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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
描くひと 谷口ジロー展/世田谷文学館
日本のみならず、海外でも多くの読者をもつ漫画家・谷口ジロー(本名 谷口 治郎/1947-2017)。代表作のひとつである『孤独のグルメ』(原作:久住昌之)が、俳優の松重豊主演で実写ドラマ化されたことなどから、その人気は幅広い層にまでおよんでいます。
そんな谷口ジローの作品世界の魅力を紹介する大規模個展が、世田谷文学館で開催中です。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
本展では、300点を超える自筆の漫画原稿のほか、キャラクターラフや動物スケッチ、著作や画材など総数約480点を展示。その作品世界を6つの章で紹介します。
※展覧会詳細はこちら
谷口ジローは、1947年に鳥取県鳥取市に生まれました。高校卒業まで地元で過ごし、京都で就職しましたが、20歳の時に漫画家を目指して上京します。
漫画雑誌『ガロ』をはじめとする青年コミック誌が次から次へと創刊され、多くの漫画家が新たな表現にチャレンジしていたころ、谷口は動物漫画で知られる石川球太のアシスタントとして働きながら、デビューの機会を探っていました。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
1971年には『嗄(か)れた部屋』が「ヤングコミック」に掲載され、漫画家デビューを果たします。その後、「昭和の絵師」とも呼ばれた上村一夫のアシスタントをつとめ、75年には『遠い声』で第14回ビックコミック賞佳作に入選するなど、青年コミック誌に数多くの作品を発表していきました。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
以降、『犬を飼う』(第37回小学館漫画賞審査委員特別賞・1992)や『父の暦』(アングレーム国際漫画フェスティバル審査員賞・2001)など数多くの賞を受賞。
2011年には、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ章を受章し、ルーヴル美術館やルイ・ヴィトンなどとの企画を手がけました。
近年、 海外で『遥かな町へ』 (ドイツ・ベルギー・フランス・ルクセンブルク 2010)の映画化、また『神々の山嶺』(フランス 2021)のアニメ化など、国内外問わず多くの作品が映像化されています。
1982年から、初のオリジナル長編である「ブランカ」の連載が開始されました。
本作は、戦闘兵器として遺伝子操作をされた軍用犬であるブランカが、飼い主のいるニューヨークを目指して凍結したベーリング海峡を横断する物語です。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
人間の言葉を話さないブランカの内面を、眼の力やその表情のほか、緻密に描かれた自然などから巧みに表現した本作。
谷口は生命の象徴として、動物や人間と動物の絆、そして自然への畏怖や敬意などをくり返し作品のテーマとしています。この頃に育まれた多様な描写力により、以降このテーマは幅広い読者の胸に残るものとなっていきます。
90年代になると、ますます多彩な作品を発表します。本展では、その代表的な作品の原画を展示しています。
91年に描かれた「犬を飼う」は、谷口が自らの飼い犬を看取った経験から生まれた作品です。死にゆく愛犬から目を背けずに、愛情をもって細やかに描写した本作。翌年の92年に、小学館漫画審査委員特別賞を受賞しました。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
多くの人が知る『孤独のグルメ』も、94年から連載がスタートしました。本作は、個人で輸入雑貨の貿易商を営む主人公・井之頭五郎が、仕事先で1人で食事をするようすを描いた作品です。
2012年からはテレビドラマ化し、シーズン9まで放映されました。単に写実的に食事を描いただけではなく、そこから食の幸福な風景が伝わってくるのは、谷口ならではの表現なのでしょう。
本作のリアルでおいしそうな食べ物の描写は、もはや”飯テロ”と評価されるほど。実際に展示室内で原画を観ると、お腹の音が鳴ってしまうかも? 空腹時はご注意ください。
文学館ならでの展示として、明治の文豪で知られる夏目漱石を中心とする文学者たちを描いた作品、『「坊っちゃん」の時代』5部作を紹介する特設コーナーもあります。
描くひと 谷口ジロー展 展示風景より
『「坊っちゃん」の時代』5部作は、明治後半に迎える近代日本の転換点を見通すという主題を関川夏央と、谷口ジローとで10年にわたり描き上げた、骨太な漫画作品です。
最大の特徴は、谷口による明治時代の服装や建造物、景観など見事に再現されたリアリティある描写。数多い登場人物を正確な姿かたちで物語の中に的確に配置し、動きと表情でストーリーを導いてくれる谷口の手腕に注目です。
今もなお、多くの読者を魅力する谷口ジローの作品世界を紹介する本展。
1階の文学サロンに、『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎さんのパネルが展示されています。こちらは撮影OK!
展覧会の思い出に撮影してみてはいかがでしょうか。