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2024年11月1日
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ/横須賀美術館
東京湾に突き出た観音崎のほぼ全域に広がる県立観音崎公園。その一角に建つ横須賀美術館は、日本の近現代の美術作品や、海を描いた作品、横須賀、三浦半島ゆかりの作家の作品を所蔵しています。
開放感あふれる館内の1階企画展示室では、海外の美術、日本の近現代美術など変化に富んだ企画展を年間を通して開催しています。
そんな同館で現在、画家、絵本作家として活躍中のミロコマチコを紹介する展覧会が開催中です。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 展示風景
本展では、「ミロコマチコとは何者なのか」をテーマに、近作・新作を中心とした絵画や絵本原画、書籍の装画や企業とのコラボレーションした作品を展示。さらに、奄美大島での暮らしや制作風景も紹介しながら、彼女の魅力に迫ります。
※展覧会詳細はこちら
1981年の大阪に生まれたミロコマチコ。3人兄弟の長女である彼女には2人の弟がいます。親戚たちのなかでも年下のほうだった彼らの家には、おさがりの絵本が回ってくることが多く、それらを毎晩父親が読み聞かせてくれたことがきっかけで、ミロコマチコは絵本が大好きになったといいます。
そんな彼女のデビュー絵本である『オオカミがとぶひ』(2012年、イースト・プレス)は、「第18回日本絵本賞大賞」を受賞。以降、国内外の絵本賞や文学賞をたて続けに受賞し、常に新作が期待される絵本作家として活躍しています。
一方で、画面いっぱいに動植物をのびのびと描き、時には音楽家と共演して即興でライブペインティングを行うなど、画家としての活躍にも注目が集まっています。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 展示風景
すい星のごとく出版界に登場し、デビューしてから約10年。ミロコマチコは絵本作家、画家として男女問わず幅広い世代から支持され、デザイナーやアーティストからも一目置かれる存在となりました。
さらに近年ではこれまでのエネルギッシュで型破りなイメージに加え、スピリチュアルな存在も感じさせる作品も多く発表し、彼女の魅力的な世界観にさらなる広がりを見せています。
本展では、今もなお進化し続けるミロコマチコの世界を、近作と新作を中心とした絵画や絵本原画、書籍の装画、立体作品など200点以上の作品で紹介します。
ミロコマチコは絵本作家デビュー前後から延べ50回以上のライブペインティングを行ってきました。
第1章では2016年から2019年にかけて制作してきたライブペインティング作品をはじめとした絵画を紹介します。
鋭い観察力で動植物の本質をとらえたダイナミックな作品が特徴として知られているミロコマチコ。しかし、2016年に開催された山形ビエンナーレの参加をきっかけに、モチーフに変化が表れ始めました。
(左)《門番》2018年
(中央上から)《チョウにうつす》2018年/《チョウにうつす2》2018年
(右)《並んだ目》2018年 すべて作家蔵
それまでは、動物に自らが憑依して自分のいのちを描き出すような作風でしたが、動物の視点やいのちに寄り添い同化することで、視点が変化したのだそう。複数のいきものが身体のなかを埋め尽くす《たくさんのいきものでできているからだ》や、チョウのはねに自身の姿映り込んだ《チョウにうつす》など、こうした近作からはその後大きく表現が移り変わっていくようすが見てとれます。
(左から)《丘の上のヤギ小屋》2017年/《たくさんのいきものでできている体》2018年 すべて、作家蔵
絵本作家や画家としての活躍が広く知られるミロコマチコですが、書籍の装画や企業とのコラボレーションなど、イラストレーションやアートディレクションといった仕事も数多く手がけています。
第2章では、そうした彼女の幅広い仕事について紹介しています。
伊勢丹クリスマスキャンペーン ショッピングバッグ 2014年 作家蔵
2014年の伊勢丹のクリスマスキャンペーンに向けて制作した作品は、北欧のラップランド地方に暮らすサーミ人の世界が題材となっています。
