空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン/あべのハルカス美術館

30年ぶりの大回顧展!フォロンと共に自由な空想の旅に出かけよう【あべのハルカス美術館】

2025年4月18日
30年ぶりの大回顧展!フォロンと共に自由な空想の旅に出かけよう【あべのハルカス美術館】

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展が、あべのハルカス美術館で開催中です。

20世紀のベルギーを代表する芸術家、ジャン=ミッシェル・フォロン(1934-2005)の詩的でユーモア溢れる約230点の作品が、大阪に集結します。

フォロンは1970年、大阪万博の年に初来日。実に30年ぶりとなる大規模回顧展が、再び大阪・関西万博の年に実現しました。

“空想の旅への案内人”と自称したフォロンと共に、想像力を解き放つ旅に出かけましょう!

空想旅行案内人・フォロンと巡る
“想像力を解き放つ旅”

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

「絵はなんでもできるんだ。謎を生み出すことだって。」

幼い頃から絵を描いていたフォロンは、「シュルレアリスム」の巨匠、ルネ・マグリットの壁画に魅せられ、美術の道を志します。

観る者に問いかけ、想像力を掻き立てる絵画の可能性に目覚めたことが、“空想旅行案内人”としての原点となったのです。

ジャン=ミッシェル・フォロン《いつもとちがう(雑誌『ザ・ニューヨーカー』表紙 原画)》1976年 フォロン財団所蔵

プロローグ「旅のはじまり」では、フォロンが20代の頃から描き続けたドローイングをはじめ、ユーモアたっぷりのオブジェや、風変りなメガネに帽子といった「旅道具」が登場。

凝り固まった目と頭をほぐしてくれるような、ユニークな作品たちが出迎えてくれます。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

この旅の同行者は、帽子にコート姿の「リトル・ハット・マン(little hatted man)」。作品のいたるところに現れるこの謎の人物は、いったい何者なのでしょうか。

旅の道連れもでき、フォロンの研ぎ澄まされたメガネをかけて。世界を再発見する準備が整ったら、いよいよ空想旅行のスタートです。

旅に迷いはつきもの?
矢印に込められたメッセージとは

ジャン=ミッシェル・フォロン《無題》1968年頃 フォロン財団所蔵

第1章「あっち・こっち・どっち?」では、矢印だらけの展示空間が目の前に広がります。

旅が始まったばかりだというのに、これでは迷子になってしまいますね・・・。

「矢は身を守るために人類が最初に発明したものだ。いまや私たちはその矢から身を守らねばならない」とフォロンは語っています。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

父親の勧めで建築を学んだものの、やがて芸術の世界に心を奪われ、画家になる決心をしたフォロン。

彼が描く矢印に翻弄される人びとや迷路のような街並みは、「自分自身で自由に選択すること」の可能性を示唆しているようにも思えます。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

本章の最後には、大阪展ならではのコーナーも登場。

フランスの小説家、マルセル・プルーストが答えたことで知られる「プルーストの質問帖」をモチーフにした展示エリアです。

質問の横にある小さな穴を覗くと、フォロンの回答が見えるという仕掛け。中を見る前に、自分自身の答えを考えてみると面白いかもしれませんね。

世界、地球、そして宇宙―フォロンの絵が投げかける問い

フォロンは、世界の不合理に対する強い憤りを作品に反映させました。

第2章「なにが聴こえる?」では、現実世界で起こる出来事を表現した作品が展示されています。

フォロン特有の優しく美しい色彩で、親しみやすいタッチの絵。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

よく見ると、自然破壊や人種差別、戦争といった、決して穏やかとはいえない現実の問題が描かれています。

フォロンの作品に耳を澄ませると、私たちが「美しい地球と広大な宇宙を構成する紛れもない一員」であることを実感せずにはいられません。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

続く第3章「なにを話そう?」では、新聞や雑誌、広告、テレビ、そしてインターネットといった「メディア」をモチーフにした作品が並びます。

情報が溢れる現代の日常。その渦の中で、私たちは何を信じ、どう生きていくべきなのか。フォロンの作品は、そんな問いを静かに投げかけているかのようです。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

今や500以上の言語に翻訳された『世界人権宣言』の挿絵などを手掛けたフォロンは、世界の「いま」を瞬時に伝えるメディアの可能性を信じていました。

一方的ではなく、そのメッセージを受け取った人びとが自ら考え、対話する世の中をフォロンは望んでいたのです。

次はどこへ行こう?
自由な想像の旅は続く・・・

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

エピローグ「つぎはどこへ行こう?」では、フォロンが愛した風景や、自由と平和の象徴である「鳥」をモチーフにした作品が並びます。

1968年、フォロンは家族と共に、フランス・ビュルシーの農村に移り住みます。

その終生のアトリエの窓から望む平原と遥か遠くの水平線は、フォロンにとって重要なインスピレーションの源でした。

ジャン=ミッシェル・フォロン《対話》1975年 フォロン財団所蔵

イタリアに滞在していたある夏の日。窓の外に見える夜明けの太陽に、「人間を見つめる未知の創造者の視線」を感じたと語るフォロン。

世界は毎朝生まれ変わり、人生の旅はどこまでも続いていく―誰でも、いつからでも、「自由な空想の旅の続き」を思い描くことができるのです。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

旅の同行者、リトル・ハット・マンと巡る空想旅行は、ここでひと区切り。

人の想像力を愛したフォロンのメッセージを受け取ったら、世界が少しだけ違って見えるかもしれません。

まとめ

東京名古屋に続き、最終章となる本展。フォロンの最初期から最盛期にいたるまでの作品が、世界最大級の規模で紹介されています。

大阪展ならではの展示エリアや、作品をモチーフにしたオリジナルグッズも充実しています。

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」2025年4月5日(土)~6月22日(日)あべのハルカス美術館

会場では、映像作品を除くすべての展示物の写真撮影が可能。ぜひお気に入りの作品を見つけて、心に留める一枚を記録してみてくださいね。

作品はすべてフォロン財団蔵 ⒸFondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

Exhibition Information