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2025年9月29日
永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰って来る!―/永青文庫
会場風景
永青文庫で、令和7年度秋季展 重要文化財「黒き猫」修理完成記念「永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰って来る!―」が開催中です。
永青文庫の設立者・細川護立(ほそかわもりたつ)は、同時代の日本画家たちにいち早く注目し、優れた近代日本画コレクションを築きました 。
本展では、コレクションの中でも特に人気の高い、菱田春草の重要文化財《黒き猫》が本格的な修理後、初めて公開されます。
これを記念して、横山大観、竹内栖鳳、鏑木清方といった巨匠たちの名作も一堂に会します。
本レポートでは、前期展示の見どころをご紹介します。
重要文化財 菱田春草《黒き猫》 明治43年(1910) 前期展示
菱田春草は、横山大観らとともに新しい日本画の表現を追求し、近代日本画の発展に大きく貢献した画家です。
36歳の若さで亡くなりますが、短い生涯の中で多くの名作を生み出しました。
実は猫好きではなかったといわれる春草ですが、画題としては好んで取り上げ、生涯に20点以上の猫の絵を描いています。
その中でも最も完成度が高いとされるのが《黒き猫》です。
本作の見どころは、装飾性と写実性の見事な調和にあります。
背景の柏の葉は金泥と緑青を用いて、装飾的な美しさを強調。一方、猫は墨の濃淡とぼかしのみで、柔らかな毛並みや体の立体感まで表現しています。
引き込まれるような猫の瞳や、毛並みの質感は写真ではなかなか伝わりません。
修理を経て輝きを増したこの傑作を、ぜひ会場でご覧ください。
本展では、永青文庫が所蔵する春草作品全4点が、前後期に分けて公開されます。
《黒き猫》は前期のみの展示。後期には同じく春草の代表作である重要文化財《落葉》が登場します。
重要文化財 菱田春草《落葉》明治42年(1909) 熊本県立美術館寄託 後期展示
前期では、東京美術学校在学中の作品《平重盛》や、琳派の影響がうかがえる《六歌仙》が展示され、春草の多彩な表現をたどることができます。
菱田春草《六歌仙》 明治32年(1899) 熊本県立美術館寄託 前期展示
4階の展示室は、春草だけでなく、近代日本画を代表する画家たちの名品が並ぶ豪華な空間です。
大観の屏風作品《柿紅葉》は、柔らかな光の中で、木々の緑と柿紅葉の赤が美しく響き合う一作。
下村観山の《春日の朝》では、春日大社の静かな朝の情景が見事に表現されています。
下村観山《春日の朝》 明治42年(1909)頃 前期展示
3階の展示室では、護立と画家たちの関係を物語る、永青文庫ならではの貴重なコレクションが紹介されています。
大観からは、毎年正月に宮中の歌会始の御題を描いた「勅題画」が贈られました。《社頭雪》はその連作の一点です。
(左から)横山大観《簑田喜太郎宛書簡》 昭和6年(1931)2月4日、横山大観《社頭雪》 昭和6年(1931) いずれも前期展示
また、日本美術院の再興期を支えた小林古径とは、護立がアトリエをたびたび訪ね、親しく交流しました。
古径の主要な作品の画稿を、ほぼ制作年代順にまとめた《画稿》は、没後に遺族から細川家に寄贈されたもの。
各作品の制作過程を知るうえで重要な資料です。
小林古径《画稿》 通期展示(頁替えあり)
護立のコレクションには、日々の暮らしを彩る身近な品々も含まれています。
展示作品からは、日常の中に芸術を取り入れて楽しんだ、護立の美意識が伝わってきます。
(右)横山大観《月に雲図(小襖)》 大正10年(1921)頃 通期展示
会場では、自邸や別荘のために依頼した小襖や、画家のデザインセンスが光る扇や手拭が展示されています。
横山大観《扇子箱下図》は、松を配した山々に大きな月を描いた扇子箱の下図。
これをもとに作られた蒔絵の扇子箱では、風に耐えて立つ松の姿など、細部まで忠実に再現されました。
(上段)横山大観下図《手拭》、(下段)平田百福下図《手拭》 昭和初期 いずれも通期展示
2階の展示室では、護立自身が遺した言葉を通して、彼のコレクションへの想いに迫ります。
戦時中、護立はコレクションに関する「書付」を残し始めました。
そこには、作品にまつわるエピソードや画家との関わりなどが彼自身の言葉で綴られ、その多くは作品を収める箱のなかに保管されました。
《春日の朝》の書付では、この作品を「観山の最もよき時代の作品」と評価し、後に観山自身が補筆した経緯についても詳しく触れています。
細川護立 下村観山「春日の朝」書付 昭和19年(1944)1月22日 前期展示
《平重盛》の書付では、「(春草が)第一人者となる素質はこの頃早くも萌されて居る」と、若き日の春草の才能について記しています。
細川護立 菱田春草「平重盛」書付 昭和18年(1943)年11月22日 前期展示
コレクターと画家たちの深い交流から生まれた、永青文庫の近代日本画コレクション。
その魅力を存分に味わえる、またとない機会です。
この秋、より美しくなって帰ってきた《黒き猫》とともに、珠玉の名画との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
※出品作品はすべて永青文庫蔵
前期:10月4日〜11月3日
後期:11月7日〜11月30日
※前・後期で大幅な展示替えを行います。詳細は永青文庫の公式サイトをご確認ください。