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2024年11月1日
三井家のおひなさま/三井記念美術館
ひな人形や調度品を飾り、女の子の健やかな成長と幸福を願う行事として親しまれてきた「ひなまつり」。
三井記念美術館(東京・日本橋)では、展覧会「三井家のおひなさま」が4月7日(日)まで開催中です。
この展覧会では、江戸時代の豪商で三井財閥を築いた三井家で、大切に受け継がれてきた豪華なひな人形やひな道具が一堂に集います。
今回は初公開の品も展示され、三井家ゆかりの6人の女性たちの華麗な「おひなさま」の競演が楽しめます。
展示風景より
なお、三井家のひな人形・道具を納める外箱には、誰のものかわかるように、名前の代わりに所用者を示す「お印」がつけられており、展示はこの印に添って構成されています。
三井家伝来のおひなさまには、 初節句に際してあつらえられたもの、 三井家に嫁いだ後に新調されたもの、三井家や実家の大名家で代々伝えられてきたものなど、さまざまな年代や種類のひな人形、ひな道具が含まれています。
また今回は京都の丸平大木人形店所蔵の人形も特別に展示され、江戸から令和に至るまでのひな人形の時代による変遷をたどることができます。
ひな人形の表情や髪型、衣装の違いなどを見比べながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。
展示風景より、三井興子(伊皿子三井家九代高長夫人)旧蔵品
江戸時代にはお雛さまを飾る風習が定着しますが、初期のひな人形は立った姿で、段飾りもありませんでした。
これは、北三井家十代高棟(たかみね)夫人・苞子 (もとこ)の所用品に含まれている愛らしい丸顔の立雛です。
松や藤などを岩絵の具で描いた小袖など美しく豪華な衣装も見どころです。
「立雛」江戸時代・文化12年(1815) 三井記念美術館蔵
江戸時代中期、享保年間(1716〜36)を中心に流行した古風な顔立ちの享保雛は、豪華な衣装を身にまとい、ボリュームのある身体をしています。こちらも苞子の旧蔵品です。
「享保雛」江戸時代・19世紀 三井記念美術館蔵
男雛と女雛の並べ方についてはさまざまな説がありますが、三井家では近代以降に東京で定着した、男雛が向かって左側、女雛が右側に座る並べ方をしています。
この内裏雛は、江戸時代から続く京都の老舗である丸平大木人形店の三世大木平藏により製作されたもの。
江戸で誕生した古今雛の流れを受け継いだ華やかな町雛で、瞳には玉眼(ガラス)が使われています。
「内裏雛」三世大木平藏製 明治28年(1895) 三井記念美術館蔵
北三井家十一代高公(たかきみ)夫人・鋹子(としこ)のひな人形は、当時の日本橋で名工と呼ばれた二代・永徳齋製のものが中心。
左は丸顔に引目鉤鼻の面立ちが特徴の「次郎左衛門雛」、右は古今雛の流れをくむ「内裏雛」で、リアルな顔立ちと豪華な衣装が特徴です。
左右に雌雄一対で置かれている犬筥(いぬばこ)は、犬が多子かつ安産であることから、江戸時代に婚礼道具やひな道具の一つとして普及し、ひな飾りにも加えられました。
左「次郎左衛門雛」右「内裏雛」いずれも二代永德齋製 明治〜大正時代・20世紀 三井記念美術館蔵
五体の人形が音楽を奏でるのは、能楽の地謡と囃を模した五人囃子と、雅楽姿の五人楽人の2パターンがあります。
通常はどちらか一組ですが、鋹子のひな人形はその両方が揃えられた豪華版です。
「段飾り用ひな人形のうち 三人官女/五人囃子/随身」二代永德齋製 明治~大正時代・20世紀 三井記念美術館蔵
会場ではひな人形だけでなく、御所人形、風俗衣装人形、子供人形、能人形などさまざまな人形も展示されています。
風俗衣装人形とは、さまざまな時代の世相・風俗を題材として作られる人形のことで、明治時代中期から昭和初期頃までひな人形に添えられていたそうです。
無邪気に遊ぶ子どもたちの姿が愛らしい子供人形も見ることができます。
展示風景より、四世大木平藏による子供人形、風俗衣装人形などの展示
本展でもっとも目を引くのは、幅3メートルもある豪華な北三井家十一代高公の一人娘・浅野久子氏のひな段飾りです。
久子氏の初節句のために、丸平大木人形店の五世大木平藏に注文してつくられたもので、当時の工芸技術の粋を集めた傑作です。
会場では、近年まで浅野家で実際に行われていた豪華な段飾りを再現して展示されています。
「段飾り用ひな人形」五世大木平藏製 昭和9年(1934) 三井記念美術館蔵
男雛は高さ43cm、女雛は約32cmという堂々たるつくりの内裏雛。装束はともに、最上級の染織品を使用したていねいで格調高い仕立てとなっています。
段飾り右上段の天皇の御所である紫宸殿(ししんでん)になぞらえた御殿付きのひな人形は、祖父・高棟から贈られたもの。
下段には三井家の家紋が蒔絵で表された豪華なひな道具が並べられ、さらに親族などから贈られたさまざまな人形も一緒に飾られています。
「段飾り用ひな人形」四世大木平藏製 明治33年(1900) 三井記念美術館蔵
豪華な段飾りが楽しめる展示室4は、今回写真撮影可能!
