開催中

“Strike Gold” Art for “No Concept”-作為なき表現者たち

RITSUKO《ちゃちゃ》2024
300×300mm アクリル絵の具、キャンバス

大場多知子《蓮と翡翠》2022
10×1167mm アクリル、キャンバス

中武卓《Blooming17》2024
1030×728mm オイルパステル、紙

中川ももこ《無題》2024
541×541mm アクリル絵の具、紙

鳥山シュウ《京都》2023
1087×767 ペン、紙

街が華やぎ、心が浮き立つこの季節。タイトル「Strike Gold」には、未知の表現を前に新たな視点を得たり、心躍る体験をしていただきたいという思いが込められています。

冒頭にひとつ、敢えてお伝えしたいことがあります。それは、障がいのある人の中でも特別に秀でた才能に光を当てることと、「ただそこにある命の尊さ」を伝えることとの間にある矛盾に、私たち自身、もはや無自覚ではいられないということです。

その狭間で揺れながら、アートだけでは補えない「全ての生命」と向き合う手段として、私たちは農業にも取り組み始めました。

それでもなお、人が「自らを表現すること」は、時に生死に関わるほど重要であることを、日々表現の現場から学んでいます。

本展は、2017年からGYRE GALLERYで続くシリーズで、今回で5回目となります。今改めて、これらの作品に内在する社会的宿命と芸術的価値について、考えを巡らす機会となれば幸いです。

一方、サブタイトルの「No Concept」は、2021年から私たちが提唱する、アウトサイダー・アート(既存の枠に収まらない多様な表現)を象徴する言葉です。現代アートでは「コンセプト=作者の意図」が重視されますが、この分野では、その常識が当てはまりません。

日本では、作為を無くす、または極力排除することが、美の本質として重視されてきました。岡本太郎が美術的価値を見出した縄文土器、千利休が独自の美を求めて珍重した井戸茶碗、柳宗悦が愛した朝鮮雑器なども、いずれも作為の無さが魅力でした。世阿弥もまた、無心の境地に至るまでの困難と工夫について語っています。

本展の作家たちは、もともと作為のない場所から制作を始めています。ですから、無心の境地に達するために鍛錬を重ねる必要がありません。彼らの作品には、古来私たちが大切にしてきた自然への憧れや畏怖、そこから生まれる瑞々しさやダイナミズムが宿ります。技術的に未熟に見えるかもしれませんが、彼らにとって表現は生きる上で切実な行為です。その強度ゆえ、非常に力強い作品が多く生まれているのです。

コンセプト重視の現代アートは、論理的整理や生産性を追求した時代の表現でもありました。それは、チャップリンが『モダン・タイムズ』で描いた、歯車の中で生きる人間の姿に重なります。そうした時代、障がいのある人々は「生産性の低い存在」として価値を貶められてきました。しかし今、彼らの自由で伸びやかな表現は、私たちの心を癒してくれます。

どれだけテクノロジーが進化しても、人は自然の中で生きる有限な存在です。彼らのアートは、私たちが人種や性別、階級、障がいの有無を超えて「等しく幸せになる社会」を考える上で、大切な問いを投げかけてくれます。

本展に向け、主催者自ら全国を回り、時に倉庫の奥深くまで分け入って作品を発掘。作家、支援者、施設職員との対話を通じて、1点1点丁寧に選定しています。ここが作家たちの登竜門となり、その後アーティストとして活躍し始めている現状は、本当に喜ばしいことです。

展示作品はすべて、アート作品として適正な価格で販売され、作家への経済的還元を通じて、多様な人々が活躍できる場の拡大を目指しています。

作家や来場者が、「予想外の幸運」や「貴重な出会い」にめぐりあう。
三方よしの「Strike Gold」。

無垢な心が生み出すアートが、あなたに、世界に、幸福をもたらす「第三の目」を開く。
そんな体験を多くの方と共有できたなら、主催者としてこれ以上の幸せはありません。

キュレーター 杉本志乃

Event Information

展覧会名
“Strike Gold” Art for “No Concept”-作為なき表現者たち
開催期間
2025年12月6日~2026年1月25日
開館時間
11:00~20:00
※1月2日は13:00~
休館日
12月31日、1月1日
入館料

無料

公式サイト
https://gyre-omotesando.com/gallery/
お問い合わせ

0570-05-6990(11:00~18:00)

Venue Information