学芸員の太鼓判!/太田記念美術館

2022年1月12日

浮世絵を専門にコレクションする美術館!太田記念美術館の自慢の所蔵品とは?

日本には、美術館・博物館がたくさん存在しています。

年に何度か足を運んだり、旅先でお楽しみとして訪れたり・・・素敵な館が全国のさまざまな場所にありますよね。

学芸員の太鼓判」は、全国の館の自慢の名品を詳しく知りたい! そんな想いから生まれた企画です。本連載では、全国の美術館・博物館の自慢の所蔵品を詳しくご紹介。

 

今回は、すぐれた作品を多く所蔵する、太田記念美術館の所蔵品を紹介します。

学芸員の太鼓判/太田記念美術館/所蔵品収蔵品

太田記念美術館

太田記念美術館ってどんな場所?

太田記念美術館は、実業家・太田清藏(おおたせいぞう、1893~1977)が蒐集した浮世絵コレクションを、多くの人びとに公開するために設立された、浮世絵専門の美術館です。

現在所蔵数は約15,000点。葛飾北斎や歌川広重などの有名絵師の作品はもちろん、浮世絵の歴史を通覧できるコレクションとなっています。

ひと月ごとにさまざまなテーマで開催される展覧会は、いつ足を運んでも、毎回浮世絵の異なる魅力を発見できるのが大きな特徴です。まさに「いつでも良質な浮世絵が観られる美術館」と言えます!

また、同館が位置する原宿は海外からの観光客も多く、日本文化に興味を持つさまざまな人びとが訪れています。

 

今回詳しくお話を聞いた学芸員は、渡邉晃さん

これまでに、「没後160年記念 歌川国芳」「江戸の悪」「江戸の凸凹」など、多くの展覧会を手がけられています。

そんな渡邉さんより、太田記念美術館が誇る作品、渡邉さんのイチオシ作品をお聞きしました。

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太田記念美術館の自慢の名品《東海道五十三次内 大磯 をだハらへ四リ》

学芸員の太鼓判/太田記念美術館/所蔵品収蔵品

歌川芳員《東海道五十三次内 大磯 をだハらへ四リ》太田記念美術館蔵

《東海道五十三次内 大磯 をだハらへ四リ》ってどんな作品?

《東海道五十三次内 大磯 をだハらへ四リ》は、歌川国芳の弟子である、歌川芳員(うたがわ よしかず)が描いた東海道物のシリーズの一点です。

本作に描かれている奇妙なキャラクター“虎子石(とらこいし)”は、「虎」と「石」を組み合わせた生き物です。

虎子石は、鎌倉時代の武士・曽我十郎祐成(そがじゅうろうすけなり)の恋人、虎御前ゆかりの不思議な石で、虎御前の成長とともに大きくなり、十郎の仇である工藤祐経が刺客を差し向けた際、十郎の姿に成りかわって敵の矢を防ぎ、十郎の命を守ったという伝承があります。

大磯の延台寺にいまでも虎子石(虎御石)は祀られており、本来の形としてはただの石ですが、本作では「石」のからだに「虎」の足としっぽがついています。

作品のポイント

・石と虎を組み合わせた架空の生き物を描いている

・歌川国芳の弟子・芳員が描いた東海道シリーズ

《東海道五十三次内 大磯 をだハらへ四リ》の見どころ

大磯にゆかりのある“石”から想像力とユーモアを働かせ誕生した不思議なキャラクターからは、芳員のユーモアや想像力がうかがえます。何とも言えない味のある外見と、虎子石を見て驚く人たちの姿も笑いを誘います。

本作は、2010年の展覧会「浮世絵動物園」に初めて出品されて以来人気に火がつき、2012年から太田記念美術館公式twitterのアイコンとして使用されています。

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何とも味わい深いキャラクターを世の中に広めようと、太田記念美術館では虎子石のシールやマスキングテープなど、さまざまなグッズを制作してきました。また、当初からぬいぐるみ制作の目標もあったそう。

そして2021年9月、フェリシモミュージアム部とコラボしたぬいぐるみが発売開始されました!

上:絵師のユーモアが生んだ珍獣 虎子石もっちりポーチ 1個 ¥2,100(+10% ¥2,310)
下:絵師のユーモアが生んだ珍獣 虎子石おすわりクッション 1個 ¥3,500(+10% ¥3,850)

芳員が描いた虎子石は背を向けた構図をとっているので、こちらのぬいぐるみは「こんな顔かな?」と想像しながら作られたのだとか。もちもちした心地よい弾力とサイズ感は、お昼寝のおともにもぴったりです。また、おなかのファスナーを開けると、約600mlの湯たんぽが入りますよ!

