塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎/東京オペラシティ アートギャラリー
分からないという体験!?アートの醍醐味はさまざま。そのなかでも、作品から何かしらの刺激により感銘を受ける人も多いのではないでしょうか。
東京・初台にあるオペラシティ アートギャラリーで開催中の「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」で感じたあたらしい刺激的な体験をレポートしていきます。
Exhibition view of Taro Izumi, << Pan >>, Palais de Tokyo. Exhibition supported by SAM Art Projects. Photo by Aurélien Mole
© Taro Izumi, courtesy of Galerie Georges-Philippe & Nathalie Vallois, Paris, and Take Ninagawa, Tokyo.
インスタレーションの表現で、海外でも高い評価を受けている現代アーティスト・泉太郎。その手法は多様で、映像や絵画、または物体などを混ざり合わせているのが特徴的です。
Cloud (pillow / raised-floor storehouse), 2020 ©2020, Museum Tinguely Photo by Taro Izumi
2017年にフランスのパレ・ド・トーキョー、2020年にスイスのティンゲリー美術館にて大規模な個展を開催しました。今回、東京の美術館では初の開催となる個展。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」プレス内覧会にて
「情報とか、いろいろ重ね合わせて……僕自身がこれはなんだったのかって忘れていくことが理想」と泉太郎は個展について語っていました。
アーティスト自身が、作品が何であるかを忘れていくことを望み挑んだ個展。筆者も初めて味わった不思議な体験に迫っていきます。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
荷物をロッカーに入れようとしたところ、すべて埋まっていました。というのも、このロッカーから作品は始まっているからです。ロッカー内に入っている謎の茶色い袋を取り出します。
ずっしりと重い。中をあけてみるとそこには、これまた謎の白いレザー調のような大きなマントが折りたたまれて入っていました。
本個展では、順路も作品の一部。ロッカーの横にある入り口からスタートします。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
そこには、不思議な映像とズラっと並んだ椅子。「Sit, Down. Sit Down Please」という個展のフレーズを思い出し、座ってみました。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
椅子にはQRコードが置かれています。これを読み込むと、音声の画面に。
携帯を耳元に近づけないと聞こえないほどのウィスパーボイスが聞こえてきます。
17分30秒の会話を聞いたあと、そのなかで指示のあった白いマントを着ることに。残念ながら写真に収めることができませんでした。しかし、それは楽しみのひとつとして、ぜひ実際に着てみていただきたいです。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
音を立てないように個展の壁に同化したつもりで、そーっと進んでみました。なんだろう、これは、分からない。そんな気持ちで、ひとつずつ作品を見ていきます。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
「いろいろな情報を重ねあわせていった」と語っていた泉太郎の言葉を思い出しながら、分からないまま作品と向き合っていきました。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
このセクションのラストに現れた巨大な作品を見たとき、未知との遭遇というのは、きっとこんな感情を受けるんだろうという気持ちに。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
この作品は、ラストのセクションでなかに入ることができます。順番待ちに時間がかかるので、必ず体験したいという方は、お早めに。
意識しながらも、無意識に流れるようにこのセクションを出て、次のセクションに向かいます。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
次のセクションに向かう道中に、説明が書かれた文字。あまり気に留めずに進んでしまったのですが、この説明はしっかりと読むことをおすすめします。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
ズラっと壁に備え付けられた道具のような物。次のセクションで使うのでしょうか?
ここからは、驚きすらも個展で実際に体験して感じてみてほしいので、詳しいレポートは控えることにします。
「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」展示風景
この黒いテントたちは……この水たちは……どれを取っても分からない。そんな気持ちでいっぱいでした。
しかし、説明を聞いて動いて、意識と無意識が交差しているうちに、この全体のアートの分からない体験こそが、不可知に向き合うというアートだと気づかされるのです。
「考えられるような展覧会にしたい」と語っていた泉太郎。考えてみたり、分からないからもう流れるままに進んでみようと思っていると、その順路や一連の流れにいつのまにか、また答えを用意している自分がいました。
そして、いま、そのことを思い出し、繰り返し考え、また忘れていくのだろうと。
新しいアート体験を楽しめる「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」。不可知と向き合うという刺激を受けに、ぜひ足を運んでみてください。