PROMOTION
クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
日本には、美術館・博物館がたくさん存在しています。
年に何度か足を運んだり、旅先でお楽しみとして訪れたり・・・素敵な館が全国のさまざまな場所にありますよね。
「学芸員の太鼓判」は、全国の館の自慢の名品を詳しく知りたい! そんな想いから生まれた企画です。
本連載では、全国の美術館・博物館の自慢の所蔵品を詳しくご紹介。
記念すべき初回となる今回は、日本を代表する芸術家・岡本太郎の名前を冠する「川崎市岡本太郎美術館」の所蔵品を紹介します!
川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館は、1999年設立。故・岡本太郎氏が川崎市に寄贈した作品を収蔵しています。
美術館のマークである「黒い太陽」は、開館の際に、岡本太郎の養女の岡本敏子さんが川崎市に寄贈したものです。
生田緑地の自然に囲まれた同館では、企画展はもちろん、充実した常設展示室、ユニークなグッズや解放感あふれるカフェなどが大人気! 子供向けのイベントや、オンラインコンテンツにも力を入れています。
今回詳しくお話を聞いた学芸員は、篠原優さんです。
篠原さんは、同館で写真資料のデジタル化・アーカイブ、作品情報のデータ管理などをされています!
日々進化を続ける川崎市岡本太郎美術館の自慢の所蔵品を、2品お聞きしました!
《坐ることを拒否する椅子》は、色鮮やかでさまざまな表情を持つ、信楽焼の陶器の椅子です。
シンプルですっきりとしたデザインがあふれた世の中に対して、岡本は「生活の中に創造的な遊びがない」と考えていました。
そこで、人間のために快適さや利便性を追求された家具ではなく、生き物のように人間と対等なものをと考え生まれたのが、座面がデコボコしていて表情を持つ、座ることに歯向かうような椅子です。
岡本太郎は、実はこのような椅子やテーブルなどのインテリアのデザインも数多く手掛けています。同館の常設展示室や企画展でも、岡本太郎の手がけたインテリアデザインを観ることができますよ!
また、本作は岡本の代表作《太陽の塔》背面にある黒い太陽を制作した近江化学陶器とタッグを組んだ最初期の作品でもあり、1963年に初めて制作されました。
同年には国立代々木競技場第一体育館にある陶板壁画も信楽で制作されています。
岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》
作品のポイント
・表情豊かで生き物のような椅子
・創造性あふれるデザイン
表情豊かな椅子たち。好きな表情はどれ?
《坐ることを拒否する椅子》には赤、青、黄、緑、黒などさまざまな色の椅子があります。
また、椅子の座面にあるそれぞれの「顔」、その表情の違いも見どころです。大きな目でギョロリと見ているもの、牙をむき出しにするもの、どこか不満そうなもの、目玉が一つしかないもの・・・。
ユーモアたっぷりの顔たちは、来館者の方々からも人気だそうです!
椅子とふれあう!?常設展示室の「椅子コーナー」に行ってみよう
常設展示室にある「椅子コーナー」では、岡本がデザインしたさまざまな椅子に実際に座ることができます。もちろん、《坐ることを拒否する椅子》も設置されています(たまに別の場所に移動することもあります)。
椅子コーナー
川崎市岡本太郎美術館では、20点以上の椅子を収蔵! 展示替えの際に、時々種類を変えるそうです。
スフマート編集部も座ったことがありますが・・・意外と悪くない座り心地ですよ。
作品のここに注目!
・それぞれの椅子の表情の違い
・椅子と対等に向き合う!ユニークな作品
―篠原さんが特に注目する椅子はどれですか?
《坐ることを拒否する椅子》の中のひとつに、大きな目玉と牙のある黒い椅子があります。この椅子には秘密があって、実は目玉が椅子本体から着脱可能な植木鉢になっているんです。
岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》
こちらは座ると外れてしまう危険性があるため、椅子コーナーには出せず、展示される機会があまりありません。
当館に寄贈されている岡本の写真アルバムを見ると、眼玉部分に野草やサボテンが植えられている当時の椅子の姿が写っています。「生き生きとした自然を、現代の生活の中に芸術として蘇らせたい」、そんな岡本の願いが反映されている作品だと思います。
―《坐ることを拒否する椅子》に対するお客さんの反応は?
