パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 /京都市京セラ美術館

ピカソやブラックの傑作が集結!かつてないほどの大きな変革をもたらした「キュビスム」とは?【京都市京セラ美術館】

2024年4月5日

京都市京セラ美術館「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命」

京都市京セラ美術館にて、「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命」が開催中です。

本展ではパリ三大美術館であり、ヨーロッパ最大の近現代美術コレクションを誇る「パリ・ポンピドゥーセンター」の所蔵品を中心に約130点の作品を展示。そのうち約50点が日本初公開となります。

圧倒的な作品数はもちろんのこと、今回展示会場を訪れて驚いたのは展示ジャンルの豊富さ。キュビスムを生み出したパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックをはじめとする主要作家約40人による作品は、絵画の他に彫刻、映像、資料など多岐にわたります。

章とともに時代が進み、目の前にある展示作品の雰囲気の違いから、キュビスムの発展に寄与した芸術家たちの探求の軌跡をたどることができました。

本記事では、そんなキュビスムの大型展覧会の様子を一部お届けします!

芸術界に衝撃を与えた「キュビスム」とは?

キュビスムとは、20世紀初頭、パリでパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックによって創り出された芸術運動のひとつ。

19世紀までの西洋美術において、重要視されていたのは「実在する対象を目に映るとおりに正確にとらえる」、つまり「写実的に描く」こと。そのなかで、ピカソやブラックはあらゆる対象を四角形や三角形に分解し、再構築して絵画を描きつづけました。

画期的でありながらも、当時の“絵画のルール”を破っている彼らの作品は、最初はまったく評価されなかったのだとか。

しかし、新しい表現を求めるパリの若い芸術家たちに衝撃を与え、キュビスムは世界中に広がり派生しました。今では西洋美術史を語るうえで外せないものとなり、「芸術界の大革命」とまで呼ばれています。

絵画“だけじゃない”構成にワクワクが止まらない!

日本では約50年ぶりとなるキュビスムの大型展覧会。本展は全14章で構成されており、基本的には時代に沿って作品を鑑賞するかたちになっています。

展示作品は絵画以外にも、彫刻、素描、版画、映像、資料とさまざま。カラフルな絵画を見て後ろを振り返ると、ジャンルがまったく異なる作品が登場して、つねに視覚的にも楽しめる空間が続いていました。

たとえばこちらの『ヨンベあるいはウォヨの呪物』。無数の釘が突き刺さったような彫刻はコンゴ民主共和国の作品です。

一見すると幾何学的な表現のキュビスムとは関係がないように思えますが、独創的な表現はアフリカの文化や宗教を象徴するもので、ヨーロッパに流れ込むと同時に斬新なデザインに注目が集まるように。実はあのピカソをはじめとする20世紀初頭の芸術家たちに強いインスピレーションを与えた作品なのだそうです。


制作者不詳《ヨンベあるいはウォヨの呪物(コンゴ民主共和国)》 年代不詳 MNAM-CCI,AM 1986-78

約130点ものジャンル豊富な展示作品を通じて、芸術家たちが感じたものやキュビスムが後世に与えた影響までもが理解できておもしろい!

そして圧倒的な作品数から、本展は京都市京セラ美術館内の複数の展示室をまたいで開催されています。回廊を通って別の展示室に移動する途中、美術館の建築美に思わずうっとり。この移動すらも鑑賞体験のひとつになっているようでした。

ちなみに、展示室へ移る手前にはフォトスポットもあったので、お時間ある方はぜひ記念撮影を。

ポンピドゥーセンターで人気の作品が日本初公開

展示室に入ると、まず出迎えてくれるのがポール・セザンヌの作品たち。

若いころはモネたちに影響を受けていたセザンヌですが、次第に風や光といった移り変わるものではなく、揺るぎない存在を求めるように。絵画からも、もののかたちを幾何学で捉え、色彩や形態を追求しつづけているようすが伝わってきます。

1895年にパリで最初の個展が開かれて以降、セザンヌは若い画家たちの指針となり、キュビスムに向かう多くの画家に影響を与えました。


ポール・セザンヌ《4人の水浴の女たち》 1877-1878 ポーラ美術館

続いて、マリー・ローラサンの作品のあとに現れるのが、ピカソの1歳年下で、ともにキュビスムに取り組んだブラックの作品たちです。絵をよくみると筆の向きがすべて同じだったり、色彩が実に鮮やかだったりと、自分なりの研究を重ねているようすが想像できます。

ちなみに、キュビスムの名称は、1908年のブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。


ジョルジュ・ブラック《レスタックの道》 1908 MNAM-CCI,AM 3060 P

そして、一番の見どころでもあるのが日本初公開となる『パリ市』。ポンピドゥーセンターを象徴する大作であり、展覧会のメインビジュアルにもなっている作品です。

写真では伝わりづらいのですが、こちらの作品、なんと幅4メートルにもおよぶ大きさなんです・・・!


ロベール・ドローネ《パリ市》 1910-1912 MNAM-CCI,AM 2975 P

中央に描かれているのは、ローマ神話に登場する「愛」「慎み」「美」を象徴する三美神。奥には近代的なパリの街並みが広がり、右にはエッフェル塔の姿も。色彩豊かで、さまざまな場面がつなぎあわされたようで、なんだかパッチワークを連想しました。

その後、章の終盤では第一次世界大戦を経て、キュビスムがどのように広がっていったのかまで作品とともに追うことができます。「キュビスムの裾野ってこんなに広かったの!?」と終始驚きの連続でした。

京都市京セラ美術館だけで体験できるキュビスム展

大型展覧会というだけありとにかく見応えたっぷりだったキュビスム展。

通路の真ん中に彫刻の作品があったり、展示室に入ると圧倒的なスケールを誇る作品があったり、移動途中にフォトスポットがあったり・・・美術館の空間ごと活用されていて、東京展とはまだ違い、京都市京セラ美術館だからこそ楽しめる鑑賞体験が広がっていました。

本当に作品数も多く、あっという間に時間が過ぎていたので、みなさんも時間には余裕をもって訪れることをおすすめします!

絵画とともに、キャプションや資料もあるので、「キュビスムって初めて聞いた」という方も、すでに知っている方も、ぜひ足を運んでみてください。