
東山魁夷を中心に日本の風景画をたどる展覧会【福田美術館】
2025年2月10日
今回は、建築、詩とグラフィックデザイン、現代アート、古代エジプトの歴史という異なる視点から楽しめる4つの展覧会をご紹介します。
7人の漫画家が7つの建築を物語として再構築し、図面や模型ではなく、漫画という表現で建築の可能性を探るユニークな企画展「吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在」。
「もうひとつの表示」では、詩人・最果タヒの言葉をデジタルと物理の両面で体験。ARや超高精細印刷を駆使し、詩を「読む」だけでなく、「見る」「歩く」「感じる」など新たな表現に挑戦します。
アーティストデュオNerhol(ネルホル)の展覧会「Nerhol Household Vestiges」では、「家」や「世帯」をテーマに時間や歴史の広がりを探ります。
「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」では、約150点の遺物を通じてファラオの偉業、死生観、日常生活を体感。エジプト好きには必見の内容です。
これらの展覧会はすべて歩いても25分ほどの距離に点在。
異なる切り口で楽しめる、バラエティ豊かな展示を巡りながら、乃木坂・六本木エリアでのアート散策を満喫してみてください。
TOTOギャラリー・間(ま)は、建築に特化したギャラリーで、日本独特の「間(ま)」の概念をテーマにTOTOが運営しています。
1985年の開設以来、国内外の建築家の展覧会を開催し、展示デザインを建築家自身に委ねることで、空間そのものを作品として体験できるユニークな場を提供しています。
TOTOギャラリー・間が3階に位置するTOTO乃木坂ビルの外観
小規模ながらも、出展者の思想や価値観が凝縮された展示が特徴です。講演会や書籍の出版も行い、建築家のメッセージを多角的に発信。時代を超えて建築の魅力を伝える場となっています。
会場のようす
現在開催されている「吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在」は、建築家の「不在」を前提にすることで、建築の新たな可能性を探る実験的な試みです。7人の漫画家が建築を物語として再構築し、図面や模型ではなく漫画という表現で建築を描き出します。
建築は単なる構造物ではなく、物語を生み出す存在なのかもしれない——そんな問いを投げかけます。漫画は現実の制約を超え、建築の可能性を無限に広げる力を持つ。この自由な発想が、実際の建築にどんな影響を与えるのかを考える展覧会です。
会場のようす
展覧会名:吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ――建築家の不在
開催期間:2025年1月16日~3月23日
会場:TOTOギャラリー・間
公式サイト:https://jp.toto.com/gallerma/ex250116/index.htm
六本木に位置する東京ミッドタウン・デザインハブは、デザインの発信拠点として、教育・創造・振興を専門とする三つの機関が連携し、展覧会やセミナー、イベントを開催。
幅広い分野のデザインを紹介し、誰もが気軽に訪れて体験・学習できる場を提供します。最新のデザインが集まる中心点として、未来のより良い社会をデザインの力で創出することを目指しています。
東京ミッドタウン・デザインハブのエントランス
2020年〜2023年に開催された、詩人・最果タヒの言葉が紙の上を飛び出し、空間やデジタルに溶け込む展覧会。
AR(拡張現実)や超高精細印刷を駆使し、詩を「読む」だけでなく、「見る」「歩く」「感じる」 というまったく新しい表現を体験できます。
会場のようす
たとえば、「詩が場に馴染む」 では、壁や床に詩が刻まれ、なぞるように歩いて読むことで、言葉と空間が一体化。AR技術を使えば、詩がその場の形に合わせて変化し、まるで「詩が生きている」かのように現れます。
また、「詩を拡大する」 では、一見すると白紙のような紙が、ルーペを通して覗くと、1文字0.25mmのミクロサイズ で浮かび上がる。日常では気づけない、言葉の質感やディテールに出会えます。
会場のようす
さらに、詩を「めくる」「こんがらがる」など、6つの異なるアプローチで詩の可能性を拡張。デジタルと物理の世界を超えて生まれ変わる最果タヒの詩。詩の中に“入り込む”感覚が体験できるはず。
展覧会名:もうひとつの表示
開催期間:2025年1月31日~2月23日
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