作品のここに注目!

・芳員独特のユーモア

・2021年9月にはぬいぐるみ化も実現!

学芸員・渡邉さんが知る、作品にまつわるエピソード

芳員が描く「東海道五十三次内」シリーズは、宿場の風景にユーモアあふれる生き物がたびたび登場するシリーズです。

本来であれば宿場となじみのあるモチーフをそのまま描くことが一般的ですが、「虎子石」という名前から、石と虎を組み合わせた奇妙な生き物を作り出すという発想は、現代のゆるキャラそのものだと思います。

学芸員・渡邉さんイチオシの作品《家内安全ヲ守 十二支之図》

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歌川芳虎《家内安全ヲ守 十二支之図》太田記念美術館蔵

《家内安全ヲ守 十二支之図》ってどんな作品?

《家内安全ヲ守 十二支之図》は、歌川芳虎が描いた、十二支の動物が合体した非常にユニークな作品です。

題名からは、家内安全を守る動物であることがわかります。また、署名には「額面画」とあり、寺社に奉納された額を写したようです。

作品をよく見ると・・・顔が鼠、角が牛、背中の模様が虎、耳が兎、火炎が龍、尻尾が蛇、たてがみが馬、ひげが羊、後ろ足が猿、とさかが鶏、前足が犬、背中の毛並みが猪と考えられます。

十二支の動物たちがすべて含まれている、おめでたい絵です!

作品のポイント

・十二支の動物を一緒くたにした架空の生き物

・家内安全を守る動物

《家内安全ヲ守 十二支之図》の見どころ

十二支それぞれのパーツの組み合わせ方に注目してみてください。体全体は立派でありながら、なぜか顔がかわいらしい鼠というのが何ともアンバランスで味わいがあります。

本作は太田記念美術館公式Twitterで紹介した際、2.4万いいねを獲得するなど、非常に人気の高かった絵だそうです。

こちらも前述の虎子石と同様に、ぬいぐるみ化が実現しています!

学芸員の太鼓判/太田記念美術館/所蔵品収蔵品

毎年使える干支飾り 家内安全ヲ守十二支マスコット 1セット ¥2,300(+10% ¥2,530)

日本には、“その年の干支の置物を飾る・贈る”という風習があります。年末にお店などで次の年の干支の置物を見かけることも多いのではないでしょうか? その年の干支を飾ると延期が良いとされていますが、動物ごとに意味もさまざまです。

この十二支飾りなら毎年使えます。2022年は寅年。勇猛果敢な虎の姿から、決断力や才知、という意味合いがあります。来年は、背中の模様に注目して過ごしたいですね!

作品のここに注目!

・アンバランスな味わいに癒される

・お正月にぴったりなグッズも発売中

学芸員・渡邉さんが知る《家内安全ヲ守 十二支之図》のエピソード

《家内安全ヲ守 十二支之図》は、安政5年(1858)9月に刊行されました。同年、江戸の町ではコレラが大流行し、多くの死者が出たそうです。本作が疫病退散を目的として制作されたのかどうかは、今のところ分かっていません。

しかし、誰もが良く知る十二支の動物たちが合体した《家内安全ヲ守 十二支之図》には、人びとの安全を守ってほしい、という願いが込められていたのかもしれませんね!

 

なお、今回紹介した作品は、動物などを扱った展示や、歌川国芳とその門下の特集展示などで今後展示される可能性があります。

公式サイトなどをこまめにチェックしてみてください。

おわりに

浮世絵の始まりから終わりまで、網羅的なコレクションを持つ太田記念美術館。

記事内で紹介したグッズはオンラインでも購入可能です。こちらもぜひお見逃しなく。

学芸員の太鼓判/太田記念美術館/所蔵品収蔵品

また、現在は「江戸の恋」が開催中です。

浮世絵に見られるあらゆる恋の形を紹介する本展。鈴木春信や喜多川歌麿といた一流絵師が描く、さまざまな感情を抱いて生きた江戸の人びとのリアルな姿に触れることができますよ。

※展覧会情報はこちら

 

次回は世田谷文学館の自慢の名品を紹介します。お楽しみに!

Museum Information

美術館情報
太田記念美術館
住所
東京都渋谷区神宮前1-10-10
公式サイト
公式サイトはこちら