モネ 連作の情景/大阪中之島美術館

100%モネ!“光の影の魔術師”と称された印象派画家の生涯【大阪中之島美術館】

2024年3月7日

100%モネ!“光の影の魔術師”と称された印象派画家の生涯【大阪中之島美術館】

大阪中之島美術館にて、「モネ 連作の情景」が開催中です。大盛況のうちに幕を閉じた東京に次ぐ大阪会場では、新たに12作品が加わった約70点が一挙公開されます。

1860年代から1920年代までのクロード・モネの生涯を扱う本展覧会。革新的な表現手法のひとつ「連作」に至るまでの背景を追いながら、年代ごとに移り変わる作風の変化を楽しめます。

今回は、《積みわら》《睡蓮》をはじめとするモネの作品だけを集めた贅沢な空間の一部をご紹介します!

大阪展限定の作品も!モネの世界に包まれる展示空間

本展最大の特徴は、なんといっても最初から最後まで「100%モネ」であること。

時間や季節とともに移ろう光の表現とやさしい筆づかい、印象派の画家モネがつくる芸術を心ゆくまで堪能できます。

一歩会場へ足を踏み入れると、さまざまな色が混ざり合う幻想的な空間が広がり、現実世界にいることを思わず忘れてしまいそうでした。

2024年1月に閉幕したばかりの東京展に続き、本展では大阪展のみで展示される12作品(最大)が加わります。

作品の違いはもちろんのこと、美術館の天井の高さや設計なども異なる東京展と大阪展。空間ごと作品を捉えると、同じ作品でも美術館によってまた見え方が変わっているはずです。すでに東京展を訪れた方も、本展ではまた違った世界を味わえること間違いありません。

本展の展覧会ナビゲーターと音声ガイドは、俳優の芳根京子さんが務めます。

記者発表会に登壇した芳根さんは「作品によってその場の空気が変わる、この不思議なモネの魅力をみなさまにも体感してほしい」と語りました。

昨年から今年にかけて、フランス・ジヴェルニーにあるモネの自宅と、高知県・北川村にあるモネの庭園を訪れたという芳根さん。

世界に2つしかない庭園のどちらも堪能し、まさに“モネ尽くし”の時間を過ごされたそうです。


クロード・モネ《睡蓮の池》1918年頃 ハッソ・プラットナー・コレクション

「連作」に焦点を当てた展示から、あなたは何を感じ取る?

本展は、時系列に5つの章から構成されています。

1章「印象派以前のモネ」では、日本初公開となる大作《昼食》が圧巻の存在感を放っていました。それもそのはず、このカンヴァスは高さ230cmを超えているのです。


クロード・モネ《昼食》1968-69年 シュテーデル美術館

大きなカンヴァスに描かれているのは、後に妻となるカミーユと息子のジャン。窓からは明るい光が差し込んでおり、結婚に対するモネの家族からの反対を経て、ようやく自分の家族と共に食卓を囲むことができた喜びが伝わってきます。

「モネの作品」と聞くと、鮮やかな色調とぼやけた輪郭をイメージされる方も多いかもしれませんが、印象派として名が知られる以前の作品は作風が大きく異なるのです。

続く2章「印象派の画家、モネ」の中には、​​“水の画家”と呼ばれたモネの原点が見える作品《モネのアトリエ舟》が展示されています。


クロード・モネ《モネのアトリエ舟》1874年 クレラー=ミュラー美術館

1870年代から80年代にかけて、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れて作品を描いたモネ。

「水の上でも作品を描けるように」と自分で舟を用意したのだそう。アトリエ舟を真ん中に描いているところから、水を描いた作品が多いモネの画家としてのプライドを感じました。

3章「テーマへの集中」では、描く対象が季節や時刻によって変化する「様子」へと切り替わっているのがわかります。


クロード・モネ《ラ・マンヌポルト(エトルタ)》1883年 メトロポリタン美術館

1〜2章とは違い、青やピンクなどの明るい色彩に覆われている作品たち。南フランスで新たな色彩に出会ったことで、モネの色づかいに大きな変化が現れたそうです。

こうして年代を追うことで、モネが見つめた景色と出会った感情を追体験できているようで新鮮な気持ちになりました。


(写真左)クロード・モネ《ヴェンティミーリアの眺め》1884年 グラスゴー・ライフ・ミュージアム (写真右)クロード・モネ《ロクブリュヌから見たモンテカルロ、スケッチ》1884年 モナコ王宮コレクション

本展が特に焦点を当てている「連作」が登場する4章「連作の画家、モネ」では、代名詞とも言える《積みわら》や《ウォータールー橋チャリング・クロス橋、テムズ川》などが展示されています。

ここでモネはついに連作の手法を実現し、光のニュアンスの違いで8点の積みわらを描きました。


クロード・モネ《ジヴェルニーの積みわら》1884年 ポーラ美術館

青くぼんやりとした霧、逆光に照らされた橋、汽車の煙。

《チャリング・クロス橋、テムズ川》からはロンドンの複雑な光景を描こうと、早朝から夕方まで、刻一刻と変化する情景をつぶさに探索するモネの様子が思い浮かびます。


クロード・モネ《チャリング・クロス橋、テムズ川》1903年 リヨン美術館

連作からはその中に描かれた“時間”を感じられて、気がつけば作品に入り込んでおり、不思議と周囲の雰囲気や気温、水の音、風の匂いまでもが想像できるようでした。

「今この時間に没入する」ことが難しくなっている情報過多な時代のなかで、とても貴重な体験をした気がします。

最後に出会うは「睡蓮の部屋」。スヌーピーとのコラボも

最後の5章「『睡蓮』とジヴェルニーの庭」でも、大阪展のみの作品が展示されており、見逃せない内容になっています。

円形のようなかたちの展示室で、真ん中のホールを囲うように並べられた色鮮やかな作品たちを鑑賞しながら「まるで舞踏会に来たみたい・・・」と幸福感で満たされました。


クロード・モネ《睡蓮、柳の反影》1840-1926年 北九州市立美術館

後半生、モネは視覚障害に悩まされ、視力の衰えとともに描く対象の輪郭はあいまいになっていきます。

大胆かつ、これまでとは違った荒い筆づかいによって織りなされた色と光のハーモニーが展示室いっぱいに広がり、圧巻の空間を創っていました。


クロード・モネ《芍薬》1887年 ジュネーヴ美術歴史博物館

壁にカメラマークがあるところは撮影OKなので、ぜひ訪れた際は体験をスマホにも残してみてくださいね。

そして、本展の楽しみは展示室を出たあとにも続きます。モネの作品が描かれたポストカードやクリアファイルなどの他に、今回は「PEANUTS」とのコラボグッズが販売されています。

睡蓮の葉の上には、スヌーピーとウッドストックの姿が・・・!

あまりの可愛さに、会場では「あれもこれもで悩む」との声も挙がっていました。

本展の記念としてやご友人へのプレゼントに、ぜひショップでのお買い物も楽しんでみてくださいね。

Exhibition Information

展覧会名
モネ 連作の情景
開催期間
2024年2月10日~5月6日
会場
大阪中之島美術館 5階展示室
公式サイト
https://nakka-art.jp/