鑑賞の記念になるだけでなく、撮影した画像を拡大して、細部までじっくり鑑賞して楽しむこともできそうです。
今年は、三井11家のうち、伊皿子三井家に伝わる個人コレクションを初公開。
丸平大木人形店の五世大木平蔵が手がけたひな人形を中心に、ミニチュア細工の「牡丹唐草蒔絵雛道具」などが初めて紹介されています。
展示風景より、豊田博子氏(伊皿子三井家九代高長と興子の三女)所用品
「御殿付きひな人形」は、京の御所を模した御殿の中に内裏雛の人形を飾るという、今でいうドールハウスのような作品。段飾りが主流だった関東に対して、主に西日本で流行しました。
細部にまでこだわった豪華なつくりと、かわいい豆雛をこの機会にじっくりご覧ください。
「御殿付きひな人形」昭和4年(1929) 個人蔵
ひな道具とは、おひなさまが生活するのに必要な化粧道具や茶道具、文房具などの道具一式のことで、いわば婚礼調度のミニチュア版です。
細部までていねいに作り込まれたひな道具は、当時の技術の粋を集めた貴重な美術工芸品でもあり、極上の美の世界が楽しめます。
さまざまな種類の道具がありますが、鋹子のひな道具には、貝桶 (貝合せの貝を入れる容器)、衣類を入れて持ち運ぶ長持などのほか、三面(双六盤、将棋盤、碁盤)や三曲(箏、三味線、胡弓)などの遊戯具も含まれています。
とても細かいつくりなので、じっくり鑑賞したい方は単眼鏡持参をおすすめします。
「牡丹唐草蒔絵雛道具」明治~大正時代・20世紀 三井記念美術館蔵
これは苞子のひな道具に含まれていた極小サイズのミニチュア食器。
中国・明時代に作られた陶磁器など、小さいながら精巧なつくりと美しいデザインが魅力的な品が揃っています。
「ミニチュア食器」呉州赤絵杯:明時代・17世紀 三井記念美術館蔵
また、今回は三井家とも縁の深い丸平大木人形店の資料室「丸平文庫」が所蔵するひな人形が特別に展示されています。
宮中をはじめ、華族や財閥家などに愛された歴代大木平藏の人形がコレクションの中心となっており、優美で雅やかな京人形の世界が楽しめます。
会場では、名家が所蔵していた内裏雛を中心に、大木家の初節句を飾った人形、明治天皇・皇后の人形など、多彩な人形を見ることができます。
展示風景より、「丸平文庫」所蔵の華やかなひな人形
狆(ちん)は、大名・ 富裕町人などの上流階級にとくに好まれた日本原産の小型で愛らしい犬です。
明治から大正期にかけて流行し、この作品のように狆を連れた官女の人形が、ひな人形に添えて飾られました。
「内裏雛 立像(有職雛・黄櫨染御袍)」六世大木平藏製 昭和50年(1975) 丸平文庫蔵
出産の際に飾るという珍しい人形も展示されています。
背景は江戸時代後期に京都で活躍した原在中筆の屏風のミニチュア版で、こうしたミニ屏風も今回の見どころのひとつです。
「産屋の室礼 お産屏風」七世大木平藏製 令和5年(2023) 丸平文庫蔵
愛嬌のある子どもの姿がかわいい稚児雛(ちごびな)など、ユニークな趣向のおひなさまも楽しめます。
「木彫彩色稚児雛 雛飾り」五世大木平藏製 昭和8年(1933) 丸平文庫蔵
ミュージアムショップでは、小さなスペースでも飾れるミニサイズのひな人形など、さまざまなグッズが用意されています。
桃や桜、ひなまつりをモチーフにしたハンカチなどは、プレゼントとしても喜ばれそうですね。
ミュージアムショップ
会場では、美しいひな人形たちが華やかに春の訪れを告げています。
江戸時代、ひな人形の市が立ち、多くの人で賑わったという日本橋で開催される「三井家のおひなさま」で、日本の伝統文化と美意識に触れ、心温まるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。