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2024年11月21日
走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代/菊池寛実記念 智美術館
走泥社(そうでいしゃ)は、戦後日本の陶芸界で中心的な役割を果たした前衛陶芸家集団です。
今では、実用性を持たない陶製の「オブジェ」は広く知られていますが、走泥社の活動は、そのような制作を切り拓き、日本の陶芸に根付かせたといえます。
その活動を紹介する展覧会「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」が菊池寛実記念 智美術館で開催中です。
本展では、走泥社の50年にわたる活動期間のうち、特に日本の陶芸史に影響の大きい前半25年、1973年までの活動にスポットを当てています。
前半期に限るとはいえ、この時期の走泥社の活動全体を紹介する初めての試みです。
また、当時の陶芸界に影響を与えたパブロ・ピカソやイサム・ノグチの作品を画像で紹介。
また、走泥社以外の団体である「四耕会(しこうかい)」の作品も展示し、前衛陶芸が生まれた時代をふり返ります。
本展は3章で構成され、1章と2章を前期、3章を後期として会期中に展示替えが行われます(その他部分的な展示替えあり)。
ここでは、前期の展示内容や会場のようすを紹介します。
第1章では、陶芸による器の形態を現代的な立体造形として自立させようと模索した走泥社の初期の作品を紹介します。
1946年、走泥社の前身である「青年作陶家集団」が発足。1948年に八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介(よしすけ)、鈴木治の5人で、走泥社が結成されました。
初期の作品には、器をキャンバスと見立てたようなピカソの陶芸作品や、イサム・ノグチのテラコッタをはじめとした西洋美術からの影響が見受けられます。
たとえば鈴木治《ロンド》では、並んで踊る人たちが抽象絵画のような文様として器に描かれています。
八木一夫《二口壺》には、ジョアン・ミロの絵画を思わせるような文様が描かれています。
会場には同時期に活動した「四耕会」の作家の作品も展示。
四耕会は、前衛いけばなの華道家たちと協同し、オブジェと器が融合したユニークな形の花器を作りました。
立体造形として、芸術性のある陶芸のありかたを模索した走泥社の制作は、次第に器の形態から離れ、心象風景の陶の造形にあらわした制作へと移行します。
当時それは「オブジェ焼」と呼ばれました。
陶芸ならではの立体造形をとして、「陶のオブジェ」制作を打ち出し、そのような視点を確立・定着させたのは、走泥社の大きな功績といえます。
《ザムザ氏の散歩》は、陶によるオブジェの記念碑的な作品として国内外で高い評価を受ける作品。
ザムザとは、フランツ・カフカの小説『変身』で、巨大な虫のすがたに変わってしまった主人公の名前です。
続く第2章は、1955〜1963年にかけての活動を紹介。
オブジェとしての陶芸が作家の内面性の表現として追求され、定着していった時期の作品が展示されています。
走泥社以外で活動していた有力な陶芸家たちが同人として合流し、走泥視野の骨格が定まっていった時期でもあります。
集団としては、共通の理想や思想などは持たなかったという走泥社。
陶芸家だけでなく、ガラス作家や写真家、彫刻家、マネキン会社取締役や研究者なども参加し、多彩なメンバーが自由に制作活動を行いました。
森里忠男の《作品B》や《ひょっとこ》は、まるで人の顔のようなデザインが印象的な作品。
表面にびっしりと数字があらわされた《数の土面》。ひび割れが不思議な魅力を放つ作品です。
山田光《二つの塔》」は2匹の猫が寄り添うようなユニークで愛らしい作品。
ほかにも不思議な生きもののようなかたち、古代の土器やキュビスムをイメージさせるものなど、個性あふれる作品が会場には並んでいます。
このように多様性のある作品は走泥社の特徴であり、魅力とも言えます。
最後のコーナーには、創立メンバーではなく、2章にあたる1955年以降に加わった作家による、1960年代に制作された作品が並んでいます。
1964年に、日本初の本格的な国際陶芸展として「現代国際陶芸展」が開催されると、関の陶芸表現に日本の美術・陶芸界は衝撃を受けました。
後期には、世界の陶芸に触れて、自己の創作を検証し、造形表現の成熟とともにより多様になっていく1964年以降の作品が紹介されます。
どのように見て感じるかは鑑賞者の自由である本展。
タイトルから作家の思いを想像しながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。
また今回は展示室内の作品は、撮影禁止のマークのある作品以外は撮影OK(私的利用の場合に限る。その他注意事項あり)。
お気に入りの作品を見つけたら、撮影して自宅で楽しんだり、SNSで紹介してみるのもいいですね。
会場には、驚くほど個性豊かなかたちが並んでいて、現代彫刻などの立体造形に関心のある方にもおすすめの展覧会です。
陶芸という歴史と伝統のある分野で、新しい表現を生み出そうとした走泥社の歩みをふり返りながら、前衛陶芸が生まれた時代の力強いエネルギーを会場で感じ取ってみてください。