ウィリアム・ターナー/10分でわかるアート
2022年2月2日
Duet/二人展 押元一敏/染谷香理 ~静と動の交錯~/郷さくら美術館

郷さくら美術館にて、「Duet/二人展 押元一敏/染谷香理 ~静と動の交錯~」が開催中です。
同館で初めてとなる二人展。「静」と「動」をキーワードに、両画家の創作に迫ります。
本展は、押元一敏と染谷香理の二人展です。同じ日本画界の最前線で活躍していますが、それぞれが全く異なる表現方法で作品を発表しています。
展覧会タイトルにもある「Duet」は、二重奏を意味します。
両者の交わりはどのようなハーモニーになるのでしょうか?それぞれの作品の魅力についてご紹介します。
押元一敏は、東京藝術大学デザイン科教授と並行して、個展を中心に発表を続ける画家です。

山や岩といった自然を主題にした作品が多く、シンプルな美しさを持ちながら多様な表現を常に追求し続けています。
染谷香理は、日本画の伝統的な世界観「ハレ(非日常)」と「ケ(日常)」を取り入れた、人物画や花鳥画を描く画家。

華やかでダイナミックさのある作品が多く、古き良き日本と新しい世界観の融合が特徴的です。
1階展示室奥では、桜をテーマにした両者の作品が展示されています。
館名に「さくら」がついている郷さくら美術館ならではの遊び心が伺えますね。

染谷香理《夜昼桜図》2020年
尾形光琳の『紅白梅図』からヒントを得た本作は、右に夜の桜、左に昼の桜が描かれています。
それぞれに流れる時間を、中央に川を配置することで対比させています。異なる時間軸を同時に描ける自由さも、日本画の面白いところですよね。

左から押元一敏《吉高大桜》《三春瀧桜》《神田大糸桜》2015年
円形のキャンバスに桜を配置した本作。それぞれの桜の特徴を、この小さなキャンバス内でどう魅せるか?画家の工夫に注目してみてくださいね。
今回の展覧会のために、両者が描いた新作も展示されます。

押元一敏《蒼穹富士》2025年
押元が新作のモチーフに選んだのは、何度も描いてきた富士山です。
これまで独自の表現を追求するべく、さまざまな挑戦をしてきましたが、素直に描くことが一番自分らしいと感じたという押元。
ありのままの、今の富士山を描いたそうです。
遠くから見るとまるで写真の様に写実的であり、近くで見ると絵具のあとや、筆づかいなどが見られて何度でも楽しめる富士山となっています。

染谷香理《生命の樹》2025年
画面右側に「生」、左側に「死」を描いた本作。そして大きな樹の周りには、「再生」を意味する色とりどりの蝶が舞っています。
生を受けた者はやがて朽ちていく。「メメント・モリ(死を忘れるな)」をテーマにした大作です。
本展出品作の中でも特にお気に入りの作品を、郷さくら美術館・滝口学芸員に聞いてみました。

押元一敏《石舞台古墳》2023年
石には悠久の時が込められていると考える押元。
真っ黒の画面に浮かぶような重厚感ある石からは、奥行きが感じられます。見ているだけで心静かに、落ち着くことができるような絵です。

染谷香理《深層》2024年
海を泳ぐ人物と、その周りに配置された金魚や水紋が特徴的な本作。
ポジティブな感情とネガティブな感情を行き来する自分。その周りにいる無関心な人たち(金魚)。小さい金魚だけど、小さな水紋は次第に大きなうねりとなる・・・そんな経験を描いたそうです。
異なる二人の日本画家にフォーカスを当てた本展。
それぞれの表現のちがい、新しさをぜひ感じてみてくださいね。年始は1月6日(火)からとなっていますのでご注意ください。