日仏近代絵画の響き合い/丸紅ギャラリー

11月よりオープンした丸紅ギャラリー。気になる所蔵品や展覧会を紹介

2021年11月23日

古今東西の美が共鳴する空間“丸紅ギャラリー”。開館の経緯や所蔵品の紹介とともに開館記念展をレポート!

皆さんは、総合商社である丸紅株式会社(以下、丸紅)が、国内外の美術品を所蔵していることをご存知でしょうか。絵画・染織品・染織図案を三本柱とする丸紅コレクションは、これまで展示される機会が限られていました。

優れた美術品をもっと多くの人に公開したい、そんな想いから2021年11月1日、丸紅東京本社3階に「丸紅ギャラリー」がオープンしました。

ギャラリー入口

古今東西のさまざまな美を楽しむことができる丸紅ギャラリーでは、現在「丸紅ギャラリー開館記念展Ⅰ 日仏近代絵画の響き合い」が開催中。

本記事では、展覧会の見どころや丸紅コレクションについて紹介します。

※展覧会情報はこちら

丸紅コレクションの三本柱

丸紅は、繊維を中心とした卸販売業者に始まり、戦後はさまざまな商材を扱う総合商社へと発展しました。

事業内容が変化していくなかでも付加価値の創造に挑戦し、完成したのが丸紅コレクションです。

【重要文化財】《染分縮緬地襷菊青海波模様振袖》江戸時代18世紀

まず、丸紅の前身である丸紅商店が開始した、江戸期を中心とした古い衣装の収集活動と研究を行った「名品会」と、染織図案研究会「あかね会」により、染織品や染織図案のコレクションが完成します。

竹内栖鳳《磯つづれ 五》1928年

また、丸紅の絵画コレクションの中でも近代日本絵画は、「あかね会」などを通じて画家との接点があったこともあり、画家本人や画商とのつながりから、たびたび収集されました。

西欧絵画については、丸紅は1969年から10年間、総合商社として初めて本格的に美術品の輸入販売事業を行い、ルネサンス期以降の古典絵画や印象派、エコ-ル・ド・パリの作品を数多く取り扱ったことがきっかけでした。営業活動の副産物として出来あがったものだそうです。

丸紅コレクションのなかでも、特に知られるのが《美しきシモネッタ》です。

サンドロ・ボッティチェリ(1444/1445年~1510年)《美しきシモネッタ》
15世紀後半 テンペラ 板 65×44cm

《美しきシモネッタ》は、おそらく日本国内に存在する唯一のボッティチェリ作品です。2022年12月に開催される「美しきシモネッタ」展に出品されますので、どうぞお見逃しなく!

丸紅商店が収集・保全してきた染織品・染織図案と、美術品の輸入販売ビジネスを通じて収集してきた絵画。この3つの柱の丸紅コレクションを、丸紅ギャラリーでは楽しむことができます。

丸紅ギャラリーはどんな空間?

丸紅ギャラリーの入館料は、全額社会福祉法人丸紅基金へ寄付されます。また、支払い方法は現金不可、クレジットカードやICカードのみと、最先端の雰囲気がただよいます。

受付から進むとまず目に飛び込んでくるのは、丸紅の社是(しゃぜ)です。

社是は会社の基本方針を示すもので、丸紅新発足の日に、初代社長・市川忍が「正・新・和」という決意を表明しました。

正しく、新しく、そして親和を大切に。この言葉は現在も丸紅の社是として引き継がれています。

社是からさらに進むと、丸紅とコレクションの歴史をわかりやすく解説したパネルが。美術品への想いを知ったところで、展示が始まります。

気になる開館記念展

「丸紅ギャラリー開館記念展Ⅰ 日仏近代絵画の響き合い」は、丸紅ギャラリーのコンセプトとなる「古今東西の美が共鳴する空間」をもとに構成した展覧会です。

このコンセプトは、ジャポニズムにつながる近世の衣装や、日本の近代絵画に影響を与えた西欧の作家の作品を含む丸紅コレクションに、日本と欧州の文化的な交流を見てとることができるという特徴に由来しています。

