奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展/WHAT MUSEUM

巨大なバルーンの中で五感で楽しむアート【WHAT MUSEUM】

2024年10月22日

巨大なバルーンの中で楽しむ 五感で楽しむアート【WHAT MUSEUM】

WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

天王洲にあるWHAT MUSEUMで、奥中章人「Synesthesia ―アートで交わる五感―」展が開催されています。直径12Mにも及ぶバルーン状の作品による体験型の展覧会。大人も子どもも、全身を使って五感で楽しめるアートが展開されます。

人と人との感覚がつながっていくことをテーマにした展覧会

本展のタイトル「Synesthesia(シナスタジア)」は、「共感覚」という、ひとつの感覚刺激が他の異なる感覚を引き起こす現象を表す言葉であり、この言葉を作家独自に解釈し作品に落とし込んでいます。

本展では、この言葉をテーマに”人と人の感覚がつながっていく”体験をつくり出します。


奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 エントランス

美術家・奥中章人

奥中章人は1981年生まれの美術家。静岡大学教育学部を卒業した後、幼児/美術教育を専門に美術館や障がい者施設で美術あそび講師を務めたのちに、近現代の思想を学び美術家になりました。


美術家・奥中章人氏

水・空気・光といった形のない媒体を使ったアート作品を制作し、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」や「国際芸術祭BIWAKOビエンナーレ」といったアートフェスティバルや、音楽フェス「サマーソニック」の会場などで、屋外を中心に、体験型の巨大な作品を発表しています。

目、耳、触覚で楽しむ 直径12Mの巨大バルーン

会場に入ると、部屋いっぱい、まるで宇宙船のような巨大なバルーンが広がっています。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

普段、美術館で展示物に触れることはできませんが、この展覧会では多くのものに触れることができ、このバルーンにも触れられます。非常に薄い4層のフィルムでつくられたバルーンに触れてみると、バルーンは変形しつつ、優しく押し戻される感覚も感じられます。

常に身の周りにあるけれど、普段は意識することのない「空気」の感触に意識が向けられるようです。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

ホログラム加工を施したバルーンは、触れて変形させたり、観る角度を変えると、その色の観え方は変化していきます。例えば、わたしたちが人と出会ったとき、タイミングやその時の気分で印象が変わってしまうように、自分自身の心の状態やシチュエーションによって目の前のものの印象が変わってしまう人の感覚が作品に重ねられているそうです。

バルーンの外側の壁にも、その複雑な色が映し出され、幻想的な空間を作り出しています。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

また、フィルムに触れることで聞こえる音にもこだわっているのだそう。とても薄いフィルムを使用することで、”森で枯れ葉を踏んだときに聞こえるシャラシャラした音”のような自然な音が再現されています。触覚と視覚、そして聴覚でも楽しめる作品です。

巨大な水枕に寝転んで感じる まわりの人とのつながり

巨大なバルーンのまわりを歩いて進むと、バルーンの「入り口」にたどり着き、靴を脱いでバルーンの中へと入ることができます。身体をかがめ、小さなトンネルのような入り口からバルーンの中へと入っていくと、童心に返るような気分にもなります。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

バルーンの中には、カラフルな光に満ちた空間が広がり、床には大きな水枕が置かれています。大きな水滴のようにも見える水枕の上には、なんと大人も寝転んでもよいのだそう。

寝転がって、弾力のある水枕に身を任せると、水枕の中の水の動きが全身で感じられ、他の人が寝転ぶとその動きも伝わってきます。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

水枕の中には光を反射する特殊なフィルムが封入されていて、きらきらとした光で、水の動きを目でも感じられます。さらに、水枕の中にある気泡が動きまわったり、くっついたりするようすも美しく、普段は気づかないような水や空気の些細な動きに自然と意識が向いていきます。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

奥中章人の作品は、普段は屋外で展開されることが多いそうですが、今回の会場は天井や柱といった制約のある屋内空間。空間の形状を考える過程で、水枕の中の気泡のような”空気の塊”の形にインスピレーションを受け、今回の楕円体のような有機的な形が生まれたそうです。

制作プロセスを知る展示やワークショップも

展示室の手前のスペースでは、本作品のための模型やドローイング、3D図面などが展示されるほか、書籍なども展示されます。


WHAT MUSEUM 展示風景
奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展 © Akihito Okunaka

幼児教育や美術教育の世界から、子どもたちがどう物事を学んでいくのかに興味を持ったことをきっかけに、アート作品の制作への道へ進んでいった奥中。哲学者ブルーノ・ラトゥールの書籍など、美術家として活動するまでに影響を受けてきた書籍も展示され、手に取って読むこともできます。

なお、本展はWHAT MUSEUMで同時開催の T2 Collection「Collecting? Connecting?」展とあわせて観覧できます。

まとめ

奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展では、巨大なバルーンに触れたり寝転がったりすることができる体験型の展覧会です。童心にかえって、人とのつながりを感じる作品を五感で楽しんでみるのはいかがでしょうか。

Exhibition Information