2022年6月30日

津田青楓の「図案」の世界を堪能!松濤美術館で8月14日まで開催中

津田青楓 図案と、時代と、/渋谷区立松濤美術館

明治から大正、昭和時代と目まぐるしく変化する社会の中で、日本画、洋画、工芸、書などの幅広い分野で活躍した津田青楓(つだ せいふう/1880-1978)。明治30年代に京都で多くの図案集を出版し、それまで工芸の下絵として捉えられがちだった「図案」を職人の仕事から芸術家の作品へと昇華させた人物のひとりです。


展示風景(前期)

現在、渋谷区立松濤美術館にて「津田青楓 図案と、時代と、」が開催中です。

本展では、青楓が明治から大正にかけての仕事である図案に注目して紹介。同時代に活躍した作家たちの作品もあわせて展示し「図案」の魅力に迫ります。

※展覧会詳細はこちら

明治から大正、昭和時代と活躍した作家・津田青楓

1880年(明治13)の京都に生まれ、1978年(昭和53)に東京で亡くなった津田青楓。98年という長い人生の中で、図案の制作や日本画・洋画の勉強、刺繍や文豪・夏目漱石の本の装幀の仕事、さらには文筆活動もするなど、幅広いジャンルで活躍しました。

マルチな活躍を見せていた青楓ですが、これまで大規模な回顧展という形で紹介される機会はあまりなかったとのこと。生誕140周年を迎えた2020年に、練馬区立美術館と京都文化博物館のそれぞれで開催された展覧会で注目を浴びるようになりました。

本展では、青楓の図案集や図案に関する作品を中心に紹介。彼の作品を通して魅力的な図案の世界に迫ります。


展示風景(前期)

「第1章:青楓図案万華鏡」では、明治30年代に本田雲錦堂(うんきんどう)や山田芸艸堂(うんそうどう)から刊行した図案集をはじめ、大正時代に手がけた本の装丁や刺繍、日本画、洋画を一堂に展示します。

青楓は、1898年(明治29)から1906年(明治39)までに40冊(13タイトル)の図案集と図案雑誌を刊行しました。しかし、最初の図案集である『宮古錦』は現存が確認できていないのだそう。そこで本展では現在、確認できている図案集『華橘(はなたちばな)』から順に紹介しています。


展示風景 ©Rieko Takahashi

現代でも通じる青楓のモダンなデザインに注目! 日本美術が好きな方はもちろん、デザインを勉強している方にもおすすめの展覧会ですよ◎

文豪・夏目漱石との友情が見られる作品も展示

もともと夏目漱石の『坊ちゃん』や『二百十日』などを愛読していた青楓。フランス留学中に異国体験記を俳句雑誌『ホトトギス』に投稿します。3編掲載されたうち、「洗濯女」が漱石の門下である小宮豊隆(こみや とよたか)により高く評価されます。

青楓のことが気に入った小宮は、漱石に彼のことを紹介します。以降、青楓は漱石に絵を教え、時には一緒に美術館へ出かけたりしながら親交を深めました。

1916年(大正5)に漱石が亡くなると、人前で泣くことのない青楓が大声を上げて泣きじゃくったというエピソードも残されています。青楓と漱石は親しい間柄だったのですね。


津田青楓『九竹草堂絵日記』1917年(大正6)©Rieko Takahashi

『九竹草堂絵日記』は、亡くなった漱石を追悼して描かれたと考えられています。展示されている「漱石先生客間」のほか、漱石の元に集まった人びととの絵画鑑賞や、絵を描いて楽しむようすを描いた作品もあります。

ちなみに「九竹草堂」とは、青楓が1916年から住んだ小石川区関口台にある家のことで、たくさんの竹を植えていたことから「九竹草堂」と名付けられたのだそうです。

京都図案についても紹介

長らく工芸の生産と消費の中心地だった京都。しかし幕末の開国と明治維新の動乱、そして東京遷都によって京都の工芸界は大きな打撃を受けることになりました。そこから立ち直りを図って力を注いだのが、生産や工芸の近代化でした。

1878年(明治11)頃、京友禅の呉服屋・千總(ちそう)の主人、西村總左衛門(そうざえもん)が、白地のビロードに模様を染めるビロード友禅を開発します。それにより写実的で立体的な絵画表現が可能になりました。

はじめは、岸竹堂(きしちくどう)や今尾景年などの日本画家が下絵を依頼され、それが好評を博すと他の画家たちも続くようになります。それまで職人の仕事とされてきた図案制作が、明治中期になると画家が積極的に携わる仕事へと変化していったのです。


展示風景(前期)©Rieko Takahashi

「第2章:青楓と京都図案」では、千總に残る岸竹堂たちの下絵を元にした友禅裂や青楓の師匠・谷口香嶠(こうきょう)や、京都に新しい風を吹き込んだ浅井忠の図案、アール・ヌーヴォーの影響など、青楓の図案制作の背景に迫ります。

パリ留学後の青楓の「新しい試み」とは

1907年(明治40)に、農商務省海外実業練習生としてパリに留学した青楓。アカデミー・ジュリアンで歴史画家のジャン=ポール・ローランスに洋画を学びます。3年後に帰国した青楓は、学んできた洋画を描くかたわら、新しい表現にも挑戦し始めます。

当時、文部省美術展覧会(文展)のような官設の大展覧会向けの絵画ではなく、芸術はもっと現代社会にかかわりをもつべきであるという考えがありました。そうした考えにより、文展には出品できる部門がない手工芸や、生活を彩る「小芸術」(マイナーアート)への注目が高まっていたといいます。


展示風景

「第3章:青楓と新しい試み」では、造り手の個性や、アマチュアらしい自由な創造に重きを置いた、個人的な「趣味」に働きかける考えによって生み出された作品を展示。パリで本格的な洋画を学んできたとは思えない素朴で温かみのある表現が特徴です。

この作風は青楓と同時期の留学生をはじめとする、30代前後の美術家に共通した傾向であり、新しい時代で生きる彼らによる古きを脱しようとする新たな試みだったです。

 

工芸品の下絵と捉えられていた「図案」の魅力に迫る本展。

本展は会期中、一部展示替えがあります。観覧日の翌日以降の本展期間中、有料の入館券の半券をお持ちの方は「リピーター割引」が適用されます。前後期観たい方はぜひ活用してみてくださいね◎

その他の最新情報は、美術館公式サイトをご確認ください。

Exhibition Information

展覧会名
津田青楓 図案と、時代と、
開催期間
2022年6月18日~8月14日 終了しました
会場
渋谷区立松濤美術館
公式サイト
https://shoto-museum.jp/
注意事項

※会期中、一部展示替えあり
前期:6月18日~7月18日
後期:7月20日~8月14日

※土・日曜日、祝日・8月9日以降の最終週は「日時指定予約制」

TICKET

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〆切は2022年7月10日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。