2022年7月29日

東京都現代美術館で“構築家”ジャン・プルーヴェの椅子と建築を観る

ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで/東京都現代美術館

自らを建築家でもデザイナーでもなく、「構築家」と称したジャン・プルーヴェ(1901-1984)。家具や建物の制作のほか、組織や社会の仕組みづくりまでにも目を向ける高い視座を持った人物でした。

20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えたプルーヴェは、どのような想像力やアイデアでものづくりに取り組んでいたのでしょうか。そんなプルーヴェに迫る大規模な展覧会が東京都現代美術館(MOT)で開催中です。


展示風景

プルーヴェが手がけたオリジナルの家具や建築物およそ120点を、図面やスケッチなどの資料とともに展示。MOTの開放感のある広いスペースでは、プルーヴェの大型作品も楽しめます。

ここでは、展覧会の概要や見どころについて紹介します。

※展覧会詳細はこちら

ジャン・プルーヴェとは?

1901年にフランスのパリで生まれ、20世紀フランスで金属工芸家としてキャリアをスタートさせたジャン・プルーヴェ。母は音楽家、父は画家かつ彫刻家の芸術一家に生まれました。

プルーヴェの父は、アール・ヌーヴォーの一派である「ナンシー派」の作家です。ナンシー派は、フランス東部の町ナンシーを中心に活動。日本美術に強い影響を受けた草花鳥虫のなかでも、植物文様をモチーフに使った自然主義的な表現に特色がありました。そのため、植物主義とも呼ばれています。

同じナンシー派のガラス工芸家であるエミール・ガレはプルーヴェの名付け親だったのだそう!そのような環境下で、彼は幼い頃から芸術を身近に感じてきました。


ジャン・プルーヴェ「カフェテリア」チェア No. 300
[国立高等工芸学校国際学生寮カフェテリア、パリ国際大学都市(フランス)]
1950 年Laurence and Patrick Seguin collection
ジャン・プルーヴェ 「ゲリドン・カフェテリア」組立式テーブル
[国立高等工芸学校国際学生寮カフェテリア、パリ国際大学都市(フランス)]
1950 年 Yusaku Maezawa collection
​​©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 C3924

20世紀初頭のナンシーの町は、製鉄業や鉄鋼業で栄えていました。その地で発足した「ナンシー派」は、芸術家・職人・工場経営者などが集う協会で、芸術を刷新して日々の暮らしに取り入れることを目指していたのです。

そんなナンシー派の影響を受けていたプルーヴェも20代からは金属工芸家として活動し、やがて家具の製作や建築へと仕事の幅を広げていきました。徐々に名が知られるようになり、30歳のときにナンシーの町で工場を開きます。

家具や建物をデザインする上で、「どうしたら実現できるか」を第一に考えたプルーヴェは、自らを「構築家」と名乗っています。

職人としてこだわりを持ちつつも量産できることを重視し、アルミや鋼鉄を使って短時間で大量に作れる仕組みを考えたプルーヴェ。革新的なアイデアはたちまち世の注目を集め、82歳で亡くなるまで精力的に活動しました。

ジャン・プルーヴェの椅子と建築

プルーヴェの代名詞とも言える「椅子」と、独自的な視点を観ることができる「建築」について紹介します。

プルーヴェがデザインした椅子


ジャン・プルーヴェ 「メトロポール」チェア No. 305 1950 年頃 Courtesy of Galerie Patrick Seguin
ジャン・プルーヴェ キャビネット BA 12 1950 年頃 Laurence and Patrick Seguin collection
ジャン・プルーヴェ 「S.A.M.」テーブル No. 506 1951 年 Yusaku Maezawa collection
ジャン・プルーヴェ 「シテ」本棚 [ナンシー学園都市(フランス)] 1932 年 Yusaku Maezawa collection
©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 C3924

1934年に初めて作られた「スタンダードチェア」は、プルーヴェの代表作です。

展示室内に並んだ椅子はどれも似ていますが、よく見ると細部の素材が少しずつ異なることがわかります。たとえば、鉄が不足していた戦時中は代わりに木を使って作られています。

