そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–/21_21 DESIGN SIGHT

「そのとき、どうする?」10の”問い”をみんなで考える【21_21 DESIGN SIGHT】

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2025年7月10日

「そのとき、どうする?」10の”問い”をみんなで考える【21_21 DESIGN SIGHT】

津村耕佑《FINAL HOME》

地震、豪雨、台風… いつ起きるかわからない災害には、不安を抱えつつも、考えたくなくなってしまうもの。

東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで始まった企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」は、私たちのこれからの「防災」に目を向ける展覧会です。

地震や水害のビジュアライゼーション、防災プロダクト、災害をきっかけに始まったプロジェクトなどが集まり、防災というテーマを、自分の視点からとらえなおすことができます。

10の「問い」から始まる、新しい“防災”の入り口

会場に入ると、目に飛び込んでくるのは「『安全な場所』って、どこ?」という問い。

その先には、過去の災害の記録や、将来起こりうる災害のビジュアライゼーションなど、多彩な取り組みが並びます。


企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」会場風景

たとえば、株式会社ヤマップによる《YAMAP流域地図》は、山を起点とした日本の流域を可視化した地図。

水害や土砂災害のハザード情報も掲載されていて、地図を動かしながら、「自分の家の近くは何に気をつけたほうが良いの?」と確認することも出来ます。


企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」会場風景

展覧会の軸になっているのは、こうした防災や災害にまつわる10の”問い”。柱に掲げられた問いに対し、柱の側面にはヒントが、裏面にはひとつの“答え”が書かれています。

けれど、それが唯一の正解ではなく、状況や人によって答えは変わるはず。その問いの先に続く作品やプロダクトを観ながら、自分なりの答えを探していきます。

そしてこれは参加型の展覧会。考えた自分の”答え”をスマートフォンで回答し、その声は会場後半の映像作品「みんなは、どうする?」でビジュアライズされます。

そこに並ぶのは、同じ問いに対しての、他の人のリアルな考え。映像を通じて多様な視点に触れられます。


WOW《みんなは、どうする?》

最後には、その中で気になった“誰かの答え”をシールとしてプリントし、持ち帰ることもできます。ちょっとしたお土産のようで嬉しく、ふとしたときに思い出す言葉になるかもしれません。

今回の展覧会ディレクターを務めたのは、ビジュアルデザインスタジオ・WOW。

仙台にも拠点を持つWOWは、2011年の東日本大震災での被災の経験も踏まえ、映像やグラフィックの技術を活かしながら、あえて“言葉”に重心を置いた構成で防災に対する新しい向き合い方を提示しました。

いつか来るかもしれない「そのとき」を、想像してみる

「『そのとき』は、いつやってくる?」

そんな問いに呼応するように展示された作品が、siro+石川将也による《そのとき、そのとき、》です。


siro+石川将也《そのとき、そのとき、》

積み木が積まれた机の下には「そのとき、」という言葉とともに円が投影され、その円はゆっくりと足元に広がっていきます。

そして円がある大きさになった瞬間、突然机が大きく揺れ、積み木が崩れ落ちてしまう・・・予測はできないけれど、確実にやってくる“そのとき”を、じわじわと円が膨らんでいくようすから体感させてくれる作品です。

「十分な備えって、どのくらい?」という問いに続くのは、柴田大平による《防災グラデーション》。


柴田大平《防災グラデーション》

同じ言葉でも、そこから考える内容のレベルは人によって異なるもの。たとえば「緩衝材」とひとくちに言っても、プチプチやクッション材、ヘルメットなど、その用途や安心感には幅があります。

「十分な備え」と感じる基準もまた人それぞれ。防災意識の“グラデーション”を視覚化したこの展示は、自分がどこに位置しているのかを考えるきっかけになります。

日常に自然に溶け込む、防災のかたち

「防災=特別なもの」という思い込みを、変えてくれる展示も。

たとえば、建築家・坂茂とボランタリー・アーキテクツ・ネットワークによる《避難所用・紙の間仕切りシステム》。

紙管と布だけでできたこのシステムは、避難所でのプライバシーを守るために考案されたもの。軽量で設置も簡単。ただなんとなく不安に感じてしまう避難所も、「こんな仕組みがあれば、少し安心できるかもしれない」と想像してしまいます。


坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク《避難所用・紙の間仕切りシステム》

また、非常用のプロダクト類も、デザイン性や使いやすさにこだわったものばかり。

インテリアとして日常に馴染む非常用トイレや、シンプルな見た目で日常使いもできる厚手のスリッパなど、日頃から身近に置けて、いざというときには頼もしい存在になる。そんな“さりげない備え”が紹介されています。


アッシュコンセプト《+d カナリアホイッスル》

展示空間の構成を手がけたのは、トラフ建築設計事務所。少し入り組んだ動線が、問いに立ち止まりながら、自分のペースで歩く体験をつくり出します。

さらに、会場のあちこちにはグラフィックデザイナー・中村至男による「21_21 DESIGN SIGHTの防災」が。

展示空間の中にある消火栓やスプリンクラーといった設備がグラフィックで示され、普段は気づかないそういった設備に目を向けるきっかけを与えてくれます。


中村至男《21_21 DESIGN SIGHTの防災》

「いまこの場所で大地震が起きたら、どうする?」という問いかけとともに、施設の中に隠れた備えの存在に気づかされます。

まとめ

「防災」について考えるのは、少し怖い。だから日常では話題にしづらいし、「みんなはどうしてるの?」と聞くのもなんとなくためらってしまう。

「そのとき、どうする?展」では、そんな“考えづらさ”に、静かに寄り添ってくれます。

10の問いを起点に、自分なりの答えを見つけ、そして、誰かの答えから新たな気づきが得られることも。 “そのとき”を想像するところから、防災との向き合い方がきっと変わっていきます。

Exhibition Information

Ticket Present

本展のチケットを「5組10名様」にプレゼント!
〆切は2025年8月31日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。