秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開/永青文庫

長谷雄草紙や蒙古襲来絵詞からお伽草子まで。絵と物語を味わおう【永青文庫】

2023年10月26日

秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開―永青文庫の絵巻コレクション―/永青文庫

歴史資料や刀剣などで有名な永青文庫は、実は絵巻のコレクションも豊富です。

令和5年度秋季展は、重要文化財《長谷雄草紙(はせおぞうし)》が永青文庫で初めて一挙に全巻公開される貴重な機会となりました。

他にも、今まであまり展示されることがなかった絵巻の名品をお楽しみいただけます。

長谷雄草紙とは


重要文化財《長谷雄草紙》(部分) 鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀) 永青文庫蔵

《長谷雄草紙》とは、平安時代の漢学者・紀長谷雄(きのはせお)にまつわるストーリーを描いた絵巻です。

《長谷雄草紙》はわずか五段で構成され、その内容の明快さと奇抜さに魅力があります。

制作されたのは鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀)で、室町時代以降に盛んに書かれた短編小説「お伽草子」の萌芽をも窺わせることが特徴です。

また、双六(すごろく)の賽(さい)を振る音が線で表されるなど、今日のアニメや漫画に通じる表現も見受けられます。


重要文化財《長谷雄草紙》(部分) 鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀) 永青文庫蔵

「長谷雄草紙」や「蒙古襲来絵詞(模本)」の展示にご注目

3フロアある展示室の最初にあたる4階展示室では、《長谷雄草紙》を中心とした貴重な絵巻が公開されています。

《長谷雄草紙》は長谷雄と鬼がそれぞれ全財産と美女をかけて双六で戦い、勝利した長谷雄は鬼から美女を得るも、「100日を待たずに女に触れてはいけない」との約束を破ったために美女が水となって流れ消えてしまいます。

細かな描写もよく目を凝らすと面白く、たとえば長谷雄の室内にある書棚は多くの巻子が並び、学者の邸宅であることがわかります。


重要文化財《長谷雄草紙》(部分) 鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀) 永青文庫蔵


重要文化財《長谷雄草紙》(部分) 鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀) 永青文庫蔵

また、2021年に国宝に指定された《蒙古襲来絵詞》の模本も見どころのひとつ。

かつて熊本藩士の大矢野家に伝来し、現在は皇居三の丸尚蔵館に収蔵されている作品の模本として、熊本藩お抱えの絵師により制作されました。

二度にわたる元寇の出陣が記録され、肥後国(熊本)の御家人・竹崎季長の戦功が描かれました。

国宝《蒙古襲来絵詞》は、永青文庫の設立者である細川護立(ほそかわもりたつ)の幼少期に細川家に譲渡が持ちかけられた作品でもあります。


[絵]衛藤良行・勝夷か[書]今村真純か 《蒙古襲来絵詞(模本) 上巻》(部分) 文政4年(1821) 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)


[絵]衛藤良行・勝夷か[書]今村真純か 《蒙古襲来絵詞(模本) 下巻》 文政4年(1821) 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)

彩色された模本の他に、白描(はくびょう)のものもあります。

白描は彩色する前の線画のようなもので、「朱」「クロ」「ギン」など色の情報が細かく書き込まれているために、原本で著しい退色や剥落によって詳細がわからなくなった部分の解明が可能です。


《蒙古襲来絵詞(白描本)》(部分) 寛政9年(1797)頃 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)

展覧会のその他の見どころ

《長谷雄草紙》の全巻公開と熊本藩における中世絵巻に続いて、お伽草子の絵巻や奈良絵本が公開されています。

お伽草子のさまざまなストーリーに心はずむ

お伽草子の話の内容は多岐にわたり、歴史や宗教を題材にしたものからコミカルな創作までさまざまです。

《十二類絵巻(模本)》は十二支の動物が出てくるユーモラスな話で、動物たちの歌合に狸を連れてやって来た鹿が「自分は鹿仙(歌仙)である」と言って判者の役を申し出ます。

動物たちが擬人化されており、着物やセリフにはその動物の特徴やイメージが盛り込まれている点がユニークです。


《十二類絵巻(模本) 上巻》(部分) 江戸時代(18~19世紀) 永青文庫蔵

《いはや物語(岩屋物語)》は幼い頃に母を亡くした姫君が継母の計らいで殺害されそうになるも、海中の岩上に置き去られたところを海人に助けられる話で、筋書きを読むとグリム童話の『白雪姫』に似ていると感じるかもしれません。

姫を見出した二位の中将が彼女を背負って帰る絵図が面白く、「めでたし、めでたし」と言いたくなるような軽快でわかりやすい物語が魅力的です。


《いはや物語(岩屋物語) 上巻》 江戸時代(17世紀) 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)

絵巻は古い時代の美術品、と先入観があるととっつきにくいかもしれませんが、いざ読んでみると現代の私たちでも面白いと感じられる部分がたくさんあります。

お伽草子絵巻の他にも、《奈良薪能絵巻》のように、当時の世俗を知ることのできる作品もあります。


《奈良薪能絵巻》(部分) 江戸時代(17~18世紀) 永青文庫蔵

奈良絵本の優美な世界に触れる

奈良絵本とは、室町時代後期から江戸時代中期にかけて制作された絵入り写本のことです。

名前に奈良、とありますがその由来は不明といわれています。

金泥や金箔をふんだんに用いて鮮やかに彩ったきらびやかな絵本は、婚礼調度品としても重んじられました。


《絵入伊勢物語 上中下巻》 江戸時代(17世紀) 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)


《伊勢物語歌かるた》 江戸時代 永青文庫蔵


《絵入太平記 巻30、51、80》 江戸時代(17世紀) 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)

かつて応接に使われていた2階展示室には、美しい木漏れ日が差し、ゆったりと寛げます。


2階展示室のようす


2階展示室のようす

美しく巧みな絵と、心躍るストーリーを楽しめる絵巻の世界。

歴史好きはもちろん、小説や童話など物語が好きな人にもおすすめです。

永青文庫が誇る絵巻の数々を、是非お楽しみください。

Exhibition Information

展覧会名
秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開 ―永青文庫の絵巻コレクション―
開催期間
2023年10月7日~12月3日 終了しました
会場
永青文庫
公式サイト
https://www.eiseibunko.com/