本展では、西欧絵画から日本の洋画、染織図案のパネルなどあわせて47点が展示されます。

展示風景

19世紀写実派からフランス近代絵画、日本の洋画家など名品を、美術史の既成概念にとらわれず展示。作品の筆づかいや色づかいなど、作風をベースにして分類、展示することにより、近現代絵画における日仏の芸術交流や響き合いをレビューします。

コローの大作《ヴィル=ダヴレーのあずまや》

展示室入り口を入ると、バラエティに富む風景画を数多く残し、印象派に影響を与えたことでも知られるカミーユ・コローの作品から始まります。

コローはアシル=エトナ・ミシャロンに師事し、伝統的な絵画の基礎を学びながら、写生にも熱心に取り組み、ありのままの自然を描きました。また、イタリアにも何度も旅行し、ローマやその周辺の古典的で知的な雰囲気に感銘した作品を多く描いています。

こうした背景が、コローが幅広い画風の作品を生み出す要因となりました。

展示風景より右:ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《ヴィル=ダヴレーのあずまや》
1847年 油彩・キャンバス 150×110cm

《ヴィル=ダヴレーのあずまや》は、1847年の夏、体調のすぐれない父親に付き添うため、ヴィル・ダヴレーの実家に長く滞在したときの作品です。絵にはコローの家族が描かれおり、また母親の誕生日祝いに描かれたものであることから、記念的な作品と言えます。

ちなみに、本作で描かれたあずまやは現在でも当時のまま残っているそう!実物を見てみたいですね。

近代日本絵画の名品たち

丸紅は戦前の「あかね会」などの活動から画家との接点もあり、近代日本絵画をたびたび収集しました。

大正から昭和にかけて活躍し、日本の洋画壇の重要な人物でもあった藤島武二の貴重な作品も展示されます。

 展示風景より左:藤島武二《浜辺》1898年頃 油彩 板 24×33cm

本作は、藤島の初期白馬会時代の作品で、この年代の藤島作品はとても希少だそう。

雑草の生えた砂浜と穏やかな海、そして画面奥に見えるのは江の島です。柔らかな筆づかいは、師事していた黒田清輝がもたらした外光派の手法を見事にあらわしています。

ユニークな染織図案が生み出された「あかね会」

「あかね会」で発表された斬新なデザインも展示されます。

日本画の巨匠・竹内栖鳳を中心に、各分野の著名な芸術家が参加した「あかね会」。染織品の新しいデザインを考案する目的で作られた同会ですが、伝統を踏襲しつつもユニークな図案がたくさん生み出されました。

本展では、その中の3点の写真パネルが紹介されます。

左:竹内栖鳳《磯つづれ 五》1928年

右:山鹿清華《鶏頭》1930年

カラフルなデザインが目を引く《鶏頭》は、きものの地色を想定したと思われる背景のダークトーンと、明るい色のトサカケイトウがよく映えています。こんな着物があったら欲しくなりますね!

伝統的な図案から、ちょっと変わった図案まで。デザイン好きにもおすすめの展示です。

 

本展終了後は、丸紅コレクションの染織品やボッティチェリ作品、染織図案の展覧会が予定されています。

また、来年にはギャラリーのそばに飲食店もできるそう! こちらも楽しみですね。

丸紅の歴史から始まり、西欧から日本まで、幅広い美術品を楽しめる丸紅ギャラリー。入館は500円ととてもリーズナブルなので、開館記念展に足を運んでみてはいかがでしょうか。

Exhibition Information

展覧会名
丸紅ギャラリー開館記念展Ⅰ 日仏近代絵画の響き合い
開催期間
2021年11月1日~2022年1月31日 終了しました
会場
丸紅ギャラリー
公式サイト
https://www.marubeni.com/gallery/

Museum Information

美術館情報
丸紅ギャラリー
住所
東京都千代田区大手町一丁目4番2号
丸紅ビル3階
公式サイト
公式サイトはこちら