ショッピングバッグのほかにも、3倍ほどに拡大されて約30mの店内の通路に敷かれた床絵の原画も展示。鑑賞しているだけでラップランド地方の動物たちがクリスマスを楽しく過ごしているようすが伝わってくる、エネルギッシュな作品です。
伊勢丹クリスマスキャンペーン ディスプレイ床 2014年 作家蔵
ちなみにこちらの床絵の原画は、上下どちらからでも楽しめるようになっています。作品の端まで行ったら、戻ってもう一度鑑賞してみるのもおすすめです。
絵本作家としてデビュー以降、1年に約1冊のペースで絵本を発表してきたミロコマチコ。2014年を境に、その表現はさらに豊かな色彩と、においや音などの五感も刺激するものへと移り変わっていきました。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 展示風景
第3章では近作絵本のなかから、世界最大規模の絵本原画コンクールであるブラティスラヴァ世界絵本原画展(第26回)で金牌を受賞した『けもののにおいがしてきたぞ』(2016年、岩崎書店)をはじめとする3冊の原画を展示しています。
絵本世界に入り込んだようなユニークな展示室にも注目。間近で作品を鑑賞するほかにも、ベンチに座って壁に書かれた文字と合わせて鑑賞すると、また違った楽しみ方もできますよ◎
2016年および2018年に開催された山形ビエンナーレは、ミロコマチコにとってのターニングポイントのひとつでした。第4章では、彼女の転換期となった山形ビエンナーレに出品した作品を紹介します。
《あっちの耳、こっちの耳(こうもりのおはなし)》2016年 作家蔵
祭りに出る山車(だし)を思わせる《あっちの耳、こっちの耳》は、人間と野生動物のそれぞれの視点でつづられた2つの「おはなし」からなる立体絵本です。
本作は、第4章の展示室のほかにも、美術館エントランスホールやらせん階段を登った2階のスペースなどにも展示されています。特に2階から受付を見下ろすと、山車の上にもおはなしの場面が描き込まれていることがわかりますよ。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 展示風景 ※上から鑑賞する場合は十分注意してご覧ください。
《あっちの耳、こっちの耳》は壁に書かれているお話と合わせて、山車のまわりをぐるりと回りながら鑑賞してみてください。
また、2018年の山形ビエンナーレで制作・展示された作品《みみなり》を、立体作品として再制作した《からだうみ》を展示。こちらは、第5章に続く道となっています。
《からだうみ》2020年 作家蔵
正面にあるカモシカの体のなかを探検できる本作。「肺山脈」や「シナプスの花畑」など、細胞や臓器など各器官がユニークに表現されています。
第5章では、2019年6月から活動の場としている奄美大島で制作された不思議ないきものが登場する作品群を展示しています。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ 展示風景
さまざまなサービスや情報、ものであふれる東京での暮らしは便利ですが、山形などの圧倒的に自然の方が有利となる地域では、それらがなんの役にも立たないことを痛感したというミロコマチコ。その経験から、いきものとして生きるために奄美大島で生活することを選びました。
(左から)《月の光》2021年/《丘の風、海の天気》2020年/《海の呼吸》2020年 すべて作家蔵
島のほとんどが山である奄美大島では、人間は海と山の間でちいさく暮らしているといいます。そうした土地で彼女は目に見えないものの音を聞き、見えないものの気配を感じるようになりました。
奄美大島で描かれた新作には、スピリチュアルで未知なる存在が多く登場しています。これらのミロコマチコの新作は、いきものとは、私たち人間とは一体何者であるのかを考えるきっかけを与えてくれることでしょう。
絵本作家、画家として注目を集めるミロコマチコの魅力に迫る本展。
200点以上の作品で構成される本展は、見ごたえたっぷりで一日じゅう楽しめる展覧会でした。
春のお出かけにロケーションばつぐんな横須賀美術館で、ミロコマチコの作品世界を堪能してみてはいかがでしょうか。