第七幀》、(右)国宝《金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第三幀》
※いずれも平安時代・12世紀 中尊寺大長寿院 前期(1月23日(火)~3月3日(日))展示
会場内に設置された幅約7mの大型ディスプレイでは、超高精細の8Kの技術を使ったCGで原寸大の金色堂と堂内空間が再現されています。
現地では見ることができない視点から、堂内装飾の工芸技法や黄金に輝く空間を、迫力ある美しい映像で細部までじっくり鑑賞することができます。
8KCGで再現した中尊寺金色堂 ©️NHK/東京国立博物館/文化財活用センター/中尊寺
金色堂は創建以来、修理が重ねられてきましたが、昭和の大修理の際に得られたデータに基づいて製作された、縮尺5分の1の模型も展示されています。
堂内の様子も忠実に再現されているので、実物ではなかなか見られない細部のようすまで知ることができます。
この模型は写真撮影が可能です。
《金色堂模型》昭和時代・20世紀 中尊寺
音声ガイドはアニメ「平家物語」などで源義経役を務めた声優の梶裕貴さんが担当。中尊寺金色堂の歴史や見どころ、奥州藤原氏にまつわるエピソードをわかりやすく案内してくれます。
ほかにも法要での声明など、音声ガイドでしか聞けないコンテンツが盛りだくさんです。
展覧会特設ショップでは、国宝《持国天立像》に踏みつけられている邪鬼のぬいぐるみが販売中です。
ほかにも、中尊寺金色堂の国宝仏像11体がそろった豪華なアクリルスタンド、 「二天像」が大きくプリントされた、綿100%で迫力満点のTシャツなど、会場限定の展覧会オリジナルグッズが多数用意されています。
金色堂建立900年という記念すべき節目だからこそ実現できた本展は、長い歳月を経て今に伝わる中尊寺の至宝を東京でまとめてみることができる、またとない機会となっています。
当時の人びとの仏教への篤い信仰にも思いを馳せながら、奥州藤原氏が夢見た極楽浄土の世界を会場で体感してみてください。
※会期中、一部作品の展示替えを行います。