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2024年12月17日
企画展「港北ニュータウン開発と発掘調査」/横浜市歴史博物館
横浜市郊外のベッドタウン「港北ニュータウン」は、都心へのアクセスが良く住みやすい町として人気のエリアです。
開発は田園地帯に広大な町を誕生させる大規模プロジェクトでした。同時に、予定地一帯には縄文時代の集落の遺跡が多数発見され、その後20年にわたる発掘調査が行われました。
横浜市歴史博物館で開催中の企画展「港北ニュータウン開発と発掘調査」では、当時の記録写真や出土した土器などを通して都市開発と遺跡発掘調査の軌跡を振り返ります。
また、同時開催の令和6年度かながわの遺跡展「縄文ムラの繁栄―かながわ縄文中期の輝き―」では、神奈川県の縄文時代中期の出土品、圧巻の500点を展示。こちらも興味深い内容となっています。
《青葉区・都筑区の埋蔵文化財包蔵地》2004年 横浜市歴史博物館所蔵
着色された部分が遺跡が発掘された場所。ほとんどが遺跡で埋め尽くされている
本展はプロローグ、第1章、第2章、エピローグの4部構成で、横浜市都筑区の港北ニュータウン開発の流れを開発前夜、開発と発掘調査、縄文時代中期遺跡紹介、横浜市歴史博物館開館30周年の順に紹介しています。
高度経済成長期以降、横浜市の人口増加は著しく、郊外がその受け皿となっていきました。
そんな中で港北ニュータウン開発は横浜市の6大事業の一つとして1965年に発表され、都筑区一帯に人口30万人の町を建設する大規模な区画整理事業が行われました。新規開発面積は約1340ha、予定地内には300カ所近くの遺跡が存在していました。
《港北NT開発計画における遺跡》1968年 横浜市歴史博物館所蔵
《港北のむかし(復刻版)》横浜市歴史博物館所蔵
港北ニュータウン発掘調査の広報・成果速報の役割を果たした
広範囲な遺跡の発掘調査をすべく、1970年に埋蔵文化財調査団が組織され、1989年に終了するまで約20年にわたる調査が行われました。
調査の結果、三の丸遺跡、神隠丸山遺跡、大熊仲町遺跡などの縄文時代集落が多数発掘され、約2万箱の遺物、2万枚以上の図面、25万枚の写真といった膨大な調査結果が蓄積されました。
発掘には地域住民の理解と協力が不可欠です。
埋蔵文化財調査団の岡本勇団長は、上写真のようなガリ版刷りの冊子を発行して発掘の進展などを報告し、地域住民を招いて遺跡見学会を開催するなどして理解を求めました。
《遺跡見学会の様子》(公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター
大塚遺跡での小学生を招いた見学会のようす
第2章では、港北ニュータウンで出土した縄文時代中期の土器や写真などの資料の一部が展示されています。
第2章 展示風景より
《前高山遺跡の出土資料 阿玉式土器》縄文時代中期 横浜市歴史博物館所蔵
《大熊仲町遺跡とその周辺》1977年 (公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所蔵
写真左は、第3京浜近くにある大熊仲町遺跡です。新築の住居の前に縄文時代の住居が発掘されています。5000年前の住居と現代の住居とが時空を超えて対峙(たいじ)する、印象的な光景ですね。
縄文中期は人口が増え文明が栄えた時代で、こうした住居跡から多数の土器が出土しています。
《大塚・歳勝土遺跡公園》1989年 (公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所蔵
エピローグは、横浜市歴史博物館裏に位置する大塚・歳勝土遺跡です。国史跡に指定され、一部は保存されています。
横浜市歴史博物館は、大塚・歳勝土遺跡と連携する施設として計画されました。つまり、同館が誕生するきっかけとなった遺跡というわけですね。
港北ニュータウン開発では多数の遺跡が破壊されてしまったそうですが、20年にわたる広範囲の調査と貴重な資料は残り、今も整理作業が続いています。
同じ展示室には、「縄文ムラの繁栄」展が同時開催中です。
神奈川県全域の縄文時代中期集落から出土した品を約500点展示し、当時の暮らしぶりが立体的に分かる内容となっています。展示は手のひらサイズの土偶から高さ約50cmの大型の深鉢まで、バラエティーに富んでいて楽しめます。
《顔面把手》縄文時代中期中葉 (公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所蔵
土器の縁に付いていた顔の把手。おおらかな表情が印象的
《台付鉢》縄文時代中期中葉 神奈川県教育委員会所蔵
立体的な装飾の付いた、デザイン性の高い土器
5000年前の集落と現代のニュータウンを並列し、タイムスリップしたような感覚が味わえる展覧会です。同館学芸員の橋口豊さんは「縄文時代の中期という、いろいろ不思議な土器や道具が作られている時期について見学できますので。ぜひお越しください」と呼びかけます。
縄文土器は非常に精緻で作るのが難しそうに見えますが、3~5年も修行すれば私たちでも上手く形が取れるようになるそうです。
たまに不格好な物や、作り直した品も出土するそうで、5000年前でも案外人の暮らしは変わらないという印象も持ちました。
本展は1月26日まで開催、「縄文ムラの繁栄」展のみ、秦野会場で2025年2月4日(火)~3月2日(日)にも開催されます。