公式サイト:https://www.designhub.jp/exhibitions/dm2025
実に12のギャラリーが入る現代アートの殿堂とも言えるピラミデビル。その2階に位置するYutaka Kikutake Gallery(ユタカキクタケギャラリー)は、2015年の設立以来、日本を拠点に活躍する新進気鋭のアーティストを支援し、積極的に海外へ作品を紹介してきました。
近年では、現代アートシーンを牽引してきたアーティストとの展覧会も企画し、最新の動向や言説を踏まえながら、新たな価値観が共有・交流される場を創出。現代社会、そして未来におけるアートの意義を問い続けるギャラリーです。
Yutaka Kikutake Galleryの外観
千葉市美での大規模な個展も記憶に新しいNerhol(ネルホル)は、田中義久(1980年生)と飯田竜太(1981年生)によるアーティストデュオ。
写真を重ねて彫る独自の技法を軸に、近年は帰化植物や化石木、ドキュメンタリー映像などへ表現を広げ、時空の探求を続けています。ちなみにデュオ名の由来は、構想を練る人(田中義久)と作品を掘る人(飯田竜太)でネルホルだそうです。
会場のようす
本展は、「家」や「世帯」という身近なテーマから、時間や歴史の広がりを探る展覧会です。象徴的な作品のひとつは、映画の15,000枚の静止画をA3の紙に出力し、高さ120cmに積み上げたインスタレーション。
横から見るとノイズのような色の集積が現れ、物事を異なる視点から捉える新たな試みを示します。DVDやポストカードといった家にあるモノが、個人の記憶でありながら社会的な文脈にもつながることを示唆しています。
また、「帰化植物」シリーズでは、アメリカオニアザミや珪化木(化石化した木)をテーマに、数百年単位の時間の流れを可視化。偶然見つかったポストカードと現代の写真を並べ、時空を超えたつながりを表現した新作も展示されます。
時間と空間を超え、個人の記憶と社会の歴史が交錯するNerholの最新作。その進化を体験できる内容になっています。
展覧会名:Nerhol Household Vestiges
開催期間:2025年2月1日~3月15日
会場:Yutaka Kikutake Gallery Roppongi
公式サイト:https://www.yutakakikutakegallery.com/exhibitions/household-vestiges/
2003年、森美術館・森アーツセンターは六本木ヒルズの森タワー最上階に設立されました。
創業者・森稔の「文化は経済より上にある」という理念のもと、美術館を最上階に置くという世界でも珍しい試みが実現しました。
森アーツセンターギャラリーは、展望台と同じ52階に位置し、世界的な美術館の貴重なコレクション展から、漫画・アニメ、映画、ファッション、デザインまで幅広い企画展を開催。日本の現代アートを世界に発信する拠点として、多彩な文化を紹介し続けています。
『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』のエントランス
現在は、『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』が開催中です。約150点の遺物を通じて、古代エジプトの人びとの暮らしやファラオの偉業、死生観を体感できる展覧会です。
会場のようす
3つの章に分かれる会場、1つ目では、ファラオの影に隠れがちだった古代エジプト人の日常に注目。食事や衣服、娯楽に関する展示品が並び、現代にも通じる生活文化が垣間見えます。
2つ目は、ピラミッドや神殿を築いたファラオの実像に迫り、貴重な王の彫像やレリーフを展示。王権の象徴や宗教改革を行ったアクエンアテンの姿も紹介されます。
最後の章では、死後の世界への旅がテーマ。人や動物のミイラ、装飾品、護符が並び、古代エジプト人の「永遠の命」への願いが伝わる展示構成。葬送文書「ピラミッド・テキスト」の音声再現も体験できます。
会場には監修者であるエジプト考古学者・河江肖剰の解説も散りばめられ、理解を深める手助けとなります。
会場のようす
日常から死後の世界まで、3000年にわたる古代エジプトの文化を網羅する貴重な機会。遥か昔の人びとの営みに触れられ、古代エジプトの世界を追体験できる展覧会と言えそうです。
展覧会名:ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
開催期間:2025年1月25日~4月6日
会場:森アーツセンターギャラリー
公式サイト:https://egypt-brooklyn.exhibit.jp/