
国宝「風神雷神図屏風」も。日本美術の名品が京都に集結【京都国立博物館】
2025年5月12日
松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―/京都市京セラ美術館
「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」エントランス風景 ©YAYOI KUSAMA
草間彌生は1950年代から活躍し、90歳を超えた現在も意欲的に活動を続ける日本を代表する芸術家のひとりです。
草間の版画作品が一堂に集い、その魅力を堪能できる展覧会が京都市京セラ美術館で開催中です。
京都市京セラ美術館 外観
絵画から立体造形、服飾、パフォーマンスアート、映画や小説にいたるまで、幅広い分野の作品を手がけてきた草間。
本展では、版画という観点からその挑戦と功績を追いかけます。
草間の故郷、松本にある松本市美術館が所蔵する「草間彌生コレクション」から厳選された版画に加え、作家蔵の作品も紹介されています。
Chapter 1 「わたしのお気に入り」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
草間彌生は1929年、長野県松本に生まれました。
10歳の頃から水玉と網目をモチーフに絵を描きはじめ、周囲にその才能を見出されます。
草間彌生《こんにちは》1989年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
絵の修行に励む一方で、草間を悩ませたのは視界につきまとう幻覚でした。
いつしか幻覚と向き合うかのように、そのイメージを描きとめるようになります。
草間彌生《自画像》1986年、《記念撮影》 1995年 すべて松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
日本でいくつか個展を開いたあと単身アメリカに渡り、ニューヨークを中心に活動します。
渡米後に発表した《無限の網》シリーズは草間の代表作のひとつとなりました。
草間彌生《無限の網》1953-1984年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
1979年に初めて手がけた版画作品のひとつ、《幻の野に立ちて》では、野菜や果物といった瑞々しいモチーフが色鮮やかに描写されています。
草間彌生《幻の野に立ちて》1979年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
草間の初期の版画は活き活きとした生命力に満ちているのが特徴です。
蝶や花などの躍動するモチーフの他、華やかなドレスやハイヒールも題材にしています。
Chapter 1 「私のお気に入り」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
また、1980年代半ばからは光を反射するラメの輝きを取り入れた版画を多数制作しました。
草間彌生《花(5)》1999年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
接着力の強い特殊なインクを刷り、その上にラメを定着させる技法で表現しています。
Chapter 2 「輝きの世界」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
極小のラメ粒子の輝きは、そのひとつひとつが小さな水玉の繰り返しのようでもあり、反復・増殖する草間の世界観と見事に調和しています。
草間彌生といえば、かぼちゃをイメージする人も多いのではないでしょうか。
渡米前に京都で絵の勉強をしていた頃から現在にいたるまで、草間は数多くのかぼちゃの作品を制作しています。
草間彌生《かぼちゃ》1988年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
家業が種苗で、幼い頃から植物に囲まれて育った草間のお気に入りはかぼちゃでした。
丸っこく愛らしい形に惹かれて何度も何度もかぼちゃをスケッチします。
Chapter 3 「愛すべき南瓜たち」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
かぼちゃは今も草間彌生の代表的なイメージとして堂々たる存在感を放ち続けています。
草間彌生《かぼちゃ》1994年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
2004年から制作された「愛はとこしえ」シリーズでは動植物や目、横顔などの具体的なモチーフが描かれているのが特徴です。
草間彌生《朝のかがやき》2007年 松本市美術館蔵 ©YAYOI KUSAMA
横幅1.5メートルを超える大きな画面に黒のマーカーで描いた50枚の原画をもとに、草間作品を熟知した刷師が刷り上げました。
Chapter 6 「愛はとこしえ(TWHIOW)」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
また、2014年には江戸時代からの伝統の木版画技術を継承する版元の依頼を受け、富士山を題材とするシリーズの制作に取り組みました。
Chapter 1 「わたしのお気に入り」展示風景 ©YAYOI KUSAMA
草間は河口湖の湖畔で富士山の姿を目に焼き付けると下書きなしで筆を走らせ、大きなキャンバスに30分ほどでその雄大な姿を描きつけてしまったそうです。
こうした近年の作品からは、日本を代表する芸術家のひとりとなった現在も新たな作風に挑み続ける草間の飽くなき情熱が見て取れます。
草間彌生の展覧会といえばグッズも見どころのひとつ。会場ではショップに行列ができる光景もしばしば見られます。
「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」特設ショップ風景 ©YAYOI KUSAMA
本展の特設ショップでは、Tシャツやトートバッグなど多彩なグッズが販売されています。
「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」特設ショップ風景 ©YAYOI KUSAMA
中でも来場者の注目を集めていたのは、関連グッズのキーリングでした。かぼちゃや蝶、ハイヒールなどをモチーフとしています。
草間彌生 キーリング “南瓜” 5,500円(税込)、”Dots Obsession” 4,950円(税込)”魚/蝶/ハイヒール” 4,950円(税込)©YAYOI KUSAMA
ポップなクリアケースもかわいく、そのまま飾っておきたくなるような一品。
草間作品の魅力を手のひらサイズに凝縮した、小さなアートピースです。
草間作品のエッセンスが凝縮された版画作品に対象を絞ったことで、本展は草間入門にもぴったりの内容となっています。
ファンの方はもちろん、草間彌生にまだ触れたことがないという方も、この機会に会場を訪れてみてはいかがでしょうか。
また本展は前期と後期で作品が総入れ替えされるため、期間中何度も楽しめる展覧会となっています。後期の展示もぜひお見逃しなく。
・前期 2025年4月25日(金)-2025年6月29日(日)
・後期 2025年7月1日(火)-2025年9月7日(日)
※前期・後期で全点を入れ替えます。