シリーズとして長く制作を続けながらも、プルーヴェは時代の変化に合わせてさまざまな試行錯誤を重ねたのでした。また、組み立て式になっている点も特徴のひとつです。

プルーヴェの建築


ピエール・ジャンヌレとの協働《F 8×8 BCC 組立式住宅》[ベダリウー(フランス)]
1942 年 Yusaku Maezawa collection
©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 C3924

プルーヴェの組立式建築には、大きく2つの特徴があります。

1つ目は大きさ。「8×8組立式」をはじめ「6×6」「4×4」などさまざまなバリエーションがありました。

2つ目は、数日で簡単に設置や解体ができること。戦争で家を失った人や、住む場所のない難民のためにも仮設住宅として使われました。

組み立て式でどこにでも移動でき、廃棄物を出さないプルーヴェの家は、環境に優しくサステナブルな建築物として現代でも評価されています。


ピエール・ジャンヌレとの協働《F 8×8 BCC 組立式住宅》[ベダリウー(フランス)]
1942 年 Yusaku Maezawa collection
©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 C3924

シンプルながらも住み心地の良い環境。木の温かみを感じられながらも直線的な印象を持ち、絶妙なバランス感で調和しているところが魅力的です。

展示空間では実際の建築物を目の当たりにしながら、その広さや質感を体感できます。天候と時間帯によっては夕陽がさす瞬間も観ることができるのだとか。夕方に来館するのもおすすめですよ。

市長や経営者でもあったジャン・プルーヴェ

プルーヴェは40代のとき、生まれ育ったナンシーの市長に選任されます。産業の担い手だった彼は市政の中心人物にもなることで、存在感をさらに強めました。

工場経営においてはチームでのものづくりを重視し、工場に集まる設計士・建築家・建築学生などあらゆる人と関わり、利益も平等に分配したといいます。

デザインのために絵を描き、実験や溶接で手を動かしつつ、営業・政治・経営までこなしたプルーヴェ。単にプロダクトづくりに留まらず、人・モノを集めて仕組みづくりを推し進めた人物です。まさに“構築家”と呼ぶにふさわしい、彼の才能を感じられます。

「プルーヴェの魅力を伝えたい!」熱意がこもった企画展

今回の展覧会は、パトリック・セガン氏と八木保氏の共同企画です。「ぜひこのショーを実現したい」というセガン氏と八木氏の熱意によって実現した本企画。2人は、世界中に散らばるプルーヴェの作品を集めることは難しく、これだけの作品を一度に観ることができるのは奇跡だと言います。

セガン氏はプルーヴェを「グローバルな面を持った人物」と評価し、本展について「見て楽しめるビジュアルであり、教育的。プルーヴェの哲学も随所で感じられる。ぜひ多くの人に楽しんでもらいたい」と伝えています。

本展共催者である公益財団法人現代芸術振興財団会長の前澤友作氏は、プルーヴェの作品について「こんなにもシンプルで凛とした佇まい。美しく、かつ実用性や堅牢性にも優れている」と高く評価。自宅でプルーヴェの椅子を愛用していると言い、「家に招いた友人たちも、皆このスタンダードチェアを気に入ってくれる」と語っていました。

建築やインテリアが好きな方にぴったりな本展。なかなか一堂に会することのないプルーヴェのコレクションを堪能しながら、彼の豊かな想像力に触れられる貴重な機会です。

また会場では、子ども向けの「キッズガイド」も配布。組み立てて遊べるキット付きで、イラストも交えながらプルーヴェについてわかりやすく紹介しています。

さらに、8月30日~9月2日の4日間は「学生無料デー Supported by Bloomberg」も開催されます!中高生・専門学校生・大学生は無料で本展を観覧できますよ(チケットカウンターで学生証の提示が必要です)。


MOTアニュアルより
工藤春香《あなたの見ている風景を私は見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない。》

東京都現代美術館では、ジャン・プルーヴェ展と同時開催の『MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ』『MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd』も一緒に楽しめます。
セット券の販売もしているので、ぜひ会場を訪れてみてください。


MOTコレクションより
アルナルド・ポモドーロ《太陽のジャイロスコープ》1988年

Exhibition Information

TICKET

本展のチケット(9月16日までの期限付き)を「3組6名様」にプレゼント!
〆切は2022年8月15日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。