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2024年11月21日
福田美蘭展 千葉市コレクション遊覧/千葉市美術館
福田美蘭(ふくだ みらん/1963₋)は、東京藝術大学を卒業後、最年少での具象絵画(*)の登竜門である安井賞などを受賞し、国内外で活躍している作家です。絵画の新たな可能性に挑戦し続け、主に日本美術をもとにイメージを広げた作品を多く発表しています。
そんな福田と、「江戸時代から近代の日本画および版画」という収集方針を掲げてきた千葉市美術館がコラボレーションした「福田美蘭展 千葉市コレクション遊覧」が開催中です。
*具象絵画:実在し、また、そのように想像される物事を写真的に表現する絵画技法。
(左)福田美蘭《二代目市川団十郎の虎退治》2020年
本展では、同館のコレクションから、福田自らが選んだ江戸から明治時代の美術をきっかけに、新たに創作された16作品を中心に展示。
なんとなく難しいと避けられがちな「日本美術」と、福田による独自の視点で描かれた「現代美術」と見比べながら楽しめる、ユニークな展覧会です。
※展覧会詳細はこちら
1980年代後半の美術界に登場した福田美蘭。これまで、2001年に世田谷美術館、2013年に東京都美術館で個展を開催し、人びとの記憶に残るインパクトの強い作品を多く提示してきました。
美術を好きになるきっかけが西洋美術だったという福田。東京藝術大学油画科で学ぶことも、自然な選択だったといいます。
しかし、制作を続けているうちに西洋美術は身近に感じる一方、日本美術は自分の国の作品にもかかわらず、遠く感じることに気づき、日本美術を考え直してみようと思ったそうです。
その過程で千葉市美術館から個展開催の話があり、今回の日本美術と新たに向き合った軌跡を見せる内容の展覧会の開催が実現しました。
彼女の代表作の一つとして、平塚市美術館が所蔵する《見返り美人 鏡面群像群》という作品があります。こちらは、浮世絵の始祖として知られる菱川師宣(ひしかわ もろのぶ/?₋1694)の代表作《見返り美人図》(東京国立博物館蔵)が元となっています。
福田美蘭《見返り美人 鏡面群像図》2016年 平塚市美術館蔵
《見返り美人図》は、何度か郵便切手の絵柄に採用されたり、所蔵する東京国立博物館でもミュージアムグッズ化されたりと、さまざまな媒体によって多くの人の記憶に植え付けられている作品です。
福田は、このイメージの記憶を利用して《見返り美人 鏡面群像図》を制作しました。
ちなみに、菱川師宣は千葉出身の絵師です。福田は本作制作前に、千葉市美術館で開催された市民美術講座「千葉で生まれた浮世絵の始祖 菱川師宣」に参加するなど、入念なリサーチをしたそう。
浮世絵を題材とする現代美術家のなかでも、研究者並みに深い知識を得て、オリジナルへの敬意をもって制作に当たる作家です。
1995年11月に開館した千葉市美術館。美術館の骨格を形成する美術品の収集は、開館より前の1990年から本格的に始まりました。
収集方針は、「近世から近代の日本絵画と版画」、「現代美術」のほか、同館が建つ「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」の3つを大きな柱としています。
本展では、そんな千葉市美術館のコレクションの中から、福田が選んだ江戸から明治時代の美術をきっかけに新たに創作された16点の新作も展示されています。制作した新作の中で、福田が特に思い入れがあるという作品は《坐鋪八景 台子夜雨》です。
福田美蘭《坐鋪八景 台子夜雨》2021年
千葉市美術館には、鈴木春信の《坐鋪八景 台子夜雨》の初版と第二版が所蔵されています。福田は、本展覧会担当学芸員の田辺晶子さんの論文を読み、この2点が、錦絵(浮世絵)の誕生においてとても重要な作品であることを知ったといいます。
福田の作品では、複製版画の一部を朱色に塗りつぶしています。朱色に塗りつぶした理由は、江戸時代の人たちが、伝染病や感染症の流行を恐れて、疫病除けの効果がある「赤いもの」を身に着けるという行為から着想を得たそう!
本作には現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症が、早く収まるようにという願いが込められています。
展示室最後にも、コロナ終息を願った作品を紹介
福田美蘭《十三代目市川團十郎白猿襲名披露 口上》2021年
展示室最後に紹介されている《十三代目市川團十郎白猿襲名披露 口上》も、コロナ終息を願う作品です。
歌舞伎役者の市川團十郎に伝わる「にらみ」は、代々市川家が信仰する成田山新勝寺の本尊、不動明王にちなみ、疫病退散の祈りが込められており、にらまれた人は1年間無病息災で過ごせると言われています。
市川團十郎の「にらみ」の姿が、江戸時代の魔除けに使われていた疱瘡絵(ほうそうえ)をイメージにして描かれた本作。鑑賞者に病に打ち勝つパワーを授けるような、力強い気持ちになれる作品です。
こちらは、コロナ終息を願う護符として、にらみの目の部分を拡大プリントした紙も配布されています。これを家のどこかに貼ったら、病どころかドロボウも逃げていきそうな・・・そんな迫力がありますね。
2001年の世田谷美術館、2013年の東京都美術館以来の大規模な個展となる本展。これまでとはまた違う、新しく日本美術に向き合った軌跡を見せるような内容になっています。
日本美術、現代美術のどちらかが好きな人たちにとって、本展はかけ橋となるのではないかと思います。この秋、注目の展覧会のひとつなので、お近くの方はぜひ足を運んでみてください。