本作品は、特に小さなお子さんに大人気ですよ。小さなお子さんとご家族のための鑑賞ツアー「はいはい&よちよち美術館ツアー」では、常設展示室の「椅子コーナー」が一番盛り上がります。じっと見つめたり、手で叩いたり抱きついたりと、思い思いの方法で椅子と触れ合う姿は、まさに「作品と対等に向き合っている」ようで、見ていてとても嬉しくなります。
ズラリと並ぶ椅子たち
岡本太郎《動物》
1959年、岡本太郎に長野県の巨大レジャー施設「戸倉上山田ヘルスセンター」に設置するモニュメント制作が依頼されました。
「戸倉上山田ヘルスセンター」のモニュメントは、材質はコンクリート、大きさは縦4m、幅5mほどだったと考えられています。四本足の動物でありながら人間のような顔を持つ不思議な生き物は、一般公募によって《無籍動物》と名付けられました。当時の映像には施設内の遊園地に堂々と立つ《無籍動物》の姿が収められていますが、施設閉園後に地震によって壊れてしまい、失われてしまったそうです。
本作はそれと同型の小型の彫刻で、1959年の「第44回二科展」に《動物》というタイトルで出品されました。
岡本太郎《動物》
作品のポイント
・モニュメントの同型として生まれた
・人間のような顔をした四本足の生き物!
岡本太郎の考える彫刻の魅力を垣間見れる
岡本は生涯にわたり「顔」を表現した芸術家で、その特徴のひとつに、ぽっかりと穴の空いた目の表現があります。仮面のように見えたり、悲しそうに見えたり。この空洞によって、観る人は想像力を刺激され、さまざまな感情を思い描くことができます。
また、ぐるりといろんな視点から鑑賞することができるのが彫刻の魅力だと岡本は考えていました。
《動物》の後ろにまわってのぞいてみると、空洞になった目を通して、《動物》が見ている景色を疑似体験することもできます!
岡本のパブリックアートの先駆け的存在!
《無籍動物》は、岡本が初めて本格的に取り組んだ野外彫刻でした。この彫刻の制作後、全国各地にパブリックアートを生み出していきます。
ガイダンスホール ※撮影不可
制作当時のこの映像は現在、美術館のガイダンスホールで上映しているプログラムのひとつ「モニュメント《動物》ができるまで」で放映されています。初の大型彫刻の制作ということで、まず最初は20cmほどのサイズの彫刻、次に中型、大型と制作を進めていきました。
制作当時の詳細な映像が、これだけ残っている作品はなかなかないそうです!
※日によって上映プログラムが替わるのでご注意ください
岡本は自身の絵画アトリエを使って、巨大彫刻の制作に取り組みました。
コンクリートを流し込む型を製作するため、まずは粘土で原型を制作します。元々アトリエから出せるギリギリのサイズだったそうですが、持ち込まれた6トンもの粘土で成形し土を積み重ねていくうちに、型取り後にアトリエの外に出せなくなってしまったという話が残っています。
また、本作はとても重く、展示の際は一苦労かかる作品です。専門業者の方が5~6人がかりでやっと移動できるかどうかで、台座の劣化などの懸念もあるため、実は滅多に動かさない作品なのです。いつも常設展示室のある場所が定位置となっているのですが、実は動かすのが大変という事情があります。
作品のここに注目!
・想像力を刺激されるユニークな「顔」
・岡本のパブリックアートの先駆け
表情豊かな椅子も、無表情のようでいて、実は見た人の数だけ表情を持つ彫刻も、岡本太郎の作品からはどれも「遊び心」が感じられますね!
企画展「太郎写真曼陀羅 ―ホンマタカシが選んだ !! 岡本太郎の眼―」より
川崎市岡本太郎美術館は、常設展示室もとても充実しており、子どもから大人まで幅広い層に愛される美術館です。
《坐ることを拒否する椅子》も《動物》も、ふだんは常設展示室で見ることができますよ。
館内に散らばる岡本太郎の遊び心を探しに行かれてはいかがでしょうか。
次回は町田市立国際版画美術館の自慢の名品を紹介します。お楽しみに!
※川崎市岡本太郎美術館では感染症対策を行いながら展覧会・イベントを開催しています。最新情報は美術館ホームページをご確認ください。
また館内の撮影につきまして、現在は常設展示室内・企画展示室内(展覧会によっては不可)は可、ガイダンスホールの映像は不可となっています。ご入館の際には注意事項の確認をお願いいたします。